体育センターレポート第33号  平成17年度版(2005)

掲載日:2015年4月1日

発刊のことば

写真:県立体育センター所長

神奈川県立体育センター
  所長  佐々木 悦子

このたび、当体育センター指導研究部の平成17年度の研究報告書をまとめた「体育センターレポート第33号」を発刊する運びとなりました。

本号は、指導研究部の4室(研修指導室、スポーツ科学研究室、生涯スポーツ推進室、スポーツ情報室)が行った研究と、学校体育長期研修の先生方の授業研究の報告により構成されております。これらにつきましては、抄録のみの掲載となっておりますが、下記のページに、研究の全体がわかる研究報告書を掲載しておりますので、本レポートと併せてご活用いただければ幸いに存じます。

http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f370344/

体育センターは、県民の皆様に明るく豊かなスポーツライフを送っていただくために、施設の利用者に満足度の高いサービスを提供するとともに、体育・スポーツに関する時代の要請に則した人材の育成や医学的サポート、地域におけるスポーツ活動組織の育成・支援、調査研究、スポーツ情報の提供を図ってまいりたいと考えております。今後とも、益々のご指導、ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。

最後に本誌の発刊に際しまして、ご協力を賜りました皆様に厚くお礼申し上げ、発刊のことばといたします。


目次

調査研究

 学校体育長期研修

《小学校》

    健康によい生活の仕方を選択する力を育てる保健学習の展開   藤沢市立湘南台小学校  宮本 一也

《中学校》

    体力を高める運動の効果的な体の使い方を育む学習   平塚市立中原中学校  木村 典子

《高等学校》

    個人技術を身に付け、個人戦術の力を高めるハンドボール学習   県立荏田高等学校  服部 雅典


保健学習の指導上の課題に関する研究
  ~小・中・高等学校の9年間を見通した指導を目指して~(2年継続研究の1年次)

研修指導室    大越正大    久保寺忠夫    白井功    落合浩一    林ますみ    小野澤克己
研究アドバイザー  物部博文

はじめに

現在、学校教育における保健学習は、小学校3年生から高等学校2年生までの9年間行われており、各校種・各学年の授業において、9年間の見通しをもって指導を展開することが求められている。そこで、本研究では、小・中・高等学校教員の保健学習に対する指導の意識と実態について調査し、各校種における学習指導上の課題を小単元ごとに明らかにすることにより、その課題に対応するとともに、9年間を見通した、今求められている学習指導及び評価の方法等を示した保健学習の指導資料を作成することを目的とする。

内容及び方法

1  保健学習に関する資料収集及び文献研究

2  アンケートによる意識・実態調査

(1)調査対象    小学校25校、中学校25校及び県立高等学校30校における保健学習を担当している教員

(2)調査期間    平成18年2月8日~21日

(3)調査内容

  ア 指導の実態

  • 各小単元の指導時間
  • 各小単元で行っている手法

  イ 指導の意識

  • 各小単元の指導効果の意識
  • 指導上の問題点等

(4)研究のまとめ及び保健学習資料集の作成(平成18年度)

図1:9年間を見通した小単元ごとの系統図

     図1: 9年間を見通した小単元ごとの系統図

結果

1  理論研究のまとめ

(1)「保健」(保健領域・保健分野・科目保健)の学習内容とその関連(図1)等について、9年間を見通した理論の整理を行った。

2  アンケートによる意識・実態調査の結果と分析

(1)各校種の指導の現状

 ア 小学校

  • 全ての学習において教科書を中心とした講義形式が多く、自作プリントの使用も見られる。
  • 養護教諭とのTTは「思春期の変化」、ディスカッションは「不安や悩み」で多く行われている。
  • 指導の効果について「あまり効果がなかった」「効果がなかった」という回答が多かった小単元は「不安や悩みへの対処」「心の健康」である。
  • 指導上の問題点は、どの単元においても「実生活に結びつけるのが難しい」と回答した割合が高い。

