神奈川県水産技術センター メルマガ468

掲載日:2015年3月20日

神奈川県水産技術センターメールマガジン  468号    2015年3月20日号

----------------------------------------------------------------

□ 研究員コラム

1 動物の名を冠するエビ (栽培推進部 田島 良博)

2 「北条一本抜き」とはいかに!! (企画資源部 臼井 一茂)

3 漁業調査指導船「江の島丸」船員から (江の島丸 西村 竜雄)

----------------------------------------------------------------

1 動物の名を冠するエビ (栽培推進部 田島 良博)

 以前に東京湾で採れるクルマエビの仲間についてご紹介しましたが(Vol.436)、今回はその名前についてのお話です。

 生き物の名前は、体の特徴や生態に由来するものが多く、身近な動物の名前を用いたものも少なくありません。「イヌ」や「ネコ」、「ウシ」、「クマ」、「トラ」、「サル」などが代表的なものでしょうか。これらは、体の色や大きさに因んで用いられ、体色が黒いものにはクマ、不規則な斑模様や縞模様にはトラ、大きなものはウシやクマ、小さなものはイヌといったところですね。トラ模様の場合は、トラフナマコやトラフカラッパ(カニの仲間)のように「トラフ(虎斑)」を用いることもあります。

 また、体の一部を用いて特徴を表す例もあり、ウシノシタ(舌)やウマヅラハギ(顔)、カメノテ(手)などがそうです。バリエーションが豊富なので、どちらかといえば体の一部を用いるほうが多いかと思います。

 さて、クルマエビの仲間にも、このような動物の名前がついたものが結構います。私の知るところではブラックタイガーことウシエビ、クマエビ、サルエビ、トラエビの4種が挙げられます。これらはいずれも東京湾でも採集され、ウシエビを除く3種は私が担当する底びき網の調査(生物相モニタリング調査)でも出現するおなじみのエビです。

 ところで、このようにシンプルに動物の名前がついた種類が、ひとつのグループ(クルマエビ科)に4種も登場する例は珍しいのではないでしょうか。いわゆるエビの仲間には多くの科がありますが、他の科では思い当たりません。

 クルマエビ科は、エビ類の中でも漁業の対象となっている種類が多いグループで、先の4種も漁業や養殖の重要種となっています。古くから私たちに身近な存在であったことと、身近な動物の名前がついていることに直接の関係があるかはわかりませんが、その名前に親しみやすさを感じるのは私だけではないと思います。

神奈川県水産技術センター メルマガ436号「東京湾のクルマエビたち」

http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f450011/p741994.html 

----------------------------------------------------------------

2 「北条一本抜き」とはいかに!! (企画資源部 臼井 一茂)

 当所では水産関係団体や企業などからの委託を受けて、地元で水揚げされる低価格であったり、利用が少ない「低・未利用魚」の有効利用や新たな加工品開発を行っています。

 数年前にさかのぼりますが、小田原市の水産振興を担当する方から相談がありました。内容は、地元に観光客を呼び込める「食べ歩きができる魚の加工品の開発」はできなかろうかとのことでした。つまり、コンビニに並んでいるおにぎりやサンドイッチ、ハンバーガーの様に、水産物を使ったファストフードや、ストリートフードを創造して欲しいとのことでした。

 さてさて、どうしようかと少し時間をいただいてから、直接お会いして事業を受けるかどうかの話になりましたが、実はだいぶ前からそんな依頼に対応できるアイデアを考えていました。

 時は平成8年までさかのぼります。その頃は遠洋まぐろ延縄漁業で水揚げされる低価格魚のクロカジキの有効利用について検討してました。その頃に考えていたものとしては、主食のご飯やパン、お好み焼きみたいな小麦粉などと一緒に食べられる食材。つまり、おにぎりやパンの具として使われる、サケやシーチキン加工品、タラなどの白身フライのような食材化ができないかと。ここ神奈川で水揚げされる食用魚種は約300種もあるのに、おにぎりやサンドイッチにほぼ使われてませんよね。

 また、海の魚で丸ごと食べ歩くものは殆どありませんが、例えば川魚のアユやマス類の串を刺した塩焼きなどは、皆さんも知っている食べ歩けるものです。四国あたりだと、サバやカツオの串焼きなどが有名ですが、食べ歩くには少し大きいですよね。

 そんなこんなで、どうしようかと困った時には、自分は飲食店で考えることがよくあります。ある時、フレンチのシェフが「これが旨いんだ」と、サンマのフィレに里芋のペーストを挟んでソテーした料理を出してくれました。その時にシェフが語った「この料理は魚の中骨だけでなく小骨まで取らないといけないので、とてもめんどう。だけど、とても旨いし素材も高くないバクバクと食べたくなる料理ですよ」という言葉から、サンマは生なら三枚におろし、小骨を骨抜きで取らないといけないが、焼き魚なら腹骨などの小骨ごと中骨が身から外れるので、少し加熱して骨を外すことができたら、骨なし魚状態で、バクバクと食べられる素材になるのではないかと考えました。実際に色々な魚と色々な加熱温度や手法で試したところ、多くの青魚といわれる赤身魚で上手く骨がとれる様になりました。

