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更新日:2023年3月23日

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障害者雇用優良企業インタビュー(公益財団法人横浜市知的障害者育成会)[No.64]

かながわ障害者雇用優良企業である公益財団法人横浜市知的障害者育成会の障がい者雇用取り組み事例です。

横浜市神奈川区二ツ谷町9丁目5番地

http://www.ref.jeed.or.jp/25/25076.html

伊澤センター長に聞きました。

今回は、公益財団法人横浜市知的障害者育成会伊澤センター長にお聞きしました。

横浜市知的障害者育成会

 

横浜市知的障害者育成会の障がい者雇用事業である「ワーキングセンター」について教えてください。

当センターでは、清掃と植栽管理を請け負うほか、売店の運営を行っています。そして、一昨年からはレストラン運営も受託

しています。

現在、30名の障がい者の方が働いており、そのうち知的障がいのある方が27名、身体障がいのある方が3名おり、うち1名は在宅

勤務で雇用しています。

-在宅勤務の方について教えてください

在宅勤務の方については、この方が神奈川障害者職業能力開発校の「トライ!」eラーニングコースを受講されていたことがご縁と

なり、雇用に至りました。絵を描くことが得意なので、レストランのメニューのイラストなどを作成してもらっています。

勤務管理については、毎朝メールのやりとりをしており、そのやりとりの中で、一日の仕事の内容やスケジュールなどを把握しています。

仕事の時間をきっちりと区切ってしまうと、身体に負担がありますので、ある程度仕事のリズムはご本人にお任せしていますが、

1日4時間で週に5日間働いてもらっています

-在宅勤務の方はお勤めになってどれくらいたちますか?

もう3年になります。

-他の皆さんもお勤めになって長いのでしょうか?

皆さん長く働いてくれています。一番長い方は勤続34年です。昭和57年にワーキングセンターが設立され、それ以来勤めており、

来年定年を迎えます。また勤続30年以上の方は、5人おります。

-そのように長く勤務できる要因はどのような点にありますか?

障がい者の方々にできる仕事を作り出してきたことと、ともに働く仲間がいることが大事だと思っています。仲間がいることによって、

仕事に対する責任感が生まれていると思います。自分が行かないと仕事に穴を開けてしまうという意識が強いですし、

一年の中で休むこともほとんどありません。炎天下の中で作業するときもありますが、我慢強く仕事をしてくれています。

皆さん、長く勤務なさっていますが、新規の採用はどうなさっていますか?

業務の拡大に合わせて採用をしており、今は毎年1名の採用を続けています。採用ルートとして障害者就職面接会を活用していて、

やる気があり、なぜ働くかという目的意識が明確な方を採用しています。

-気持ちの部分を大切にしているのですね。

そうですね。気持ちの部分を重視しています。障がい者の方は、障がいのない方に比べて業務を習得するまでに時間が

かかる面もあります。しかし、協力し合えば、必ず仕事は完結することができるので、能力の有無よりも、熱意を重視しています。

清掃や植栽管理など様々な業務がありますが、採用後の配置はどのように決めていますか?

入社後、まずは職員と一緒に働きます。日産スタジアムの外周の清掃を請け負っているのですが、そこで働きながら、8時間勤務

が可能かどうかや、体力面で問題がないか、また人との関係作りを上手にできるかなど色々な面を見ています。その後、配属する

現場を考える際には、その人の得意なことなども考慮した上で、配置するようにしています。

上手に仕事を完結させることばかりにとらわれるのではなく、障がい者の方たち同士がどのように力を発揮して仕事が完結

できるかに着目して進めています。

清掃や植栽管理などの技術はどのように指導していますか?

清掃や植栽管理も、私たち職員が技術を身につけ、職員自身で障がい者の方に教えることができるようにしています。私は元々清

掃業務に携わっていましたし、植木の剪定も好きでやっており、教えてみたところ、違和感なくできました。また私自身がこのセンター

で働くようになって長いのですが、常に、障がい者の仕事をどのように創出していくか、彼らがどのようなことができるかを考えて

います。

-そのように教える職員の方は今、何名いらっしゃるのですか?