 イ 中学校

  • 全ての学習において、教科書を中心とした講義形式が多く、自作プリント・市販のワークの使用も見られる。
  • 「心身の調和と心の健康」では、ロールプレイングやディスカッションなどの参加型の学習を用いているという回答が若干見られる。
  • 「喫煙と健康」「飲酒と健康」については、「効果があった」「やや効果があった」と全員が答えた。
  • 指導上の問題点については、他の校種と比べて「問題を感じない」と回答している割合が高く、問題となる項目は小単元において多岐にわたる。

 ウ 高等学校

  • 全ての学習において、教科書を中心とした講義形式が多く、自作プリントや市販のワークも使われている。参加型の手法はあまり行われていない。
  • 指導の効果では「自己実現」「我が国の保健・医療制度」「地域の保健・医療機関の活用」において、他の小単元より「あまり効果がなかった」「効果がなかった」と回答している割合が高い。
  • 指導上の問題点は、どの小単元においても「興味を持たせるのが難しい」「知識の定着が難しい」「実生活に結びつけるのが難しい」と回答している割合が高い。

(2)「あまり効果がなかった」「効果がなかった」と回答した割合が高い小単元の指導実態

 ア 小学校

  「心の発達」:

  • 「(あまり)効果がなかった」と回答した教員の「指導上の問題点」の回答は「興味を持たせるのが難しい」「知識の定着が難しい」と回答した割合が高い。
  • 指導の方法は、教科書中心の割合が高い。

  「不安や悩みへの対処」:

  • 「(あまり)効果がなかった」と回答した教員の問題意識は「実生活に結びつける」「興味を持たせるのが難しい」と回答した割合が高い。
  • 指導の方法は、教科書中心と答えた割合が高い。

 イ 中学校

  「自己形成」:

  • 「(あまり)効果がなかった」と回答した教員の「指導上の問題点」は、「興味を持たせるのが難しい」「課題を持たせることが難しい」と回答した割合が高い。
  • 指導の方法は「教科書中心」と回答した割合が高く、市販のワークも使われている。

  「温度、湿度、明るさと至適範囲」:

  • 「効果を感じない」と回答した教員の「指導上の問題点」は、「興味を持たせることが難しい」と回答した割合が高い。
  • 指導の方法は「教科書中心」と回答した割合が高く、市販のワークや自作プリントも使われている。

 ウ 高等学校

  「自己実現」:

  • 「効果を感じない」と回答した教員の「指導上の問題点」は、「興味を持たせるのが難しい」と答えた割合が高い。
  • 指導の方法は教科書中心と回答した割合が高い。

  「地域の保健・医療機関の活用」:

  • 「効果を感じない」と回答した教員の「指導上の問題点」は、「興味を持たせることが難しい」「実生活に結びつけることが難しい」と回答した割合が高い。
  • 指導の方法は「教科書中心」と回答した割合が高く、自作プリントも使われている。

(3)系統性のある小単元の指導の実態について

 ア 「交通安全」

  • 指導方法については各校種「教科書を中心とした講義」と回答した割合が高い。
  • 指導の効果については「効果があった」「やや効果があった」と回答した割合が高いが、高等学校では小・中学校に比べ、「あまり効果がなかった」と回答した割合が高くなっている。
  • 指導上の問題点は、小学校では「実生活につなげることが難しい」、中学校では「興味を持たせるのが難しい」、高等学校では「知識の定着が難しい」と回答した割合が高い。また中学校では「問題を感じない」という回答の割合も高い。

 イ 「応急手当」

  • 指導方法については、各校種「教科書を中心とした講義」と回答した割合が高いが、小学校の「けがの手当て」では「養護教諭とのTT」と回答した割合が高かった。
  • 指導の効果については、校種が上がるほど「効果があった」「とても効果があった」との回答の割合が高くなり、「指導上の問題点」についての回答の割合は低くなっている。
  • 「指導上の問題点」は、小学校・中学校・高等学校ともに「実生活に結びつけることが難しい」と回答した割合が高い。

