審議結果(懇話会H21.10.23)

掲載日:2011年3月1日
かながわ国際政策推進懇話会のイメージ         

次の審議会等を下記のとおり開催した。



審議結果

審議会等名称かながわ国際政策推進懇話会(第9期・第1回)
開催日時2009(平成21)年10月23日(金曜日)
14:30から16:30
開催場所神奈川県庁 新庁舎5階 第5C会議室
出席者
※会長◎
  副会長○
◎宮島 喬、古石 篤子、中 和子、○高木 紀世子、杉山 喜男、高橋 政行、関本 耕司、諏訪部 俊明、小森 智子(9名)
次回開催予定日未定
問い合わせ先所属名、担当者名:国際課企画班 櫻井
電話番号:045-210-3748
下欄に掲載するもの議事録要約 要約した理由会議の決定による。
審議経過【議題】
1 会長・副会長の選任
2 各委員による簡単な自己紹介
3 日本語学習等支援事業の概要について
4 委員による問題提起及び意見交換

【会議資料】
資料1:総合的な日本語学習等支援センターを中核とした外国籍児童・生徒に対する日本語学習等支援への取組みについて
資料2:外国籍児童・生徒に対する日本語学習等支援会議中間まとめ
資料3:多文化共生の地域社会づくりについて

【発言記録】

かながわ国際政策推進懇話会(第9期・第1回)の発言記録は、以下の通り。



・ 委員の互選により、第9期の会長には宮島委員が、副会長には高木委員がそれぞれ選出された。


議題2 各委員による簡単な自己紹介

・ 附属機関等の設置及び会議公開等運営に関する要綱の第6条(1)の規定により、非公開とする。


議題3 日本語学習等支援事業の概要について

(事務局)
・ 資料1、2、3により説明
(宮島会長)
・ 母国語・母文化教育の学習支援については、人的・財政的限界と書いてあるが、これはどういう意味か。客観的事実だけを述べているのか。
(事務局)
・ 委員の方もご承知のとおり、現在、母語・母国語の学習支援は、民族団体や民族学校、ボランティア団体等に依存しているというのが現状だ。その中で、それぞれファクターが人的にも財政的にも厳しい、という客観的な事実ということで書いている。今後どうしていかなければならないかを検討したい。
(宮島会長)
・ 本日は古石委員からも母語について話がある。母語関係以外で何か意見はあるか。
(事務局)
・ あくまでもこちらから一方的に出した案であるため、何か不明な点があれば、内容について質問いただきたい。
(古石委員)
・ コーディネートやコーディネーター等の用語があちらこちらにあるが、以前、多文化ソーシャルワーカーという言葉が出ていた。それとは関係があるのか。また、教育コーディネーターという言葉もあるが、それらがどのように違うのか説明していただきたい。
(事務局)
・ 県では現在、コミュニティカレッジで、多文化ソーシャルワーカーの養成事業を行っている。ソーシャルワーカーということで、幅広い分野への対応を想定しているが、主に福祉的な分野への対応を想定している。また、総合的な日本語学習等支援事業としているが、重点を置いているのは児童・生徒に対する日本語学習等の支援である。もちろん、日本語を単純に教えるだけでなく、どのように学習支援をしていくのかと、教育的な側面を強く考えている。現在日本語学習を支援しているNPO・NGOとか、市町村の教育委員会、県の教育委員会、市町村の国際担当課等と連携しながら、情報を共有化して、一元的にわかるような拠点作りをしたい。そういった事をするのがコーディネーターで、多文化ソーシャルワーカーとは対応する分野が違う。
(古石委員)
・ 具体的に何人ぐらいを想定しているのか。
(事務局)
・ 今のところは、常勤のコーディネーターを2名と考えている。
(古石委員)
・ 県全体での人数か。
(事務局)
・ 2名の他に母語の出来る相談サポーターを5名程度考えている。5名の方は非常勤という形で、5言語で対応する。
(古石委員)
・ 何語を予定しているのか。
(事務局)
・ 英語、中国語、タガログ語、スペイン語、ポルトガル語である。
(古石委員)
・ ベトナム語は入っているのか。
(事務局)
・ インドシナ3言語に関しては、インドシナ難民の方がいるので、一定程度の需要はあると思うが、日本語が出来て、なおかつ、その言語ができる人が、コミュニティの中にしかいない状況である。通訳の人材不足である。
(高木副会長)
・ コーディネーターとか、コーディネートとか資料の中に何度か出てくるが、すべて同じ人なのか。それともなんとなく使っているのか。よくわからない。
(事務局)
・ 新しく出来る日本語学習支援の拠点におかれるコーディネーターが、コーディネートする、という意味である。また、内容としては同じである。
(宮島会長)
・ ここにでてくるコーディネートとかコーディネーターとは、すべて先ほど言った常勤の2名とサポーター5名の事を指すのか。
(事務局)
・ そうである。
(小森委員)
