障害者雇用優良企業インタビュー(ニッパ株式会社)[No.14]

掲載日:2013年10月25日

障害者雇用のきっかけ・目的

  • 昭和36年、文字も数字も出来ない近所の知的障害者が工場によく遊びに来ていた。試しに仕事をやらせてみたら見よう見まねで出来るようになったので、アルバイトから始め、昭和47年に正規雇用した。
  • 同じ年、知的障害者の実習を一気に7名受け入れた。社員から猛反対されたが「あなたたちの兄弟や子供だったらそんなこと言えるの?」と社長が説得。掃除を中心とした実習の後、能力の一番高い人と一番障害の重い人の2名を採用した。
  • 障害者は会社の中に居場所があるとそれが幸せに繋がる。働いている顔も生き生きとして来る。障害者から学び取ることは多く、そのために雇用を続けている。

障害者雇用に対する取組み

  • 8名の職業生活指導員が障害者の様子をしっかり見るようにし、体調管理など生活面での管理をしている。
  • ノーマライゼーションを進め、障害者も健常者と一緒に仕事をするようにしている。
  • 地域作業所や特別支援学校への発注や職場実習などを積極的に行っている。

障害者が従事している業務について

 当社は段ボール製品の製造、組立、販売などを行っている会社です。現在7名の知的障害者(うち5名は重度障害者)が段ボール製品の組立やバリ取り(型で抜いた段ボールの縁を取る作業)、ワイヤー止めなどの仕事をしています。

 段ボールをロット単位にまとめます。   素早くコーナー用緩衝材を組立てます。

    段ボールをロット単位にまとめます。    素早くコーナー用緩衝材を組立てます。

秋本代表取締役に伺いました!

最初の実習で能力の一番高い人と一番障害が重い人を雇用されたのは、何か理由があってのことなのでしょうか?

  能力の高い人は文字も書けましたし障害が軽度でしたので雇用したのは当然だったのですが、一番障害が重い人は自分の名前さえ書けませんし数を数えることも出来ませんでした。にもかかわらず雇用したのは、指導によってどこまでその人が成長できるかを見てみたかったからです。

 障害こそ重かったけど、その人は実習中から負けん気がとても強いなど気持ちの面で人一倍強いところがありました。そこに伸びる可能性を感じたんですね。まずは段ボールを5枚一組の単位にまとめて結束できるよう1から5までの数字を覚えてもらいました。数えられたら飴をあげたりして一緒になって本当に根気よく取り組みました。するとやはり、少しずつではあるけれど覚えるようになっていくんですね。それはもう嬉しかったですね。重度知的障害者の人は確かに仕事を覚えるまでには時間がかかります。けれどこちらが一生懸命に教えれば、必死に応えようと真面目にがんばってくれます。他で働くチャンスが極端に少ないという状況もありますが、そのがんばって働く姿を見て重度知的障害者の雇用を続けようと思いました。今では特別支援学校などから紹介される人のほとんどが重度知的障害者です。「障害が重いけどあそこならたぶん受け入れてくれる」と学校側が思っているんじゃないですかね(笑)。

 能力の高い人はどうでしたか?

  それが長続きしなかったんです。1年もしないうちに残念ながら辞めてしまいました。能力が高い比較的軽度の知的障害者の人は働いていくうちに「自分は健常者と変わりがない」とか「障害者の中のエリート」と言った意識が少なからず芽生えてくるようなんです。そういう人の親御さんも「うちの子は障害が軽い」などと言うものですから、ますます本人がその気になってしまう。以前、アビリンピックに出場して準優勝した知的障害者が、その後「エリート意識」を持ってしまい周囲の人よりも仕事が出来ると勘違いしてしまったことがありました。その人は段々と周りの言うことを聞かなくなっていき、ついには指示を受けることが面白くなくて会社に来なくなってしまい辞めてしまいました。また、別の軽度知的障害者の話ですが、その人は条件の良い会社の話を聞きつけ、自分で勝手に会社へ面接に行ってしまったなんてこともありました。

 障害者雇用の経験からすると、軽度知的障害者は仕事に対する理解は早いけれど長続きしない傾向があるのではないでしょうか。

障害の程度が軽い人ほど問題行動を起こしやすいようにも聞こえますが。

 いいえ。そういうことではありません。障害者を雇用すれば障害の重い軽いに関わらず、何らかのトラブルは起きてしまうものです。実習や面接のときなどは最初ということもあって借りてきた猫のように大人しいものですが、その後は予想さえしなかった出来事が次から次へと出てきます。そういったことは発生した都度対処していくしかないのですが、性癖や盗癖など犯罪に関わることであればますます会社は巻き込まれてしまいます。

