津久井在来大豆に関する取り組み

掲載日:2013年3月28日

背景

 「津久井在来」は神奈川県津久井地域で作られてきた在来大豆で煮豆や味噌加工等、古くから郷土食の素材として地域に根ざして栽培されてきたものです。昭和50年代には県の優良品種に選定されましたが、だんだん栽培する人が減り、「幻の大豆」といわれるようになってきました。近年、地産地消の取り組みや食文化への関心から再び注目されるようになり、少しずつですが栽培が広がってきました。しかし、県内の様々な地域に栽培が広がってくるとともに、生産されている地域によって形質等にばらつきがあることが指摘されていました。そこで、当センターでは平成18年に県下11地域から「津久井在来」を収集し特性の比較を行いました。

調査の様子
津久井在来子実

図1 調査の様子

図2 津久井在来子実

 その結果、各地域の「津久井在来」は、生育特性や子実形質にはほとんど差は見られませんでしたが、系統によって成熟期や草型などに若干ばらつきあることがわかりました。DNAマーカー*1を用いて調査した結果、ばらつきが認められる系統には、遺伝的背景が異なる個体が混入していることがわかりました。

標準的な津久井在来
遺伝的背景が異なる津久井在来
遺伝的背景が異なる津久井在来

図3 標準的な津久井在来

遺伝的背景が異なる個体


 

DNAマーカーによる判別

 そこで、形質のばらつきや他品種の混入を防ぎ、差別化を図るために、ゲノム*2中に散在する単純反復配列を利用したDNAマーカーを用いて、「津久井在来」と主要な大豆品種とが識別できる技術を開発しました。


成果情報名:SSRマーカー*3による「津久井在来」の判別
 


DNAマーカーによる識別
図4 DNAマーカーによる識別




 

「津久井在来」の標準的な栽培特性

 その後も各地域で自家採種を繰り返したことによって地域による子実形質などの違いが大きくなってきていました。平成22年に、津久井在来大豆振興連絡会からの依頼で、改めて県内3地域で生産されている「津久井在来」の栽培特性について比較を行いました。

成果情報名:大豆「津久井在来」標準的な栽培特性
 


 

表1 県内で栽培されている津久井在来の違い

品種・系統名

開花期
(月.日)

熟期
(月.日)

主茎長
(cm)

百粒重
(g)

葉の形

花色

子実

種皮色

臍色

平塚

8.11

11.2

53.3

31.3

卵形
(鋭先卵形)

偏球

淡褐
(白・褐)

相模原

8.12

11.2

51.3

32.8

卵形

偏球


(淡褐)

秦野

8.14

11.10

71.9

31.3

鋭先卵形

偏球

淡褐
(褐)

参)エンレイ

8.8

11.5

43.0

32.8

鋭先卵形

偏球

津久井在来
(昭和53~56年)

8.18

11.1

57.5

31.6

卵形

偏球

(淡褐)

 

DNAマーカーによる識別

DNAマーカーによる識別

図5 DNAマーカーによる解析(上段:相模原、下段:平塚)


 その結果、栽培地域によって開花期、成熟期、主茎長、子実形質等に違いが生じていることがわかりました。また、昭和50年代に報告されている「津久井在来」の特性は、葉の形は卵型、花色は紫、子実の臍色は褐~淡褐であり、相模原系統の特性と一致し、DNAマーカーによる解析からは、相模原系統は標準的な津久井在来であると判断され、遺伝的に安定していることが確認されました。在来作物は、栽培地域で自家採種を繰り返すことによってその地域にあった性質を持った品種・系統になっています。採種方法や採種場所によって表現型に偏りがでる可能性があり、安定した品質を保つには他品種との交雑や混入に注意しましょう。

採種ほ場

図6 採種場


*1 DNAマーカー
生物の遺伝的性質の目印(マーカー)となるDNA配列のこと。DNAの配列は品種や系統,個体間で違いがあるためこれを目印にして区別することができる。
*2 ゲノム
ゲノム(genome)という言葉は、遺伝子(gene)と染色体(chromosome)あるいは総体(-ome) の合成語。生物を形作るために必要な遺伝情報全体、または染色体の一組を指す。
*3 SSRマーカー
ゲノム中に散在する単純反復配列(SSR)を利用したDNAマーカーのこと。

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神奈川県

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