・ 県民として意見を言うと、外国籍の従業員を支援するにあたって、まずはじめに、どこにアクセスすればいいのかわからない。市役所や県庁が支援しているとは思いもしなかった。まずアプローチするのは大学等の先生である。結局、人と人とのネットワークに頼ることになる。また、県や、市町村のホームページを見ると、リンクが切れていたり、情報が古かったり、電話をしても存在しなかったりと、何処まで頼ったらいいのかわからない。やはり、自分や会社が従業員を守らないと乗り切れない部分があるような気がする。正直、マンパワーに頼りすぎではないか。もう少しITやネットワーク等を活用して、活路を見いだせないか。失礼ながら、もう少し情報発信の工夫をしていただきたい。
(事務局)
・ 頼れる人に相談が来てしまう、というのはわかる。例えば、小森委員のように会社の関係や、学校の先生や、ボランティアの方に過剰な期待をする方がいて、リソースが無い中で一生懸命やっているという現状がある。そういった個々でがんばっている方をネットワーク化して、この拠点に情報を集め、困っている人に情報を提供する場にしたいと考えている。ITを使うというのは、まさにそのとおりである。日本語の学習教材等、いろいろな市町村で作られているが、そういったリソースを蓄積し、県西部からはアクセスが悪いので、インターネットを利用してアクセスできないかと、少しずつ教材をデータベース化することを強化していきたいと考えている。あとは、いかに知ってもらうかが重要であり、各市町村であるとか、県内で活動している団体であるとか、そういった方々にこの拠点をいかにPRしていくかが、課題である。
(宮島会長)
・ 学習言語については多少意識しないといけない。教育委員会が学習言語というものをどのように指導していくのかを考える責任がある。学習言語に関する問題は、この中でどの程度重視できるものなのか。
(事務局)
・ センター内で学習言語についてのノウハウを蓄積していくというところまではいかないが、平成23年度中に国際言語文化アカデミアが同じ施設に入ってくる。この中で外国籍県民支援セクションができる。日本語に関する講座や、先生に対する研修や、外国籍県民の方に対する講義等を予定している。その中で蓄積を得ながら、JSLプログラムの実用が可能な教材を、開発していくというプランがある。
(宮島会長)
・ 大和市の教育委員会だと思うが、教科書の中に出てくる日本語を8カ国語くらいに翻訳している。すごいデータだと思う。著作権の問題もあると思うが、出来たら共有化するといい。
(事務局)
・ 大和市は支援会議に入っている。その中で、共有化を検討している。また、大和市の方から、少なくとも県内では広く使ってもらいたい、という意見をいただいている。
(宮島会長)
・ 例えば、算数の分数とか各国語で何というかとか、そういうところからはじまると思う。これは重要である。
(事務局)
・ 今、大和市の方で、共有化できるように著作権の整備を進めている。
(小森委員)
・ 相当苦労して出来たアウトプットだと思う。他の人が同じ事を繰り返したら、そのことが生きない。出来たものをいかに生かして、さらに上を目指すかを考えていかないと、結局、同じ所にどどまってしまう。もったいないので、どんどん使っていった方がいい。
(古石委員)
・ 教育コーディネーターについて質問だが、人数は2名と言っていたが、どういったプロフィールの方なのか。また、もう決まっているのか。どういうタイプの方を想定しているのか。
(事務局)
・ 現在、県の施設である地球市民かながわプラザは指定管理ということで、かながわ国際交流財団が管理している。5年間の契約で委託をしており、平成23年度から新しい指定管理の方法で公募をする。そこで、公募に参加した団体に、プラザの運営案を出してもらい、コンペティションを行う。その中で我々としては今後のプラザの機能を考えていきたい。
(小森委員)
・ 県は間接的にしか関われないのか
(事務局)
・ そうである。ただ、公募をする際に、どういった機能やアウトプットを期待しているか、ということを書き込んでいく。
(中委員)
・ 管理者が変わってしまうことでKIFが今まで長年の間に蓄えた知識、ノウハウ、人的資源が生かされなくなってしまうし、5年という期間では中長期的に時間が掛かる施策に取り組むことができないのではないか。誰にもわかりやすいことは一つの条件ではあるが、多文化共生を実現するためには非常に手間隙掛かる課題がある。しかし5年以内にその成果を求められることで、目に見える成果だけを追い求めてしまう危険性を感じている。
(杉山委員)
