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湘南海岸砂防林


印刷用ページを表示する 掲載日:2012年3月7日

砂防林の歴史砂防林の保護育成・維持管理

 湘南海岸では、毎年10月から4月にかけて、時折強い南西風が吹き荒れます。かつては飛砂(堆砂)で国道134号が通行止めになるなど海岸地域の生活に大きな影響を及ぼしています。こうした飛砂や塩害、強風から県民生活を守り、さらに沿岸地域の景観を彩り自然環境を保全する重要な緑地として、砂防林の保護育成を進めています。

 砂防林は、昭和3年に植栽が始まっていますが、第二次世界大戦と戦後の混乱期及び昭和30~40年代の台風による被害などによりたびたび荒廃し、その都度大規模に植栽をやり直し、当初植栽から約80年を経た現在、藤沢市鵠沼海岸から中郡大磯町東町まで、国道134号の南北両側に並行して、延長11.4km、面積85.2ha、平均幅80mの広さをもつ良好な海岸緑地に成長し、住民の暮らしを守っています(図1参照)。

 (図1)湘南海岸砂防林位置図

砂防林位置図

 湘南海岸砂防林は、他の地域の海岸林や砂防林と比較して、汀(てい)線(波打ち際)から林までの距離が短く樹木が飛砂や潮風の害を受けやすい厳しい環境に立地しているうえ、林の幅が狭く樹木の僅かな枯れでも砂防林の機能に大きな影響を与えてしまうという条件にあります。

 そこで、砂浜では飛砂を抑制する砂草(コウボウムギやハマヒルガオなど)の育成を図るとともに、砂防柵を設置し飛砂を抑制し、樹林部では南側に特に飛砂に強い広葉樹の低木帯を設けたり、防風ネットを設置したりして、砂防林を維持しています(図2参照)。単一樹種の林より多様な樹種による林の方が生態的に強いことから、当初から植栽されているクロマツに加え、アキグミ、ウバメガシ、スダジイ、モチノキ、タブノキ、ヒメユズリハ、ヤブニッケイ、ヤブツバキ、ヤマモモ、カクレミノ、ネズミモチ、トベラ、マサキ、シャリンバイの計15種に自然に侵入した樹木を加え、諸害に強い砂防林育成を行っています。

 砂防林の防風効果が及ぶ範囲は、樹高に比例することが研究成果から知られており、樹高10m程度の砂防林の場合、風上側に数十m、風下側には200mから300m程度の範囲に防風効果が及ぶと推定されます。

 (図2)砂防林断面図

砂防林断面図

 左から、飛砂発生の瞬間、強風後のサイクリング道路、砂防柵の写真です。 

飛砂発生の瞬間 強風後のサイクリング道路 砂防柵

   左から、防風ネット、良好に生育したクロマツ、林内の様子の写真です。 

防風ネット 良好に成長したクロマツ 林内の様子


砂防林の歴史

 大正9年 海岸地域の土地開墾を目的として地盤保護のための植栽(120ha)が開始されました。

 昭和3年 昭和天皇即位記念事業の一環として、藤沢市片瀬(当時)から平塚市南浜岳(当時)までの約180haの魚付(うおつき。沿岸漁業資源を育むことを意味します。)海岸砂防林の造成が始まりました。前年に海岸砂防事務所が茅ヶ崎市小和田(当時)に設置され事業実施にあたりました。

 昭和6年 県道片瀬大磯線(現在の国道134号の藤沢市片瀬海岸から大磯町大磯までの区間)が海岸造林地の中央を貫く形で着工、大磯町での新たな造林など海岸砂防造林も積極的に推進されました。

 次の写真は、昭和5年に撮影された、平塚須賀海岸の松苗植付の様子、片瀬魚付造林の一部を望む様子の写真です。

平塚須賀海岸 魚付砂防造林地 松苗植付 昭和5年11月撮影 片瀬魚付造林の一部を望む。昭和5年11月撮影

 昭和16~20年 第二次世界大戦中、造林地の一部が軍用地や演習地となり、維持管理等は中断しました(海岸砂防事務所も閉鎖)。戦中、戦後には植栽したクロマツが資源として注目され、松根油採取のための伐根、燃料としての伐採などにより造林地は荒廃しました。