 更に、生状態で取れないかと、ぶつ切りにした魚をコルクボーラーで中骨を抜きとって、ドーナツのように揚げたら、意外にも残った骨は気になりませんでした。そこで、中骨だけ抜ければいいかもしれないと考えるようになり、アルミ管を中骨に向けて突き通したところ、尾部がちぎれましたが意外にもきれいに抜き取ることができたのです。

 それらのアイデアと少しの経験から、魚種としてカマスでならできるかもしれないと考え、小田原市の依頼を受けることになりました。その後、魚の骨格構造を調べたり、骨抜きの道具を色々と改良したところ、予想どおり相模湾でよく取れるヤマトカマスの骨なし食材が、鮮度低下やにおいや味などの点でも問題が無く製造できました。

 この中骨なしのカマスの利用を検討するため、地元の食生活改善推進団体の六採会の皆様に協力いただき、道具の使いやすさや、カマスの味や素材の組合せ、そして調理法などの特徴を生かした様々な料理を試験してもらいました(写真)。この場をお借りしてお礼申し上げます。

 現在、小田原市では中骨抜きカマスを「北条一本抜き」と、とてもセンスのいいナイスなネーミングでPRし、地元の産業振興となるべく様々な取り組みを行っています。特に串を刺した唐揚げやフライが一押しですが、私はカマスの塩気に衣の甘みが絶妙なアメリカンドック風と、ママの会で作ってもらった梅きゅう挟みフライも気に入ってます。

(参考:http://odawara-sakana.com/info/141105-2-copy.html

 そうそう、少し前に平塚市と平塚市漁協より低利用魚の加工品開発依頼で指導したひとつで、ソウダカツオを用いたふりかけ加工品「うまっソウダふりかけ」が、全国逸品コレクションにて強豪を押しのけて受賞したとのこと。自分の手を離れ、どんどんと進化していき、加工品が育つのは私の楽しみです。

(参考:http://www.shonan-journal.com/archives/13455

中骨抜きカマスの調理試験で作成されたお料理たち

写真 中骨抜きカマスの調理試験で作成されたお料理たち

----------------------------------------------------------------

3 漁業調査指導船「江の島丸」船員から (江の島丸 西村 竜雄)

 めずらしく、江の島丸船員からのメルマガです。

 江の島丸には水産研究員と船員が乗船していますが、私は船員であり航海士をしています。

 実際にどんな仕事をしているかと言うと、レーダーやGPSを使って船舶を操縦するほか、海洋観測や試験操業による資源調査などをしています。そんな活動状況を県民の皆さんに広く知っていただきたく、当センターのホームページにある江の島丸ページを全面更新しました。

 私たちが主に航行しているのは、伊豆諸島、相模湾、東京湾の海域です。三崎港を出て南下し、伊豆大島付近になると、うねりが大きくなってきます。さらに南下し、利島、新島からは速力変化を伴う黒潮の影響を受けるので、当センターが発行している海況図などを有効に活用して、安全運航に努めています。航行中は、クジラやイルカ、カジキ、海ガメ、マンボウなど沢山の海洋生物と遭遇します。水平線に沈む真っ赤な夕陽や大きな虹は心を和ませます。夏場に現れる天の川、無数の星屑の中、流れ星はいくつも飛んでいます。夜光虫が海面をコバルトブルーに輝かせたりもします。そんな自然を体感した時に、船員で良かったなと実感します。とても東京や横浜に近い海とは思えないような光景です。夜、闇の中では水平線と空の境はわかりません。

 荒天時の深夜、船体が大きく動揺する中での試験操業には身の危険を感じることもありますが、自然相手の船員仕事が私は大好きです。神奈川県船に乗っていることを誇りにも思っています。豊かな海を次の世代に引き継げるように、そして本県水産業の振興に貢献できる活動を展開していきたいと思っています。

江の島丸の新ページはこちらからどうぞ。

http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f430687/p872241.html

漁業調査指導船「江の島丸」

「江の島丸」から望む富士山

水平線に沈む真っ赤な夕陽

----------------------------------------------------------------

■水技Cメールマガジン(隔週金曜日発行)
■メルマガの配信の変更、解除、ご意見やお問い合わせはこちらのメルマガお問い合わせフォームからお願いいたします。

発行:神奈川県水産技術センター 企画資源部
住所:〒238-0237 神奈川県三浦市三崎町城ヶ島養老子
電話:046(882)2312

-----------------------------------------------------------------

メルマガTOPへ

神奈川県

このページの所管所属は 水産技術センター です。