 ウ 「ストレスへの対処」

  • 指導方法は、各校種ともに自作プリントがよく使われている。
  • 指導上の問題点は、小学校は「実生活に結びつけるのが難しい」中学校は「実生活に結びつけるのが難しい」「知識を定着させるのが難しい」「課題を持たせるのが難しい」がそれぞれ回答の割合が高く、高等学校では「興味を持たせるのが難しい」と回答した割合が高い。
  • 指導上の問題点は、小学校では「実生活に結びつけるのが難しい」、中学校では「問題を感じない」、高等学校では「興味を持たせるのが難しい」と回答した割合が高かった。

次年度に向けて

次年度、9年間を見通した保健学習の指導資料を作成していくためには、今あるデータを深く分析し、指導上の課題を浮き彫りにする必要がある。

さらに、今求められている9年間を見通した学習を展開するために必要な情報を、様々な資料・文献をもとにあらためて整理し直し、保健学習の指導に携わる教員にとって使いやすく分かりやすい資料提供ができるよう、内容を検討していく必要がある。


神奈川県が推進している「3033運動」による健康・体力つくりに関する研究  (2年継続研究の最終報告)

スポーツ科学研究室  幸田隆  佐野朗子  小峰穣二  大谷一記  高井瑞穂
研究アドバイザー  横浜国立大学  落合優    神奈川工科大学  高橋勝美

はじめに

神奈川県では、2001年(平成13年)を「希望の年」として位置づけ、年間を通じて「生涯スポーツフェスティバル」を開催し、その中で1日30分間、週3回、3ヶ月間、継続してスポーツを行う「3033運動」スポーツ啓発キャンペーンを展開し、その後も継続している。また、平成16年3月には「神奈川力構想・プロジェクト51」が示され、「成人の週1回以上のスポーツ実施率を2006年(平成18年)までに41パーセントにする」施策目標が掲げられた。現在は「3033運動」などの普及・啓発事業を推進することによって、全県的な健康・体力つくりの推進体制の整備を進めている。

よって本研究は、神奈川県が推進している「3033運動」に着目し、県内のあまり運動習慣のない中高齢者の方に「3033運動」を実践してもらい、運動やスポーツの習慣がどの程度定着するか、また、心身にどのような効果があるかを検証することにした。

内容及び方法

1 研究期間

 平成16年4月~平成18年3月

2 対象

 30歳から65歳までのあまり運動習慣のない方 60名

3 募集方法

 ”「3033運動」で行う健康増進指導”で公募

4 調査内容及び方法

応募したモニター(以下「実践者」という。)に「3033運動」ノートを配布し、事業の趣旨、実践内容、実践方法等について十分な理解を得た後、「3033運動」の実践をしてもらい、各種測定及びアンケート調査を行った。

(1)健康・体力面の意識調査

実施期間の初日と最終日にアンケートを実施し、健康・体力面の意識の変容、及び運動習慣の定着具合とその理由について調査した。

(2)体力等の測定

 「3033運動」の開始時と中間時(開始6週間後)、終了時に、形態、体組成の計測と体力測定を行った。

 ア 形態、身体組成の計測

  筋肉率・体脂肪率

 イ 基礎体力の測定

  持久力:PWCテスト
  筋力:握力テスト
  筋力・筋持久力:30秒上体起こしテスト
  柔軟性:長座体前屈テスト
  瞬発力:脚伸展パワーテスト
  敏捷性:座位ステッピングテスト

 ウ 生活体力測定

  立ち上がり動作:両足片足立ち上がりテスト
  移動動作:大股10歩テスト(30~49歳)/10mS字歩行テスト(50歳~65歳)
  家事動作:ハンガー掛け替えテスト
  身辺動作:縄くぐりテスト
  転倒回避力:ファンクショナルリーチテスト/足関節可動域テスト