 知的障害者の人たちに「よくうなずいて、いつも笑っていて、素直」とか「嘘をつかない純真な人」といったイメージを持たれている人もいらっしゃいますが、それは本当の姿ではありません。知的障害者も自分の立場が悪くなったりすれば平気で嘘はつきますし、事実を都合の良いように変えて言うこともあります。悪意のないものがほとんどですから、冷静に話をしっかりと聞くことで「おかしい」と気がつくことができますが、知的障害者も人間ですから嘘くらいつくものなんだという認識は持たれた方が良いかと思います。

障害者雇用は言うほど簡単ではないのですね。でもそこまでして障害者雇用に取り組まれているのは何故なんでしょうか?

 正直、障害者の雇用はもう止めようと思ったことはあります。工場で大きな事故を起こしてしまってからでは遅いですからね。けれど同じように苦労して会社で知的障害者の雇用に取り組まれている人の話やその人が「彼らから学び取ることもある。」と発言されたのを聞いて、悩みましたが「もう一回がんばって雇用を続けてみよう」と思うようになりました。

 重度知的障害者は欲徳のない人たちだと思います。例えばこの間、工場の作業で使うカッターなどの工具類を収納できるベルト装着型のケースを自分で買ってきた知的障害者の人がいます。作業の邪魔にならないホルダーケースはなかなか見当たらず会社としても用意出来ずにいたのですが、彼はどこかで見つけて自分のお金で買って来て作業をしていました。買ってきた後に会社へお金を請求することもありませんでした。思わず朝礼の時にみんなの前で発表して褒めてしまいましたね。健常者ならすぐに会社に領収証を持ってくるでしょう(笑)。別にお金がどうこうではないんです。お金の損得ではなく、仕事に使えそうだと自分で考えて買って来たその姿勢が素晴しいので褒めたんですね。

 とかく人はお金のために働いてしまいがちですが、彼らはお金のためではなく生きがいを求めて働いているところがあります。そんな人たちにこそ生きがいを与えないといけない。最近ではそれが自分の使命、義務のように感じています。

 これから障害者雇用を考えている企業に向けて何かメッセージをいただけますか?

  そうですね。今まで色々と大変だということを申し上げて来たので、障害者の雇用は難しそうだと感じられた人もいるでしょう。確かに簡単ではありませんが、かと言って身構えてしまってもいけません。特別なことと身構えずにごく自然に障害者と接していただきたいと思いますし、それが雇用を長続きさせる一番の秘訣だと思います。障害者だからといって特別視すれば、健常者も障害者も職場でお互いに窮屈な関係しか結べなくなってしまいます。ですからお昼休みなどを利用してなるべく障害者に声をかけるなどして、一緒に働く仲間として受け入れて欲しいのです。

 また、一人だけの採用では健常者でさえ心細いものです。複数名採用すれば仮に悩みがあっても障害者同士支え合うことが出来ますし、雇用する側も障害者に対して気を使い過ぎることがなくなるなどメリットがありますから、雇用の際には複数名採用されたほうが良いかと思います。

                 秋本りつ子 代表取締役                          

                      (秋本 りつ子 代表取締役)

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               ※音声内容テキストページ [Wordファイル/11KB]

訪問を終えて

 重度知的障害者の雇用に対して古くから取り組まれた歴史とそれだけの実績があるからか、今回のインタビューでは秋本代表取締役の落ち着いた話し方と率直な意見や感想の数々が印象に残りました。色々なお話をお伺いすることが出来ましたが、ボリュームの関係でほんの一部しかご紹介できないのがとても残念です。

 取材中、新鮮に感じられたことの一つに「知的障害者も嘘をつく」というお話がありました。障害者も同じ人間ですから、普通に考えれば当然健常者と同じようにそうした部分を持っているはずなのですが、ついついステレオタイプのイメージに絡め取られてしまい忘れてしまいがちです。

 これまで率先して難しい障害者雇用に取り組み、障害者と密接に関わってきた会社だからこその経験から生まれた言葉に、先入観ではなく人物そのものを見ることの大切さを再認識しました。

(平成25年9月6日取材)

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このページの所管所属は 産業労働局 労働部 雇用対策課 です。

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