・ 私がかながわ国際交流財団へ着任したのは6月からなので、まだ4ヶ月間ぐらいだが、確かに資料に関しては、外国籍の小中学生が突然来ても、科目的にも、学務的にも、手続きの関係でもだいたい揃っている。あと、全国や県内の各市町村の情報については、収集して1000点以上ある。それから、いかに活用してもらうかについては、教育相談関係機関の連絡会を2006年からやっている。昨年度までは教育委員会はなかなか出席してくれなかった。今年度に入って、10月に県の西部地域ということで開催したが、県教育委員会子ども教育支援課、総合教育センターの相談員、Me-Net(多文化共生教育ネットワークかながわ)、それに加えて小田原市、相模原市、秦野市、厚木市、伊勢原市、海老名市、寒川町の各教育委員会が集まった。これだけの教育委員会が集まったのは、はじめてだそうだ。その連絡会の中で、私どもの方から出来る限り資料を出したら、「今度連絡します」ということで、最近は教育委員会から相談が結構きている。これが今の実態である。原因は、行政にいた立場から考えると、この問題は小、中学校は市町村の教育委員会が所管し、県立高校等は県教委が所管している縦割りなので、どこが主管でやっているかについての核になる部分がない。そういった意味で、国際課が計画しているこの施策を進めていけば、非常に力強い原動力になると思う。この教育相談関係の連絡会を、西部地域と東部地域に分けて2回行っているが、これからは必ず1年に1回は県内の全教育委員会の相談窓口の人に出ていただくようにしたい。
(宮島会長)
・ 県立高校はどこの所管になるのか。
(事務局)
・ 県の教育局である。
(宮島会長)
・ それを含めて縦割りではなく、国際課、又はかながわ国際交流財団の方でやっていていただきたい。
(諏訪部委員)
・ 愛川町については、小学校・中学校・高校と連携を取っていくのに、県の支援に感謝している。その中で、小・中・高の日本語指導者の研修会(担当者会議)が、11月20日に県立愛川高校で予定されている。愛川高校は地元にある唯一の高校である。神奈川県では高校の再編関係も進んでいる。そういう中で一つ特色を出していくのも大事なことだと思う。これからも小学校・中学校・高校と連携しながらやっていきたい。今後もご支援をお願いしたい。
(関本委員)
・ 行政の縦割りの問題を補完するような形で、ボランティアの人に日本語を指導してもらっている。ただ、実際にボランティア登録をしている方に、いざお願いしても、人材確保が困難なことがある。そういった面を含めての支援というのが、見えてくるといいなと感じる。今、平塚市の日本語学校は5教室であるが、そのうちスペイン語とポルトガル語での対応を隔週で行っている。ただ、なかなかニーズに応えられないというのが大きな課題である。
(宮島会長)
・ 今言っていた教室のスペイン語とポルトガル語というのは、それを使って実際に日本語を指導する、ということか。母語指導ではないか。
(関本委員)
・ 母語指導ではない。
(古石委員)
・ 外語短期大学はどうなるのか。そこにいた先生は新組織の方へ異動するのか。
(事務局)
・ 退職する人以外、働きたいと言う方は、全員、新組織に異動する。
(古石委員)
・ どういう専門の先生がいるのか。
(事務局)
・ 英語の教師とか、他の言語の関係、イギリスやアメリカの文化的背景だとか、文学等いろいろな専門の方がいる。
(古石委員)
・ その方たちは新組織でどういったことをするのか。
(事務局)
・ 外国籍県民支援の場においては、日本語に関する講座の実施、教員向けの研修、ボランティア向けの研修等があり、外国籍県民向けに直接支援するものと、教える先生を指導するものがある。後者は教員研修事業ということで実施する。
(古石委員)
・ 外国語に係る教員研修事業か。
(事務局)
・ 大きくは4つの柱である。外国籍県民支援、外国語に係る教員研修事業、生涯学習支援事業、研究活動事業である。
(古石委員)
・ それでは、国際言語文化アカデミアをリードする先生は、現在外語短大にいる先生がなるということか。そうなると日本語の専門の先生が何人いて、そのほかにバイリンガル教育専門の先生が何人いるのか知りたい。全体で何人先生がいるのか。これは重要なファクターだと思う。
(杉山委員)
・ 国語の専門家と中学校の元教師が中心となっている。
(高木副会長)
・ 関連する質問だが、外語短期大学で教えている先生の持っているノウハウ及び経験と、今度出来る県立国際言語文化アカデミアの目的としているところの必要な資質は同じなのか。違うような気もするが、新しい人も雇うのか。
(事務局)
・ 新しい人を雇うかは未定だが、外国籍県民支援において、日本語という言語面に係る指導をアカデミアで日本語の指導に関する専門家が行っていく。
(古石委員)
・ 英語の教師がいるとも言っていたが。
(事務局)
・ 日本語の専門家が2人、その他に、例えば英語の先生が何人、スペイン語の先生が何人といる。
(古石委員)
・ 総勢何人ぐらいいるのか。
(高木副会長)
・ 今までの外語短期大学では、英語の先生は英語を教えて、日本語の先生は日本語を教えていたと思う。今度のアカデミアでは日本語を教える先生への指導、いわゆる日本語教員養成指導となるのか。
(事務局)
・ 教員を養成する、というよりは、学校で国際教室、外国籍児童の支援にあたっている先生に対する講座や、ボランティアをしている人への講座となる。
(高木副会長)
・ つまり直接教える訳ではないのか。
(事務局)
・ 直接教えることも想定している。
(宮島会長)
・ それでは、教員の人数の件は後で調べてもらうということで、次に行きたいと思う。
(高木副会長)
・ 最後に一つ。日本語を直接教えることと、日本語を指導する先生に教えることとは、ノウハウが全然違うため、その点についは目的を明確にしておかないと違う方向に行ってしまうと危惧している。