結果

1  実践状況について

応募者60名のうち、3ヶ月間の運動実践ができた者は51名(85%)であった。51名の実践状況は、判断できない者4名を除き、運動実施期間(12週)中に1日30分以上週3日以上の運動を全12週実施した者は21名(45%)、6~11週実施した者は16名(34%)、0~5週実施した者は10名(21%)であった。

2  形態・体組成について

 (1)実践者全員の形態・体組成の変化について

実践者全員の筋肉率については、その平均値が事前から事後に向けて増加し、その差に有意な傾向が認められた。体脂肪率については、その平均値が事前から事後に向けて減少し、その差に有意な傾向が認められた。

 (2)実践状況別の形態・体組成の変化について

「12週実施」グループの筋肉率については、その平均値が事前から事後に向けて増加し、その変化に有意な傾向が認められた。さらに体脂肪率については、その平均値が事前から事後に向けて減少し、その変化は5%水準で有意であった。「6~11週実施」グループおよび「0~5週実施」グループの筋肉率については、その平均値が事前から事後に向けてともに増加したものの、その変化は有意でなかった。また、体脂肪率についても、その平均値が事前から事後に向けてともに減少したものの、その変化は有意でなかった。

3  基礎体力について

 (1)実践者全員の基礎体力の変化について

実践者全員の平均値においては、PWC、握力、30秒上体起こし、長座体前屈、脚伸展パワー、座位ステッピングのすべてが事前から事後に向けて増加し、その差や変化は1%水準で有意であった。

 (2)実践状況別の基礎体力の変化について

「12週実施」グループの握力、30秒上体起こし、長座体前屈、脚伸展パワーについては、その平均値が事前から事後に向けて増加し、その変化は1%水準で有意であった。座位ステッピングについては、その平均値が事前から事後に向けて増加し、その変化は5%水準で有意であった。PWCについては、その平均値が事前から事後に向けて増加したものの、その変化は有意でなかった。

「6~11週実施」グループのPWC、30秒上体起こし、長座体前屈、座位ステッピングについては、その平均値が事前から事後に向けて増加し、その変化は1%水準で有意であった。握力については、その平均値が事前から事後に向けて増加し、その変化は5%水準で有意であった。脚伸展パワーについては、その平均値が事前から事後に向けて増加し、その変化に有意な傾向が認められた。

「0~5週実施」グループの30秒上体起こしについては、その平均値が事前から事後に向けて増加し、その変化は5%水準で有意であった。PWC、脚伸展パワーについては、その平均値が事前から事後に向けて増加し、その変化に有意な傾向が認められた。握力、長座体前屈、座位ステッピングについては、その平均値が事前から事後に向けて増加したものの、その変化は有意でなかった。

4  生活体力について

 (1)実践者全員の生活体力の変化について

実践者全員の生活体力のうち、両足立ち上がりについては、事前で15cmから立ち上がれなかった2名の記録が向上した。片足立ち上がりについては、事前から事後の記録の変化は1%水準で有意であった。大股10歩、10mS字歩行、ハンガー掛け替え(利き手・逆手)、縄くぐり、足関節可動域(右足・左足)については、平均値が事前から事後に向けて向上し、その差や変化は1%水準で有意であった。ファンクショナルリーチについては、平均値が事前から事後に向けて向上し、その変化に有意な傾向が認められた。

 (2)実践状況別の生活体力の変化について

「12週実施」グループの片足立ち上がりについては、事前から事後の記録の変化は5%水準で有意であった。10mS字歩行、ハンガー掛け替え(利き手・逆手)、縄くぐりについては、平均値が事前から事後に向けて向上し、その変化は1%水準で有意であった。足関節可動域(右足)については、平均値が事前から事後に向けて向上し、その変化は5%水準で有意であった。ファンクショナルリーチについては、平均値が事前から事後に向けて向上し、その変化に有意な傾向が認められた。足関節可動域(左足)については、平均値が事前から事後に向けて向上したものの、その変化は有意でなかった。

