神奈川県水産技術センター メルマガ505

掲載日:2017年1月6日

神奈川県水産技術センターメールマガジン  505号    2017年1月6日号

□ 研究員コラム

1 LEDの光で魚の成長を高める  (栽培推進部 滝口直之)

2 全国的に漁獲量が減少するキンメダイ 今後の動向は?(企画資源部 武内啓明)
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1 LEDの光で魚の成長を高める  (栽培推進部 滝口直之)

 神奈川県では水産資源を増やす取組みとして、稚魚を放流し大きく育った魚をとる栽培漁業が進められていますが、人の手によって育てられた稚魚は放流後いきなり自然界の様々な試練にあいます。それまでお腹がすけば餌をもらえ、他の魚に襲われることもない環境が一変し、稚魚は自分で餌を探さなければならず、また敵から身を守らなければなりません。そのため、なるべく大きく元気な稚魚を生産し放流してあげる必要があります。
 稚魚を大きく育てる方法として、飼育水を加温する方法が一般的です。しかし清浄な海水を大量に必要とする種苗生産現場では、加温には多くのエネルギーを必要とします。水産技術センターでは稚魚の飼育試験に1から2トンくらいの水槽をよく使用しますが、1キロワットの電気ヒーターを使っても2℃くらいしか加温できません。数万から数十万尾単位で稚魚を量産するためには、専用のボイラーで大量の石油を燃やす必要があります。
 そこで最近注目されているのが、特定の色の光を照射させて魚の成長をうながす技術です。水産技術センターでマコガレイ稚魚に緑色のLEDの光をあてて飼育したところ、加温しなくても成長を高める効果があることを確認しました。すなわち、1キロワットのヒーターを使わなくても、30ワットのLEDを使えば同等以上の効果が得られます。これは電力使用量を97%削減できることになります。
 水産技術センターではこの技術を量産現場で普及させることを目指し、本年1月からマコガレイの成長促進に有効な光の波長(色)の特定や生産コストの削減の実証試験を、国の研究機関、大学、民間企業などと共同で取り組んでまいります。

写真1:緑色のLED光を照射中の実験水槽
写真1 緑色のLED光を照射中の実験水槽

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2 全国的に漁獲量が減少するキンメダイ 今後の動向は?(企画資源部 武内啓明)

 脂が乗った白身で煮付けはもちろんのこと、新鮮なものは刺身やしゃぶしゃぶにしても美味しいキンメダイ。最近は各地でブランド化が進み、全国的に知名度が上がった魚ですが、近年、その漁獲量が減少していることをご存知でしょうか?
 国内の主要産地である千葉県、東京都、神奈川県、静岡県(以下、1都3県)の漁獲量を見ると、1980年代は概ね8千トン前後で推移していましたが、90年代の初めから減少し始め、ここ数年はピーク時の半分程度しか獲れていないことが分かります(図1)。なぜ、キンメダイの漁獲量はこれほど減少してしまったのでしょうか?
 ちょっと専門的な話しになりますが、これまでの研究からキンメダイの資源量は数年から十数年に1度発生する卓越年級群によって支えられていることが分かっています。資源量が豊富だった時代は、数年に1度の頻度で卓越年級群が発生していたようですが、ここ10年ほどは確認されていません。新しく子供が加わらない状況で漁獲を続けるため、当然のことながら資源は減少していくわけです。
 先行きが危ぶまれるキンメダイ資源ですが、ごく最近になって明るい話題も上がっています。昨年あたりから小型のキンメダイがまとまって獲れはじめているのです(図2)。これまでの調査から2013年生まれが卓越年級群である可能性が高いことが分かっており、この子供たちが成長することで、今後、漁獲量が回復する可能性もあります。
 しかし、安心してはいけません。今年10月に公表された国の資源評価によると、関東近海のキンメダイは生物学的に許容される漁獲量よりもはるかに多く漁獲されていることが明らかになりました。せっかく生まれた子供たちが親になる前にほとんど獲り尽くされてしまった、なんてことにならないように、これまで以上に資源の適正な利用に努めなければなりません。水産技術センターでは、貴重なキンメダイ資源を将来にわたって安定的に利用できるように、効果的な管理手法や卓越年級群の発生メカニズム等について、今後も国や他都県と連携しながら研究を進めてまいります!!

※   卓越年級群(たくえつねんきゅうぐん):何らかの理由(例えば、子供の餌となるプランクトンが豊富であったり、成育に適した水温であった等)で、例年よりも多くの子供が生き残る年があり、そのような年級群のことを“卓越年級群”と呼びます。

図1:関東近海におけるキンメダイの漁獲量の推移
図1 関東近海におけるキンメダイの漁獲量の推移

図2:県漁業調査指導船「江の島丸」が実施している新規加入量調査(卓越年級群の発生状況を把握するための調査)で採捕された1歳魚。昨年あたりからこのような小型魚が多く見られるようになってきています。

図2 県漁業調査指導船「江の島丸」が実施している新規加入量調査(卓越年級群の発生状況を把握するための調査)で採捕された1歳魚。昨年あたりからこのような小型魚が多く見られるようになってきています。

参考資料

平成28年度資源評価報告書(ダイジェスト版)キンメダイ太平洋系群

神奈川県周辺海域における重要水産資源の動向

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 【お知らせ】
 平成29年1月11日に、あーすぷらざ(神奈川県立地球市民かながわプラザ:JR根岸線本郷台駅下車徒歩3分)のプラザホールにて、平成28年度神奈川県漁業者交流大会を開催いたします。皆様のお越しをお待ちしております。

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 【重要なお知らせ】
 日ごろよりご愛読いただきましてありがとうございます。
 これまでメールマガジンにより情報をお届けしてきましたが、県庁の情報システムの変更にともない、平成29年3月からメールマガジンの配信ができなくなる予定です。
 なお、平成29年3月以降はこちらのページ(http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f450011/)で「水産技術センターコラム」として情報発信は引き続き行ってまいりますので、これからもご愛読よろしくお願いします。

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発行:神奈川県水産技術センター 企画資源部
住所:〒238-0237 神奈川県三浦市三崎町城ヶ島養老子
電話:046(882)2312

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