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更新日:2023年11月27日

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障害者雇用優良企業インタビュー(社会福祉法人光友会)[No.12]

かながわ障害者雇用優良企業である社会福祉法人光友会の障害者雇用取り組み事例です。

障害者雇用のきっかけ・目的

  • 1977年に障害者の地域作業所としてスタート。
  • 職員数の10%を障害者とする数値目標を早い時期から設定し取り組んでいる。

障害者雇用に対する取組み

  • 障害の特性や障害者の適性を考慮して、その人が一番能力を発揮できる部署へ配属するよう心がけている。
  • 障害者との長い期間の関わりの中で、障害者が出来ることを一緒になって考え探していくようにしている。
  • 職場見学を積極的に受け入れている。

障害者が従事している業務について

光友会は子供から大人まで様々な障害福祉サービスを提供している団体です。

光友会の職員として働いている障害者の方たちは各事業所の清掃、施設の営繕作業、デイサービス利用者へのリハビリ・マッサージ業務、事業所で印刷や製パンの作業指導員、配送業務、ワークショップでの書類整備などの事務関係の仕事に従事しています。総務事務では管理職をしている方もいます。

五十嵐理事長に聞きました!

事務所の入口の所にナスの無人販売のコーナーがありましたね。こちらで作られているんですか?

そうですよ(笑)。当会ではパウンドケーキやサブレ、クッキーなどの菓子類、パン、うどん、お豆腐や豆乳、お弁当など多くの商品を作っていますが、最近特に力を入れている事業が農業なんです。農業をやると草取りや植え付けの仕事はもちろん、計量やパッケージング、販売など色々な仕事が生まれてきます。そうすると障害者の方たちに多くの仕事を経験してもらうことが出来ますよね。このご時勢ですから、就労した先の企業の仕事がいつまでも同じようにあるとは限りませんよね。障害者の方も一つの仕事だけではなく、色んな仕事を経験して能力を高めていかないと駄目なんです。

事業を多角化するとそれだけ障害者の能力開発につながっていくのですね。でも、販売するのが大変なんじゃないですか?

そこも当会が力を入れているところです。やはり販売が安定して収益が多少なりとも出ないことには事業は成り立ちません。事業が成り立たなければ障害者の方たちに仕事を確保することが難しくなりますし、障害者の方にも説明が出来ません。当会では日ごろから職員自身が持つコミュニケーション能力をフルに活用して、地域の方たちとの繋がりの中からや、クラブなど団体のメンバーになって人間関係を築いていく中で、スーパーや病院の売店、福祉センターなど販路の確保に取り組んできました。

完成品を販売することはもちろんですが、例えば農作物で販売しにくい規格外品をジャムにしてみたり、給食の材料にしてもらったり、少しでも無駄が出ないように知恵を絞って工夫もしてきました。また、当会では商品の品質や商品価値といったものにもこだわっています。お情けで買っていただいても次はありませんからね。やはり「安全」とか「無農薬」、「地産地消」といったキーワードとともに、「美味しい」など商品そのものの魅力がないとリピーターが増えていきません。

多角化した結果、こちらでは色々な仕事が出来るようになりました。障害者の仕事はどうやって決めているのでしょうか?

障害の特性や障害者の適性を考慮して、極力ハンデキャップを無くし本人が一番能力の発揮できる部署に配属するように気をつけています。例えば知的障害の方は良く動けるので清掃などの仕事なら健常者と変わりなくすることが出来ます。身体障害者の方はパソコン業務が出来るなら事務仕事でのハンデキャップは無いに等しい。運転免許証を持っていて本人に問題が無ければ配送業務もすることが出来ます。当会では障害者の方との関わりの中で出来ることを一緒になって考え、探していくようにしています。

担当の仕事が決まったら次は教育や指導になります。コツみたいなものはあるのでしょうか?