議題4 委員による問題提起及び意見交換

(宮島会長)
・ それでは次に、あらかじめお願いていた古石委員による母語教育についての問題提起及び意見交換を行う。20分ぐらいでお話しいただき、その後15分ぐらいで意見交換をしたいと思う。
(古石委員)
・ ことばの教育に携わり、ことばの教育について考えを巡らせてきた者として「グローバル化時代のことばの教育、神奈川県が先導的であるために」というタイトルで話をさせていただきたいと思う。
・ 3つのことを提言したいと思う。まず第1は「母語教育の推進」、第2は「多言語・多文化理解教育の推進」、そして第3は「神奈川県『外国人児童生徒にかかわる教育指針』の制定」である。第1の「母語教育の推進」が話の中心となるが、それを実現するためにも第2、そして第3のポイントも重要になってくる。
・ では、「母語教育の推進」について話したいと思う。児童生徒へのことばの教育には様々な種類があり、その全体像をきちんと把握し、行政としてはどの部分を特に補強していく必要があるのかということを見極めなければならないと思う。このスライドでL1というのは「第一言語」、L2というのは「第二言語」のことを指す。ふつう「母語教育」と呼ばれるのは、「言語的・文化的にマイノリティ」の子ども達への第一言語教育のことである。この子ども達へはこの他に「第二言語としての日本語教育(JSL)」が必須だが、その重要性と一般的な学習支援の緊急性については昨年1月に中委員の方から詳しい報告があったので、重複を避けるために本日は扱わないが、これも最重要課題のひとつである。それから、「言語的・文化的にマジョリティ」の子ども達へはL1としての「国語」教育、そして外国語教育が挙げられる。昨年9月に金委員から「英語以外の外国語学習の推進」という立場からの報告があったが、今日の私の提言の第2はこのことと関連している。本日私が扱うのはスライド上では主に「言語的・文化的にマイノリティ」の子ども達への「母語教育(L1)」と、「言語的・文化的にマジョリティ」の子ども達への「外国語教育(L2)」の領域となる。
・ まず、母語教育を行っている自治体の例について話をしたいと思う。母語教育を自治体が積極的に推進しているところは、それほど多くはないが、兵庫県や大阪府等挙げることができる。兵庫県では、「人権教育基本方針」「外国人児童生徒にかかわる教育方針」を踏まえ、外国人児童生徒の自己実現を支援するとともに、すべての児童生徒に「豊かに共生する心」を育む、子ども多文化共生教育を推進し、平成15年(2003年)に「子ども多文化共生センター」を設置した。そして、平成18年度(2006年度)より3年間「新渡日の外国人児童生徒にかかわる母語教育支援事業」を実施している。その詳細については、引用文献の2つ目に挙げてある。インターネットでダウンロードできる。大阪府でも、府の教育センターが中心となり積極的に母語教育が行われていることが知られている。また最近、愛知県でも母語教育に関心をもち、愛知県国際交流協会が本年度より「母語教育支援講座」を開始した。
・ 最初に挙げた兵庫県や大阪府だが、この2つの地方自治体の特徴は「人権教育」の長い取り組みの伝統があることだ。また、大阪市は1970年に、「外国人教育基本方針」を全国に先駆けて策定したことでも知られている。引用にも挙げた「山脇(2006)」では、次のようにも述べられている。「都道府県レベルでは、兵庫、奈良、滋賀、広島、神奈川、三重、福岡と広がっています。大阪府では36市町村が策定済みで、全国で最も浸透しています。」
・ 名誉なことに「神奈川県」もその中に入っている。より詳しく見てみると、川崎市が1986年に「川崎市外国人教育基本方針-多文化共生の社会をめざして」を制定し、1998年にそれが改定されている。また、県レベルでは、これは国際課に確認したところ、1990年に「在日外国人(主として韓国・朝鮮人)にかかわる教育の基本方針」が制定され、その後に出された「かながわ人権施策推進指針」を踏まえて「人権教育」として行われているとのことである。しかし、いずれも母語教育の必要性については明示的に述べられてはいない。
・ さて、母語教育の意義であるが、真嶋(2009)によれば次のようなことが挙げられている。1.母語をやることで認知力がつく。しっかり考えられる。しっかりわかる。2.日本語習得にもプラスになる。3.親とのコミュニケーションがちゃんとできる。4.自尊感情、自己肯定感、アイデンティティの確立に役立つ。5.日本人児童生徒へもプラスになる。(異文化・他言語理解、共生の姿勢、ことばを大切にする)。
