障害者雇用優良企業インタビュー(社会福祉法人神奈川県厚生協会)[No.24]

掲載日:2013年11月20日

障害者雇用のきっかけ・目的

  • 障害者施設の社会的使命の一つとして、障害者の就労や雇用の場の拡大に取り組むとともに、必要な指導及び助言、その他の援助を行うこととしている。

障害者雇用に対する取組み

  • 業務の遂行に当たっての適性や能力などを見極めるため、期間3ヶ月程度のトライアル雇用を活用している。
  • 障害者の方を指導員として配置することで障害者の方の能力を引き出すとともに、就労に対する意欲向上を目指している。
  • 職員も含めたメンタル相談を、心理士を招いて月に1回開催している。

障害者が従事している業務について

 当法人は障害者支援施設「貴峯荘」や「貴峯荘湘南の丘」で入所・生活介護支援のほか、在宅者向け障害福祉サービス事業「貴峯荘地域支援センター」、就労継続支援B型事業所「貴峯荘ワークピア」、収益事業の「厚生協会クリーナース」の運営をしている団体です。

 現在、身体障害者の方2名が「貴峯荘ワークピア」でシャープペンシルの組立などを行う「組立・軽作業班」と、印刷作業を行う「印刷科」に分かれてそれぞれ指導員として利用者に作業を教えています。

 また、「厚生協会クリーナース」では7名の障害者の方が、神奈川リハビリテーション病院などの洗濯物をクリーニングする業務に当たっています。回収・洗濯・たたみ・配達など様々な仕事がありますが、難しいアイロンがけのような仕事は健常の職員と一緒に作業を行っています。

清水理事に伺いました!

障害者の方が指導員をされていますが、良かったことは何でしょうか?

  2名とも身体障害がおありですが、既に35年以上勤務されています。現在、施設を利用される障害者の方々も高齢化してきており、なかなか作業が難しいところが出てきています。そのような背景もあり、豊富な経験をお持ちの障害者の方に指導をお願いしております。作業にも熟知しており細かな作業についても理解されていますので、利用者の方への指導に何の不安もありませんでした。 

 組立・軽作業班の方は車を運転し納品する傍ら、営業活動もされています。印刷科で働かれている方は採用当時から印刷に携わり活版印刷の経験もあるほどです。

 指導する対象が自分と同じ障害者の方なので、障害に対しての理解がありますし、長く勤めていることもあって利用者の方との人間関係も出来上がっています。その結果、指導員に言われれば利用者の方も納得してその指導に従ってくれます。信頼関係が長きに渡って築けていることは、福祉の仕事として本人達の自信にもなりモチベーションの向上にも繋がっていると思います。

障害者の方がみなさん長く働けている理由は何だと思われますか?

 当法人では現在9名の障害者の方が働かれていますが、長い人で40年以上、精神障害の方でも3年以上働かれています。

 皆さん長く働かれていますが、障害者の福祉施設という環境のため働く喜びを比較的見出しやすいのではないかと思っています。職場定着率を上げるために何か特別なことをしている訳ではありませんが、法人として全体で行う研修や施設間での人事交流などを通じて、障害者を指導する際の注意点や工夫を学んだり、職員間で共有するようなことはしています。

 また、「厚生協会クリーナース」で一緒に働くパートの方たちが親御さんのように障害者の方と接してくれるので、雰囲気をとても良くしてくれています。

 障害者の方たちには長く勤務を続けることによって、自分の生活リズムを整えていくことが出来るようになるといった側面があるようです。

トライアル雇用ではどんなところを見られているのでしょうか?また、どうやって仕事を教えているのでしょう?

