長期継代アユの利点

掲載日:2017年8月1日

長期継代アユの特性

 放流・養殖に用いられているアユ種苗のうち人工種苗は、計画的な生産が可能で安定的に供給できること、また、他の地域からの病原体の侵入を防ぐという魚類防疫上からも重要な役割を担っています。
 内水面試験場では、長期継代種苗に由来する親魚を養成し、その種卵を県内水面種苗生産施設へ供給するほか、河川放流に適した人工種苗についての研究を進めています。
 種苗生産の現場では、まず、親魚の養成と採卵作業があり、卵管理を経て、ふ化、仔稚魚の飼育管理と作業が進んでいきます。安定的な種苗の生産と供給には、十分な量の種卵を確保する必要があり、そのために親魚の採卵期などの特性を把握することが重要となっています。そこで、長期継代種苗と今回、新たに導入した海産系の短期継代種苗について、その親魚の採卵期と卵質について比較試験を実施しました。
 試験に供したアユは、現在河川放流・養殖用として本県で生産されている長期継代系の27代目(平成16年)から28代目(平成17年)の親魚と平成16年に相模湾で採捕された海産稚アユを養成した1代目(平成16年)の親魚、この親魚から秋に採卵・ふ化した短期継代系の2代目(平成17年)の親魚を用いました。
 平成16年の採卵期(図1)を見てみますと、27代目は8月23日から始まり、10月4日に終了しています。
これに対して、1代目は11月15日から始まり、12月20日に終了し、27代目と1代目の採卵の開始時期はおよそ1ヵ月半ほどずれていることが分かりました。
 翌年の平成17年の採卵期(図2)を見てみますと、28代目の採卵期は8月29日から始まり、10月3日に終了しました。
 このように、長期継代系の採卵は例年、8月下旬から始まり、9月中旬にピークを迎え、その後、次第に採卵親魚数が減少する形式を示し、採卵期は安定しています。一方、2代目の採卵期は10月21日から始まり、12月20日に終了しました。
 ここで、前年の1代目と比較しますと、平成17年の採卵の開始時期はおよそ1ヶ月ほど早まり、採卵期が不安定で、しかも、少量の親魚からしか採卵できない状況が採卵期間中続き、同一日にまとまった量の卵は確保できませんでした。
 今後、両者とも飼育を継続していきますが、特に、平成18年の3代目の採卵期がどのようになるか興味のあるところです。
次に親魚から得られた卵についてです。卵全体に対する発眼卵(ふ化直前で卵の中に眼ができているもの)の比率を発眼率といいますが、平成17年の2代目と28代目を比較しますと(図3)、28代目の53.5%に比べ、2代目は38.0%と低くなりました。
 また、2代目と28代目について、雌親魚全体(それぞれ第1回目の採卵日に飼育していた尾数)に対する採卵した雌親魚の比率(ここでは採卵率とする)を算出してみますと、28代目の84.0%に比べ、2代目は43.6%と低くなりました。
 種苗生産に用いる親魚の性質として、同一日に採取した大量の種卵が計画的に確保できることが求められますが、長期継代系の親魚では、大量に卵を採取できる日の予想が立てやすく、計画的な作業が実施できます。また、採卵率では84%とほとんどのすべての雌親魚から採卵できることから、飼育している親魚が無駄になりませんし、飼育している親魚の尾数から得られる種卵の量が予測できます。
 一方、短期継代系の2代目では、まとまった量の卵が確保できる日の予想が難しく、採卵率では43%ととなり、半数以上の雌親魚からは採卵できず、親魚が無駄になってしまい、所定量の種卵を確保するには余剰に親魚を飼育する必要が生じてしまいます。さらに発眼率も低いため、その分、採卵量を多くして、卵管理する必要があります。発眼率が低いこととは、すなわち、死卵の比率が高いことですから、卵管理の際に、死卵に発生した水カビによる種卵の汚染のリスクも高くなります。
 このように長期継代系と短期継代系の親魚の性質を見てきましたが、種苗生産事業に用いる場合、長期継代系の親魚が適しており、現時点では、短期継代系の親魚に切り換えることは困難であると考えられました。
 今後、内水面試験場では引き続き人工種苗の比較試験に取り組むとともに、河川おけるアユの環境収容力の把握(付着藻類の生産力とアユの現存量の関係)についても研究を進めてまいりますので、ご指導、ご協力よろしくお願いいたします。

平成16年の人工産アユの産卵期
平成17年の人工産アユの産卵期
発眼率の平均値
神奈川県

このページの所管所属は 水産技術センター内水面試験場 です。

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