・ 次に母語教育を言語権の観点から見てみる。兵庫県や大阪府での母語教育がそれぞれ「人権教育課」と「人権教育研究室」において実施されていることは的を射ている。というのも、言語権は英語で「linguistic rights」あるいは 「linguistic human rights」ともいうが、これは基本的人権を言語の角度から見たものといえるからである。Skutnabb-Kangas,T.&R.Phillipson(1995)はこの言語権を「必要な言語権」と「より豊かになるための言語権」の2つに分けて考えている。そして、母語の習得と使用、及び居住国の公用語の習得の権利は、必要な言語権、つまり最も基本的な言語権として認識されているところである。ここで再びスライド3を見ると、マイノリティ児童生徒にとって、この○をつけた2つの言語(母語と日本語)の習得は最も重要なものであることがわかる。基本的人権に関わることだからである。
・ 母語教育で知られている国には北欧のスウェーデンとカナダの例があるが、いずれも「維持型バイリンガル教育」の良い例として挙げられる。「維持型バイリンガル教育」は2つの言語を最終的に生かす教育で、最終的にマジョリティ言語・文化への同化を目指す「移行型バイリンガル教育」とは異なるものである。私はフランスをフィールドとしているが、フランスには母語・母文化教育というのはあるが、これは移民の送り出し国が持ち出しで行う課外教育で、あまりうまく行っているとは言えないので、「他山の石」として一応参考までに挙げた。
・ さて次に、提言の2番目に移りたいと思う。「多言語・多文化理解教育の推進」である。昨年9月の金委員の報告でも、国際理解教育として英語以外の外国語学習の重要性が述べられていたが、私も全く同じ考えを持つものである。初等教育レベルと中等教育レベルに分けて話したいと思う。まず初等教育レベルについてであるが、2011年から実施される新学習指導要領が昨年3月に公示された。そこでは「外国語活動」というものが新たに導入されたが、不思議なことに「目標」として、「外国語を通じて、言語や文化について体験的に理解を深め、(中略)コミュニケーション能力の素地を養う」とか「日本と外国との生活、習慣、行事などの違いを知り、多様なものの見方や考え方があることに気づくこと」、「異なる文化をもつ人々との交流等を体験し、文化等に対する理解を深めること」と書かれているにもかかわらず、「原則として英語」という文言が挿入されている。そこで、神奈川県ではこの新学習指導要領の「矛盾」を乗り越える形の、独創的な「外国語活動」を「かながわモデル」として提案してはどうかと思う。藤沢市では「国際理解協力員」制度というのを行っており、英語以外の言語を話す協力員という方を4名か5名小学校に送っているが、残念ながら不十分な形でしか行われていない。これを一歩進めた形で行う。あるいは、スイスで行われているEOLE(学校での多言語に開かれた教育)やフランスを中心としたヨーロッパで試みられているEvlang(ことばへの気づき教育)タイプの多言語授業を神奈川県で積極的に推進していってはどうか。それらを全国に先駆けて行ったらどうか。中等教育レベルにおいては、特に高等学校において第二外国語の履修を促進する施策が求められる。この多言語・多文化教育の意義は強調してもしすぎることはない。重要なことは主に三つある。第一に、「脱自己中心化」である。日本語の中だけにいる、あるいは外国語なら英語の中だけというような、二重の単一言語状態から脱して、複数言語で成り立つ世界を発見して、諸言語の比較やメタ分析によって、ある種の脱自己中心化を図り、さまざまな言語への好奇心を抱かせ他者に心を開き、関心を持つようにする、というのが最も大きな事である。二つ目として、メタ言語的能力を伸ばすことで、聞く能力を伸ばし、統辞(シンタックス)の面で新しい言語に触れたときの操作能力も伸ばすことが出来る。三つ目として母語、自分の言語を見つめなおす契機となる、ということが言える。
・ 最後に神奈川県「外国人児童生徒に関わる教育指針」の制定を提案したいと思う。1990年に制定された現在の「在日外国人(主として韓国・朝鮮人)にかかわる教育の基本方針」を一歩進めて、「出身国に関わらず、すべての言語的・文化的マイノリティの子ども達が、その持って生まれた能力を十分に開花させることができるようにするための教育を保障する」ことを指針として明示的に定めることができたら、一歩進んだ、つまり先導的で実のある多文化共生政策が実現できるのではないか。法的基盤としては次のようなものを挙げることができる。これは「川崎市外国人教育基本方針」に挙げられている。日本国憲法、教育基本法の他に、日本が批准している様々な国際条約があり、そこでは言語に関わらず平等に子どもたちは教育を受ける権利があり、それは人権であると、述べられている。そういったものをベースにして、こういった指針を神奈川県が先導的に、先進的に作っていけばいいのではないかと思う。以上である。