 3ヶ月のトライアル雇用は「厚生協会クリ-ナース」で受け入れをしています。クリーニング業務を行う中で、周りとのコミュニケーションが取れ、意思疎通を図ることが出来、人間関係を作って職場環境に馴染めるかどうかを注目して見ています。作業そのものはある程度の期間を考慮してあげれば何とかなるものですが、職場環境にちゃんと馴染めるかどうかはやはり面接を行っただけでは分からないものです。

 トライアル期間中は正職員2名とパート職員が障害者の方にマンツーマンで仕事を教えています。クリーニングの業務を一通り経験させる中で、その人がどういった仕事に向いているかも見極めるようにしています。

 法人として障害者を多く雇用されていますが、一方で就労継続支援B型事業所などを運営され障害者の方の就労支援にも取り組まれています。現在、中小企業などではなかなか障害者雇用が進まない状況がありますが、何が原因だと思われていますか?

 企業側に障害者の方を受け入れる体制が整っていないためなのではないかと思っています。実際に雇用するとなると時間をかけてその人の障害特性などを理解していく必要がありますが、中小企業はなかなかそこまで悠長なことを言っていられないというのが実際のところだと思います。

 また、障害者の受け入れ体制と言うと一般的には職場のバリアフリー化などが直ぐに思い浮かびますが、ハード面での充実が全てではありません。むしろソフト面と言いましょうか、受け入れる側が障害者の人格を認め、優しさを持てるかどうかが重要だと思います。

 健常の人と障害のある人の違いを理解する必要はあります。しかし一から十まで全てを支援する必要はありません。それは障害者の方に「自分を分かっていない。自分は認められていない。」と感じさせてしまうだけです。その人が苦手なこと、出来ないことだけを支援してあげれば良いのです。

 指導のためのマニュアルを作るのもいいでしょう。厳しく言わなければならない時にはきちんと叱るのも大事でしょう。しかしそこに暖かさや優しさを込めなければ障害者の方と良好な人間関係は築けないと思うのです。

 そうは言っても何から始めればよいか分からないかもしれません。例えば「話をよく聞く優しさを持つ」といった簡単なことから始めてみてはどうでしょう。人は話を聞いてもらうことによって「私のことを理解してくれている」と感じるものです。そのような「話をよく聞く」職場作りも実は受け入れ体制の一つなのだと思っています。

 これから新たに障害者雇用を始めようとする企業に向けてメッセージをお願いします。

  障害者の方の特性をなるべく早くに見極めて、どういったことで問題が起きてしまうのかを一つずつ丁寧に分析し、その人に合った指導方法や対応をしていただければと思います。

 私たちも新たに障害者の方を受け入れる時にはそれなりに慎重になります。そのためトライアル雇用を活用しているのですが、実際に活用して感じることは、トライアル雇用のように段階的に受け入れを行うことは、障害者にも企業側にも双方にメリットがあって有効だということです。障害者の方にとっては徐々に職場環境に慣れていくことが可能ですし、企業側は期間中にその人の障害特性を理解することが出来ます。ぜひご活用いただければと思います。

              清水典昭 理事            

                      (清水 典昭 理事)

訪問を終えて

 当日は「貴峯荘」の会議室で清水理事と渡辺総務部長にお話をお伺いしました。

 神奈川県厚生協会は昭和24年に傷痍軍人の職業訓練所として始まった歴史があり、今でも施設利用者の大半は身体障害の方なのだそうです。車椅子を利用されている障害者の方も多く、館内のバリアフリー化も進んでいました。

 取材中に「障害者雇用がなかなか進まない原因」についてお考えを伺うことが出来ましたが、そのお話を聞いていると「障害者を受け入れる体制」のソフト面を整えることは「誰もが働きやすい職場環境」作りに繋がるのではないかと気づきました。相手の話をきちんと聞いてくれる職場環境は、障害者だけではなく健常者にもきっと優しく働き易い環境になります。

 ハード面のバリアフリー化とともに、ソフト面で充実に取り組み、「心のバリアフリー化」を進めて誰もが気持ちよく働ける職場作りをすることがこれからは大事になると感じました。

(平成25年10月28日取材)

神奈川県

このページの所管所属は 産業労働局 労働部 雇用対策課 です。

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