6名です。6名で、清掃業務や植栽管理などの造園業務、売店の運営について、障がい者の方々の業務の支援を行っています。

また、一昨年からはレストランの仕事を受託し、障がい者の方には調理補助の仕事を任せています。

-レストランの仕事を始めてまた仕事の幅が広がりましたね

そうですね。レストランのコンセプトに「障がい者の、障がい者による、障がい者のためのレストラン」というものがあります。

というのも、このレストランを利用される方も障がい者の方が多いですし、調理をする側にも障がい者の方がおります。

ですから、利用した方が障がいのある職員が働く姿を見て、自分もいつかここで働きたいと言ってくれることが、とても嬉しいです。

ただ、このレストランは元々、前の業者さんが撤退した後に私たちが後を引き継いだものなので、はじめは以前からの従業員の

方々には、戸惑いもあったようです。

-障がい者と一緒に働くことが初めてだったからですね

そうですね。どのように接すればよいか、どのように指導すればよいかという点に最初は戸惑っているようでした。

しかし、一緒に働く障がい者の障がい特性や、任せたい仕事などについて相談したり、私たち支援職員との意見交換の中

で、徐々に障がい者の方について理解を深め、障がい者の方のサポート方法を学んでいます。

そのようにして私たちセンターも、少しずつレストランでの仕事という新しい仕事に一歩が踏み出せているのかなと思います。

障がいの重い方もいらっしゃると思いますが、コミュニケーションをとる上で何か気をつけていることはありますか?

心がけていることとしては、例えば仕事のシフトなどに関しては、常に連絡帳を携帯してもらい、連絡帳を通じて仕事上の変更点

や、スケジュールを本人が忘れてしまわないようにしています。

また、ご家庭にも連絡して、ご家族とも情報共有をするようにしています。ですから当センターとご家族との連携はかなり深いと思っ

ています。

皆さんフルタイムで勤務なさっているのですか? それとも障がい者の方によっては時短勤務としているのでしょうか?

来年定年を迎える64歳の方は体力的に厳しくなっているとご本人からの申し出がありましたので、今は時短勤務に切り替えています。

ただ、障がいのあるスタッフの場合、体力的に厳しくなってきている事が加齢によるものなのか、それとも障がいによるものなのか分か

らない面もあります。

ですから、なるべく頻繁に顔を合わせるようにして、体調についてたずねたり、疲労の度合いについて聞き出したりしています。

-なるべく顔を合わせるようにして体調の把握に努めていらっしゃるのですね。

そうですね。この方は来年定年を迎え、引退することによって、労働者から福祉の利用者となります。ですから今、グループホーム

の方や、ケースワーカーの方にも、引退したらどのように過ごしていきたいかについて、本人の希望を踏まえて話し合いを始めてい

ます。

お仕事をなさる中で、受託先のスタッフの方ともコミュニケーションがありますか? 

あります。この仕事はお仕事を発注してくださる方の御理解と御協力がなければできないものですし、私たちはこの仕事を「社会的

就労」と言っていますが、社会的就労の目的の中には、不特定多数の方が利用する施設で、多くの人に障がい者が働いている姿を

見ていただくという目的もあります。働く姿を施設の利用者の方に見ていただき、また声をかけていただいて、コミュニケーションが生

まれることによって、障がい者への理解を深めていただければと思っています。

もちろん不特定多数の方が利用する施設なので、良い事ばかりでなく、苦情もあります。それでも障がい者が外で働くことで、障が

い者について知っていただく、また障がい者が働く中で、良いことも悪いこともあり、その両方があることがノーマルであることを知っ

てもらうという点を私たちは一番大切にしています。

これから定年を迎える方も出てくる中で、組織をどう変えていきたいとお考えですか?

一昨年に新しくレストランでの仕事を始めたのも、事業の幅を広げたいと考えたからです。清掃の仕事だけでなく、

若い障がい者の方がやってみたい仕事は何かを考えた時にこの事業に行き着きました。

私は定年を迎える方たちとともにリタイアしていきたいと思っています。だから、若い人たちには、若い人たちの仕事や組織のスタ

イルを自らの力で見つけていってほしいと思います。そういう風に次の人たちにバトンを渡して行きたいです。

これから障がい者雇用に取り組む企業にメッセージをお願いします。

私は障がい者にとって雇用こそが最大の福祉であると思っています。また、障がい者にとって、生きがいのある人生というのは、働

く中で生まれると身を持って感じています。

障がい者にはたくさんの可能性がありますので、様々な業種の方が障がい者雇用にトライしてその可能性を見出してもらいたいと

思います。

訪問を終えて

障がいの特性に合せて、事業を広げていくことと、ともに働く仲間がいることの大切さを感じました。日々の経験を分かち合える仲間

の存在と、支える職員の方の力によって、障がい者の方が継続して働くことができるのだと思いました。

(平成29年7月20日取材)

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