資料の修復と保存

掲載日:2011年3月15日

当館には中世から現代までの約60数万点の資料が保存されています。大半の資料は紙に書かれたもので、この世に1点しかないものです。紙には墨・インク・印刷インクなどを使って書かれ、紙の質も和紙・洋紙など時代によって様々です。こうした紙資料は永遠に保存できるものではありませんが、当館では紙にとって良好な環境といわれる、温度22度~25度、湿度55パーセント前後に保たれた書庫に保存しています。しかし、当館に収蔵される以前は蔵や倉庫に保存され、保存状態として良好な環境にあったと思われる資料は多くありませんでした。紙を食べる紙魚(しみ)という虫やネズミにかじられている文書もみられます。また、湿度が高いため板のようになってしまった文書もあります。日本の敗戦前後に使われた酸性の強い紙はもう折れてぼろぼろと崩れてしまいます。

こうした多様な人間の歴史を記録した紙を長く後世につたえるためには、痛んだ資料を補修して、保存しなければなりません。当館では資料の状態に応じて修復・保存を実施しています。

近世の古文書は虫損と高い湿度によって板のようになっています。これを一枚づつ、丁寧に開いて、虫損の部分を和紙で埋めていきます。作業は、従来からの補修方法である「裏うち」のほか、リーフキャスティング(すきばめ機)を利用する方法をとっています。

リーフキャスティングは、日本ではまだあまり行われていない資料の修復作業であるため、全国の関係機関の方々からも注目を集めています。

この作業は次のように行います。

リーフキャスティング

  1. 修復する古文書に使用されている和紙の原材料を確認し、同質和紙繊維の水溶液を作ります。
  2. リーフキャスティング・マシンに破損した資料を乗せ、水に漬けます。
  3. その上から適量の和紙繊維水溶液を流し、紙漉きの要領で作業を行い、虫損・破損した部分だけに水に溶かれた和紙繊維を付着させます。
  4. リーフキャスティングを終えた資料の湿り気を取るために、ポリプロピレン紙とウール毛布に包みプレス機にかけます。

このあと一昼夜をかけて自然乾燥させれば、補修作業は終了となります。

リーフキャスティングは、原資料の後ろに補修用紙を糊で貼り付ける「裏うち」とちがって、虫損・破損で欠落した部分のみ和紙繊維を埋め込んでいくので、ほとんど原紙の厚みと変わらず、また資料の裏面に書かれている文字を残すこともできます。そのため、原文書の持ち味を損なうことはないと考えられています。また、欠損部を一つずつ埋めることに比べ数分の一の作業時間で全てを埋めることができます。そして糊を使用していないことにより、補修した文書を今一度水に漬ければ、埋め込んだ和紙繊維も容易に脱落しますので、補修前の状態に復帰させることも難しいことではありません。

敗戦前後の公文書の補修には、適宜脱酸処理が行われています。この当時の公文書は酸性の度合いが強いため、大変もろく崩れやすくなっていますので、中性紙の簡単な畳紙(帙箱)を作成し、これに資料を入れて保存しています。近年では大量脱酸処理が技術的にも可能となってきましたから、今後、当館でもさらに脱酸処理を進める計画でいます。

神奈川県

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