神奈川県水産技術センター メルマガ151

掲載日:2014年2月25日

神奈川県水産技術センターメルマガ VOL.151 2006-7-7

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/KN/ 神奈川県水産技術センターメールマガジン  VOL.151 2006-7-7
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□研究員コラム
○“塩分”-海の水のしょっぱさ-【その2】 (資源環境部 山田佳昭)
○水産物のジャストインタイム生産は可能か?【後編】 (栽培技術部 一色竜也)
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○“塩分”-海の水のしょっぱさ-【その2】                    
          (資源環境部 山田佳昭)

 海水のしょっぱさである“塩分”は、蒸発量と降水量に影響され、場所によって異なることを前回お話ししました。塩分の値をみて、「沖合から黒潮系の水が波及しているな。」とか、「河川からの水が拡がっているな。」というようなこともわかります。

 塩分を測定することは、海の状態を知る上で重要なことです。

 今回は塩分の測定方法についてお話しいたしましょう。

 「海水1kgの中に溶けている固形物質の総量なら、水分を蒸発させてしまえばいいんでしょ!」

 いえいえ、温度を上げると蒸発してしまったり、別の物質に変化してしまうものが含まれているので、それではだめです。また、精密に重さを量るというのはたいへん難しいことです。

 「じゃあ、各成分を個別に測定して合計すれば!?」

 分析に要する手間が膨大なものとなり、現実的にはほぼ不可能ですし、仮にできたとしても精度にも問題が残ります。

 「もっと簡単に量る方法はないの!?」

 手軽にそして比較的精度の良いものとして、比重を計る方法があります。海洋観測では、浮きばかり式の「赤沼比重計」を用いました。ガラスの筒に入れた海水にこの比重計を浮かせ、目盛を読み取ります。

 余談ですが、この比重計はたいへん壊れやすいものです。ガラスでできていて、水中にある部分は太いものの、目盛の付いた頸部は僅かな比重の違いでも反映するように細く作られています。扱うのにもこつがあって、底部を接地させたまま頭部をつまんで起こし、それから垂直に引き上げるようにして持ち上げたりします。

 もう二昔以上前のことですが、大学生の実習の補助をしていたことがあります。そこで比重を測らせようとすると、必ず何本かは割れました。もちろん事前に実演を交えてくどいほど説明するのですが、やっぱり割ります。

 比重計の目盛を読んだら、続けて海水の温度を測ります。比重は水温によって変化しますので、これを欠かすことはできません。読み取った比重と水温から標準比重(0℃または15℃のときの値)を求めます。海水の比重は1.0000-1.0310程度ですが、(真の値-1.0000)×1000 の値で表示します。1.0252のときは25.2とするわけです。

 この標準比重から塩分を算出するのですが、この話は後ほどあらためて。(またも続く)


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○水産物のジャストインタイム生産は可能か?【後編】          
          (栽培技術部 一色竜也)

 前回はコンビニエンスストアーを例に機会損失を防ぐための在庫、その在庫を限りなく小さくするためのジャストインタイム生産について考えてみました。トヨタ自動車のカンバン方式はその代表格です。海外ではリーン生産方式とも呼ばれています。なお生産工程に限らずサプライ(供給)チェーン(連鎖)で、資材や製品を必要とするモノを必要とする場所や人に必要とする数量だけ供給する業務連鎖のことをSCM (サプライチェーンマネジメント)と呼びます。

 さて、水産物、特に漁獲による水揚物にSCMは可能でしょうか。すなわち「欲しいときに欲しい魚が欲しいだけ手に入るか」です。ご存知のように漁業による生産は極めて不安定です。漁港に行くと日々色々な魚が水揚げされていますが、昨日あれほど水揚げされた魚が今朝は顔をみることすらできないなんてことが良くあります。回遊魚ですとある程度獲れる時季は決まっていても、「欲しいときに欲しいだけ」なんてかなり難しい注文です。また「欲しいもの」について魚種のみならず、その質、例えば魚体の大きさ等を揃えるなんてまず不可能といわざるを得ません。木幡(1981)は漁期間の50%の漁獲量が高々2-3%の確率で起こる大漁日に漁獲されていることを示し、漁業の成立は大漁日及びこれに準ずる好漁日の漁獲物を重視する営漁戦略が重要としています。大型店で地場鮮魚が流通しにくいの理由はこうした流通の方法として単一品目で単一規格、さらに安定した供給が条件になっているからです。