障害者だからたいした仕事は出来ないだろうと思ってしまう人もいますが、実際は障害者の方も出来るようになろうと必死で努力しますし、分からないことがあれば自分で理解しやすい方法を見つけようとします。そのあたりは健常者と何ら変わりがありません。安全に関することなど早く覚えてもらわないといけないことは最初に集中的に教え込みますが、それ以外のことは特別視せずに「ゆっくり、丁寧に」を心掛けて指導するようにしています。

そして障害者の方が仕事を理解し覚えてしまうと、今度は健常者以上に堅実な仕事をしてくれるようになります。周囲にいい影響を与えた例もあるんですよ。当会の施設を利用していた障害者の方の就職先で、職場のパート従業員がよく不平や不満をこぼしていた会社があったそうです。その会社は障害者の方が働くようになってから、真面目にしっかりと働く障害者の姿にパートなど他の従業員が感化され、職場から不平不満が聞こえなくなり作業品質が上がったのだそうです。

それは、非常にわかりやすい好事例ですね。

そうですね。ただ、全ての会社が障害のある方に理解があるわけではありません。この間も一般就労で3ヵ月間雇用された企業から「やはり駄目です」の一言でこちらの施設に戻ってきた人がいました。もちろん企業側に説明を求めましたが、結局何の回答もありませんでした。おそらく障害者雇用率の数字合わせのためだけの雇用だったのでしょう。このように障害者の方を労働力とは見ないで単に数字合わせのためだけにとらえている企業があるのも残念ながら現実なのです。

当会では就労現場の見学を随時行っています。訪問した企業の方が「この人なら良さそう」とか「この人はうちの会社で働けるスキルを持っている」など障害者の方をきちんと見て評価してもらい、お互いに実のある就労に結びつくような形にしていくことが今後の重要な役割だと感じています。

就労に当たって職場で気をつけないといけないことは何でしょうか?

障害者を孤立させないことです。ここには聴覚障害の方もいるのですが、職場での会話中に話している人の口が読めない時などはやはり疎外感を感じてしまうことがあるようです。手話が使える人がフォローしますが、こちらからも「分かっていないかな」と感じたときには肩をたたいてみたりして確認するようにしています。今では障害者の方も分からないときは「今のは何だったの」などとこちらに聞いてくれて、いい関係が築けています。手話が出来ない人も障害者の方と「仕事で使うオリジナル手話」を編み出して仕事中にコミュニケートしていますよ。その手話の内容は私にも分かりません(笑)。

そのいい関係を続けていく上で大切なことって何でしょう?気持ちや時間的な余裕といったものでしょうか?

もちろんそれもありますが、職場でいい人間関係を維持していく為には、やはり職場の全員が元気に挨拶することが大切ですね。そうすることで障害者の方も安心して働くことが出来ると思います。

私たちも実は「障害者の方たちとこうすればうまくコミュニケーションが取れますよ」といった答えを持っているのではありません。ただ言えるのは「障害者を放っておかないこと」「本音でぶつかり合うことが大事だよ」ということくらいです。コミュニケーションの方法にマニュアルはありませんが、朝礼やミーティングなど障害者の方が本音の話を出せる機会を積極的に作り、お互いにぶつかり合って人間的理解を深めていくことがとても重要なんだと思います。

五十嵐紀子理事長

(五十嵐 紀子 理事長)

訪問を終えて

当日は五十嵐紀子理事長、平澤清神奈川ワークショップ所長、中野健士ライフ湘南所長にご対応いただきました。

取材中、保護者の方が病気で入院されている知的障害のある社員のお話を伺いました。この方のお兄さんは精神障害で、就労出来ずに引きこもっている状況です。2人だけでの生活ではきちんとした食事がとれないので、お弁当を格安で提供し、帰りに社員に持たせて、一日一食くらいはきちんとした栄養のある食事が出来るようにしているんですと話されていました。

障害者は普段の生活が仕事に影響しやすいので、家庭生活の安定が就労の安定に繋がることが多いとよく聞きます。その意味でも家族との密接な関係は重要なのですが、一方で雇用する企業にとっては「どこまで家族と関わってよいのか判断が難しい」という話もよく聞きます。

「ここまですることが普通かどうかは分からないけれど、当会では積極的に関わっていくようにしています」と言った理事長の言葉がとても頼もしく思えました。

(平成25年8月30日取材)

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