 昭和21年 飛砂で国道134号が埋没するなど交通や生活に支障をきたしていたため、駐留進駐軍総司令部の命もあり、造林を再開しました(湘南海岸砂防事務所を藤沢市鵠沼に設置)。

  昭和21~43年 国庫補助及び県単独事業として砂防林造成(植栽や砂防柵設置など)が推進されました。この間、藤沢市辻堂(当時)の旧海軍演習地が県に払い下げられ、国道134号の付け替えと併せて、同地区の砂防林植栽を行いました。

 昭和36年の第2室戸台風、昭和41年の26号台風による強風や潮風、さらにこの間の異常乾燥によって、国道の南側を中心に壊滅的な被害を受けました。国の林業試験場、東大の芝本農学博士らに指導を仰ぎ、また新たに国庫補助を受け、改植を実施。改植にあたってはクロマツとマサキ、トベラの混植や防風ネットの設置などの工法が採用されました。

 次の写真は昭和36年の第2室戸台風被害状況と昭和45年当時の砂防林の写真です。

第2室戸台風被害状況(茅ヶ崎海岸)昭和36年 昭和45年当時の砂防林

 昭和58年~ 砂防林をより美しく安定した飛砂防備林とするため、横浜国大宮脇教授の指導により常緑広葉樹をクロマツの下や南側、混交密植を開始しました。昭和62年、平成2年には県民参加による植樹フェスティバルを開催、合わせて3万人が30万本を植栽しました。

 平成4~12年 大きく成長した砂防林内で森林浴をしながら砂防林への理解を深めていただこうと、林内に散策路やベンチ等を整備した「しおさいの森」を4箇所に整備しました。

 次の写真は、マツと並んでよく成長した常緑広葉樹と、しおさいの森散策路の写真です。

マツと並んでよく成長した常緑広葉樹 しおさいの森散策路 


砂防林の保護育成・維持管理

 砂防林の保護育成のため、次のような作業・維持管理を行っています。

 【除草(草刈り)】植栽した木が雑草や”つる”に負けないよう、さらに景観維持のために、夏期の除草を行います。また、冬期は、たばこのポイ捨て等による火災を予防するために、道路沿いを中心に枯れ草の除草を行います。

 【病害虫防除】クロマツを枯らす病虫害を防止するため薬剤散布を行います。薬剤散布は、通常はマツノマダラカミキリ(※)を対象とし5月~6月の早朝に1回のチアクロプリド水和剤散布を行っていますが、害虫の蔓延があれば対象害虫に合わせて必要最小限の散布を行う場合があります。

 ※マツノマダラカミキリ:マツを枯らすマツノザイセンチュウ(体長約0.5mm程度)を媒介(運搬)する運び屋。この運び屋のカミキリムシがマツノザイセンチュウを乗せて健全なマツに飛び移るのを防ぐことが薬剤散布の目的です。

 次の写真は、左から除草と病害虫防除の作業中の写真です。

除草 病害虫防除

 【樹葉洗浄・散水】クロマツに付着した飛砂や風送塩を散水により洗い流します。また、異常乾燥時にも、植栽木を乾燥害から守るため散水を行います。

 【育林・保育】数年に1回の頻度で、生育している樹木の本数を適正に調整し、健全な育成を図るため、樹木の間伐(間引き伐採)や枝落とし(枯れ枝が中心)等を行います。通常、秋から翌春にかけて行います。

 次の写真は、左から飛砂や塩を洗い流す樹葉洗浄と間引き直後の林内の状況の写真です。

飛砂や塩を洗い流す樹葉洗浄 間引き直後の様子

 【被害木伐採】病虫害等で枯損した樹木を放置すると病虫害が蔓延する場合があるので、随時伐採します。

 【補植】枯損箇所等への補植を行うため、砂防林に生育している樹木から種を取るなどした苗(クロマツが主)を苗圃で3年かけて育成し、湘南の気候風土に合致した強い苗を作っています。

 【支障木剪定等】砂防林の樹木が隣接する道路や住宅等との境を越えて枝を伸ばした場合に、剪定や伐採を行います。

 次の写真は、枯死したマツ、植栽したクロマツの苗、剪定作業の写真です。

枯れマツの様子。伐採する。 植栽したクロマツの苗 剪定作業