 一方でSCMとは逆の方向、在庫を確保して機会損失を防ぐやり方もかなりの困難を伴います。魚の鮮度は大変落ちやすく漁獲直後どんどん低下していきます。これを少しでも落とさないために漁獲直後から氷や冷海水で保持しますが、機会損失を調整できるほど時間的なゆとりは確保できません。冷凍による保存という方法もありますが、多くの場合、鮮魚に比べ価格的に不利になってしまいます。さらに冷凍保存によるコストが時間とともに増大してしまいますので、在庫による機会損失の調整はかなりリスクを伴うといえます。

 このように漁獲物は生産量、魚種、品質のばらつきが大きいという特性ゆえに、その流通は生産と消費のかなり不安定なバランスの上に成り立っているといえます。このバランスを調整しているのが卸・仲買業者であり、需要と供給の間の不確定要素を吸収する機能を果たしています。その働きは多数の生産者から色々な魚を買い集め、多数の消費者を前にした市場へ売り出すことです。多数の生産者との取引があれば魚の供給は増え品質のばらつきも少なくなりますし、多数の消費者がいれば数多くのニーズが存在しているので買手を見つけ機会損失を防ぐことができます。

 このように市場は、生産側の不安定要因を多数の様々な買手によって機会損失を減らす働きがあります。しかし、同時に多数の競争にさらされることになります。消費というものは個人の選好から導かれる合理的な最適選択によって行われ、消費者は自分の思う安さに応じて物を買うとされます。つまり消費者はその魚が必要だから手に入れるわけではなく、多くの代替品の中で価格を反映した適量を購入しているに過ぎなく、消費者が商品を市場取引の中で消費する時、代替的選択肢はいくらでも存在してしまうのです。近年、魚が減少しているのに魚価が伸びないことが多々ありますが、消費者にとって魚の代替品が市場にいくらでも存在し、特に安定的に供給されないものや手に入りにくいものは選好され難くなってしまうからです。

 不定期に不安定な量の鮮魚を既存流通にのせるという方法では、供給過剰の現代においてますます不利になっていくと思われます。消費者は安さに応じて消費するので、変動要因の高い鮮魚を流通させるには価格的なリスクを引き受けざるを得ないのです。大きさもばらばら、量も不均一の水揚物全てをある程度の鮮度を保って流通させるようなやり方では、せっかくの鮮度保持もコストがかかって逆に損失を被る恐れもあります。

 逆に、こうした市場の特性を逆手にとって、水揚物をある程度限定しその中で安定供給を図る工夫が必要であるかと思われます。質、量の安定的確保に関しては水揚物の大きさをそろえ、限りなくジャストインタイムに近い生産を試みるのです。例えば、鮮度等を徹底的にこだわった上ランク品、大きさは雑多であるが鮮度を保った中ランク品、大きさ鮮度ともあまりコストを掛けない下ランク品等に分け、上ランク品は最優先で確保し、少しでも安定的に供給を図るのです。地先の魚の価値は獲れたてで新鮮、漁獲した海域や生産者が特定できる安心感等高い存在感がありますので、安定的に供給できれば高価格をうむことが期待できると思われます。一方、低ランク品は量が一定ではありませんが、コストをかけない分、低価格で需要の増大を図り、市場で吸収する余地を産むことができると思われます。しかし利潤に比べコストがかかるようであれば、この部分は漁獲しない決断も必要でしょう。漁獲をしなかった分や、低ランク品でコストをかけなかった分の余力は上位ランク品の付加価値化に用い、トータルとしてのコストの軽減と利潤のアップを図るのです。

 さらに、損してまで漁獲していた魚は海に残るため資源への負荷が軽減され、資源の枯渇を防ぎ、持続ある漁業生産につながると考えられます。

 このように水産物の生産は不確定要素が多分に含まれており、ニーズによって生産を管理する完全なSCMは不可能です。しかし、多く獲れたとき等に行う限定的な供給管理は実行できる余地があります。そしてこの取り組みは食料の供給過剰と資源の減少に立ち向かい、経営的及び資源的な持続性のある漁業生産に有効な手立てと思われます。


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[編集後記]

7月に入り県下各地の海岸が一斉に海開きとなりました。梅雨明けが待ち遠しいですね。

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