(宮島会長)
・ ありがとうございました。なお、あとユネスコ憲章があると思う。何か意見があれば発言されたい。
(高橋委員)
・ インドシナからの定住難民の方々のことで質問したいと思う。すでに難民として受け入れたのは30年近く前だが、その方々は日本に来てからの日本語の習得に相当困難があったと聞く。そんな中で、日本で子供が生まれたが、難民の方々は内戦の為に十分に母国で教育を受けることができなかった為か、カンボジアであればクメール語が母語であるが、それも家庭内で上手く教育できないと聞く。一方で子供たちは日本で学校に行くので、日本語を一応は覚えてゆく。ただし家庭内での言語教育がほとんど行われない状況である。こうして育った子供たちは、普通には外で日本語を話しているから日本語が母語のように見えるが、家庭内での言語教育がない為に学校の成績も中学校以降伸び悩むと聞く。その結果、自分には能力がないのではないかと悩んでいるケースが多いらしい。一方で、呼び寄せでインドシナから中学生ぐらいになって日本にやってきた場合は、始めは日本語がわからなくて苦労するが日本語を習得した後の伸びは著しいらしい。生まれながら日本にいる元難民の子供たちはアイデンティティを考えるとき、母語をインドシナの言葉として考え強化すべきか、日本語の教育を徹底させるべきか。どのように整理して教育をするべきなのか。
(古石委員)
・ それはものすごく重要なポイントだと思う。例えば大阪府立門真なみはや高校等でも、小さいときから日本に来て、中国語は親と家で話す程度という子どもがいる。そういった子どもで、中国語はやらず、日本語でいいという子どもがいる。ただ、学業が伸びきらない部分がある。日本語を母語としてずっと日本にいる子どもに比べて、家での言語は日本語ではないので、伸び悩むというのがある。そういった子どもに無理に母語の勉強をやらせる必要はないが、学ぶ環境があると自分からやるようになったりする。それで、きちんと中国語の読み書きリテラシーを学習すると、勉強が伸びるようになる。本人が最初は嫌と言っていても、周りがそういう環境だと自分からやりたいと言うようになる。高校に入って2から3年くらい経ってやりはじめる。子どもとしても、特別扱いされるのは嫌がるので、あなたの母語は中国語だろとやらせるというのは、必ずしもいいわけではないが、言語教育者から考えると、やることにメリットがあるので、そういう環境を整え、その子がその気になればいつでもサポートできる態勢を整えておくことが望ましい。要するに、日本語だけでぐらぐらしていたものが、母語を学ぶことによって支えになるし、本人がその気になれば、アイデンティティを自分で受け入れたという形になる。それにより、親のことも受け入れることになるし、自分のことも受け入れるようになる。また、言語的にも補強されて勉強が進む。そのような門真なみはや高校の例も、インターネットでダウンロードできる。もし興味があるようなら見ていただければと思う。
(高橋委員)
・ ありがとうございます。ヒントになると思う。非常に難しい問題だと思うので、なかなか短い時間では語り尽くせないと思う。
(中委員)
・ 今の母語の問題ですが気をつけなければならないのは保育園の保育士、学校の先生や支援するボランティアが子どもの日本語力が十分でないとき、「お母さん、家では日本語を話してくださいよ。あなたが日本語を話さないから子どもの日本語が下手なのですよ。」とプレッシャーをかける、多くのお母さんたちから同じせりふを聞かされてきました。その都度「おうちでは十分母語を話して・・・・。」と伝えています。中高生になると自発的に母語の読み書きの勉強を始める子どもたちをずいぶん見ています。幼児期に母語や母文化の保持を大事にしてきた子どもたちはある時母語に目覚めると思います。そのとき、きちっと母語を学べる環境が整っていることが必要ですが、まだまだ現状はそのニーズに応えられていないと思いますし、日本人側の意識も変わっていかないと子どもたちが母語を学ぶ機会を失ってしまうと思います。
(高橋委員)
・ バイリンガル教育においては、話す相手によって言語が決まっている子の方が、早くバイリンガルになるらしい。お母さんとはクメール語でしか話せないけど、友達だったら日本語とか、そのようにはっきり分かれた方がいいというのは聞いている。
(中委員)
・ それともう一つ20年近くこの活動に関わって気付かされたことは、来日直後は日本語に集中して母語を忘れたかに思える子どもたちが高校生や大学生になって,母語の学習を始めるとその進歩は非常に早いということです。今の日本の学習環境では日本語の習得や教科の勉強すらも不十分な状況です。今母語の必要性が盛んにいわれていますが、今の教育環境で母語の習得を一方的に強いるのは逆に保護者や子どもたちに不必要な不安を増してしまうような気がします。まず外国人の受け入れ態勢の再整備をし、日本語、学習言語、母語保持の位置付け、支援のあり方の基本の部分を問い直すことが第一歩なのではないでしょうか。
(諏訪部委員)
・ 私は、日本語教育、日本語講座をやりながら母語をどんどん忘れてしまうが、母語教育は必要であると、ずいぶん言ってきた。だんだんそれに目が向いてきて、古石先生のような話の中で、そういう提案が出てくることは非常にいいことだと思う。この4月に、三歳の時にペルーから日本にやってきた子が、愛川町役場に入ってきた。今は通訳をしながら窓口の戸籍関係で仕事をしている。こういう職員が出てきたことは、非常にすばらしいと思う。ただ、今の状況だと、中学程度でレベルが非常に難しくなってくるので、だんだん追いつけなくなってくる。それで高校にも行けない。ドロップアウトしてしまう。そういう子どもたちが非常に多い。それからステップアップするという子どもは非常に少ない。これが実情である。保育士の方から、非常に苦労したという話を聞いている。その中で始めたのが絵本の読み聞かせで、これを日本語で行った。そして、通訳がスペイン語、ポルトガル語で同じ本を読み聞かせた。それを小学校に上がる前の子どもたちに行っていく。なおかつ親の方にも通訳をしながら、日本語が出来なくても大丈夫ですよ、といった環境を作っていく。それを積み重ねて、それを小学校に繋げていった。愛川町は外国人が多いので、今でもその読み聞かせは続いている。
(古石委員)
・ それはすばらしいと思う。先ほど紹介したスイスの「EOLE」というプロジェクトは、まさにそれを行っている。幼稚園レベルでは、1年間を3期間に分けて三つの言語、共通言語はフランス語だが、その他に移民の子どもたちの中で使用している人数が多い言語を三つくらい選んで、その言語を話すお母さんに来てもらい、例えば最初の3ヶ月はポルトガル語、次の3ヶ月は別の言語という形で本を読んであげて会話をする。結構それで言葉が出来るようになる。その次の3ヶ月でどうも忘れてしまうらしいが、次の年にその言語で行うと意外と覚えていたりする。記憶の底から出てきたりする。すごく萎縮していた移民の子どもたちと、そのようなことを学校という場で行うことが重要である。今回の場合は幼稚園だが、制度の中でやるということで自分を高めることが出来る。
(宮島会長)
・ 母語教育のことは、私もいろんなところで議論するが、どういう訳か日本人は、なぜ必要なのかと聞きたがる。それはおかしな話で、日本人の親が外国に子どもを連れて行った場合、外国で日本語教育をきちんと行っている。同じ事をブラジル人、中国人が行って何の不思議があるのだろうか。もう一つは、母語教育は家庭でやればいいという考え方があるが、これはできない。もしその人の親が先生であれば別だが、国語の教育は絶対学校でやらなければいけない。きちんとした言葉というのは学校で習得しないといけない。日本人は海外に行けば必ず子どもを日本語の補習学校に通わせるのに、なぜ必要なのか聞きたがる。もう一つは古石委員が言っていた、多言語であるということが人間にとって自然であって、様々な言語を使いながら、思考しているということを日本人はもう少し理解しないといけない。日本人は中国語と大和言葉両方とも使う。別々の言葉である。さらに英語を使って、英語で考えている場合もある。そのように日本人でも多言語である。理解や認識の資本になっている。これも意外に気が付いていない。そういった点をせめて学校の先生とか、日本語を教えようとするリーダーの方にはわかってもらいたいと思う。その点、今日の古石先生の発表については、私は賛成である。そこで県にはどういう風にお願いをするかということだが、こういう立派な宣言みたいなものや、指針みたいなものを出すのはなかなか大変だと思う。
(古石委員)
・ 前に第4期外国籍県民かながわ会議の施策化状況検討という資料をいただいたが、この中の県の教育指針で、母語等の学習に関する記載を加え、アイデンティティを確立する過程で、母語等の学習機会を与えられるように支援して欲しいと出ている。それに対する教育局総務課の回答は、回答になっていないと感じた。あまり、母語について書かれている内容がない。これを見る限り、県の方では、なぜ母語なのか全然分かっていないという印象を受けた。
(高木副会長)
・ 母語の必要性については、日本人にあまりピンときていないのではないか。恐らく単一民族のような形でずっと来ているので、外国人と戦争等をして切磋琢磨してきたという歴史が日本人にはあんまりないからかもしれない。例えば私がドイツにいたときに、トルコ人の友達がいたが、絶対にトルコ語を小さいときから何歳まではやらなければならないと言っていた。ドイツ語は、サッカーの友達としか話さないと言っていた。それで、トルコ語が出来るようになれば、いつでもドイツ語を勉強して完璧に話せるようになるんだと、トルコ人は思っていると聞いたことがある。なぜトルコ人がこんなにトルコ語にこだわるのかというと、自分はトルコ人だからトルコ人としてのアイデンティティは失いたくないと言う。日本に来ているドイツ人も同じである。私が英語を教えていた子どもに、中国人の子どもがいたが、小学校は完全に中華スクールに通っていた。それで中学校になってどっちを選ぶかと聞いた。お兄さんは日本の中学校の方に言ったが、妹は中華の方に行った。ただ、小学校の時は絶対中国語でないと駄目だと言っていた。それでも大人になったら皆、両方とも出来るようになっていた。やっぱり古石先生の提言について、神奈川県でもしっかり取り組んでほしい。
(宮島会長)
・ 日本とかドイツとかは豊かな国だから、そういった子どもたちに対して、文部科学省が学校を作れるが、それが出来ない発展途上国からの移民に対してどうするか。これはどこかが援助しないといけないと思う。
(高木副会長)
・ 賛成である。同じように母国語を必要とする方々にも、アイデンティティを守る権利がある。本当に大事なことだと思う。だからペルーから来た人等に母国語の教育をしなければ、彼らのアイデンティティが失われてしまう。そのように考えた方がいいと思う。日本で生まれて日本で育っても日本人ではない。やっぱり永遠と続いているDNAのアイデンティティというのは失ってはいけない。
(古石委員)
・ ずっとバイリンガル教育を進めてきた北米の方にはデータがある。日本で生まれて、小さいときから日本語が出来るはずなのに、そういう子よりも、母国でその母語による学校教育をきちんと受けて来た子の方が、こっちに来てから中学、高校で成績がいい。また、何歳ぐらいに日本に来た子で、向こうでどのくらい母語の教育を受けて来た子か、ということからどんな形でサポートすればいいのか、というのは分かってきている。そういった知見をベースとしてサポートすればいい。日本人の税金を使ってなんでその子の母語であるポルトガル語を指導しないといけないのかと、すぐにそういう発想になってしまうが、そうではない。その子が日本で大きくなって就職し、市民になっていく。そういった人がきちんと日本の中でハッピーになれれば私たちもハッピーになれる。就職、結婚もあるが、その前にアイデンティティの問題がある。アイデンティティが揺らぐといろいろな社会問題が起こる。それによって結果的に日本の社会が不安定になる。あまり報道されていないが、いろいろと問題が起きている。そういったことを防ぐためにも、中委員が行っているような活動は必要だし、母語の教育をサポートしていくことも日本社会のためにすごく重要であると思う。
(宮島会長)
・ だいたい終了の時間が来た。問題提起については、県ですぐにどうのというのは出来ないかもしれないが、やはりまずは県内の母語教育をしているグループを把握していくところから始めていただければと思う。それでは本日はどうもありがとうございました。
(事務局)
・ 本日は大変貴重なご意見をいただき感謝する。会議でいただいた意見については、検討して政策に反映させるようにしたい。あと、総合的な日本語等学習支援の中で話した、外語短期大学の先生の数だが、現在正規の先生は21人いる。その内訳は、英語専門が11人、中国語専門が3人、日本語の専門が2人である。その他に5人いて合計21人である。ご報告させていただく。なお、2回目の懇話会については、年が明けてから開催させていただきたいと思う。宮島会長をはじめ、委員の皆様今後ともよろしくお願い致します。本日はどうもありがとうございました。
以上。
神奈川県

このページの所管所属は 県民局 くらし県民部 国際課 です。

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