「6~11週実施」グループの片足立ち上がりについては、事前から事後の記録の変化に有意な傾向が認められた。ハンガー掛け替え(利き手・逆手)、縄くぐり、足関節可動域(右足・左足)については、平均値が事前から事後に向けて向上し、その変化は1%水準で有意であった。10mS字歩行については、平均値が事前から事後に向けて向上したものの、その変化は有意でなかった。ファンクショナルリーチについては、平均値が事前から事後に向けて低下したもの、その変化は有意でなかった。

「0~5週実施」グループの片足立ち上がりについては、事前から事後の記録の変化は有意でなかった。ハンガー掛け替え(利き手)については、平均値が事前から事後に向けて向上し、その変化は1%水準で有意であった。10mS字歩行、縄くぐり、ファンクショナルリーチについては、平均値が事前から事後に向けて向上し、その変化は5%水準で有意であった。ハンガー掛け替え(逆手)平均値が事前から事後に向けて向上し、その変化に有意な傾向が認められた。足関節可動域(右足・左足)については、平均値が事前から事後に向けて向上したものの、その変化は有意でなかった。

5  健康・体力面の意識について

 (1)実践者全員の健康・体力面の意識の変容について

実践者全員について、事前と事後の健康・体力面の意識の改善の変容を調査したところ、「健康だと思う」、「体力の衰え感」、「日常生活での充実感」については1%水準で有意で、「体力に対する自信や不安」、「階段の昇降の感じ」、「健康や体力に注意をはらう程度」については5%水準で有意であった。また、「精神的な疲労、ストレス感」については有意な傾向が認められた。しかし、「肉体的な疲労感」、「不眠の症状」、「食欲不振」、「便秘の症状」、「さわやかさ」、「若々しさ」、「やわらかい動きができる感じ」、「転倒や捻挫のしやすさ」については、その変容は有意でなかった。

 (2)健康や体力維持のための心掛け内容について

健康や体力について注意を払うようになる具体的な内容としては、日常に身体活動の機会を増やしたり、実際に運動やスポーツをしたりするほか、食生活に気を付けたり、睡眠や休養をよく取るようになるなどの変化が認められた。

 (3)実践状況別の意識の変容について

実践者全員の健康・体力面の意識において有意な変容がみられなかった「肉体的な疲労感」、 「不眠の症状」、「食欲不振」、「便秘の症状」、「さわやかさ」、「若々しさ」、「やわらかい動きができる感じ」、「転倒や捻挫のしやすさ」について、実践状況別に事前と事後の変容を調査したところ、「12週実施」グループでは「さわやかさ」、「若々しさ」については意識が改善し、「さわやかさ」はその変容が5%水準で有意、「若々しさ」はその変容に有意な傾向が認められた。「6~11週実施」グループでは「肉体的な疲労感」については意識が改善し、その変容は5%水準で有意であった。

6  運動の習慣化について

 (1)終了時の運動習慣の定着状況

事前にはほぼ全員(96%)が運動やスポーツの習慣が定着することに期待を寄せていたが、"「3033運動」で行う健康増進指導"終了時には期待にかなり近い割合(90%)で運動やスポーツの習慣が定着した。今後運動やスポーツの習慣が継続するかについては、ほぼ全員(98%)が継続すると思っていた。

 (2)終了3ヶ月後の運動習慣の定着状況

「3033運動」で行う健康増進指導"終了3ヶ月後の運動の継続状況を追跡調査した結果(回収率71%)、1割程度(11%)は運動を継続していなかったが、5割(50%)が週3日以上の運動頻度で、4割程度(39%)が週1~2日の運動頻度で継続していた。継続できなかった理由としては、歩数計を付けなくなったためが最も多かった。

まとめ

あまり運動習慣のない方に「3033運動」を実践してもらうと、運動やスポーツの習慣が高い確率で定着し、心身に健康や体力面で効果を及ぼすことがわかった。

また、「3033運動」による心身の効果から考えると、1日30分週3回を運動の目安としながらも、自分の能力・適性、生活スタイルにあわせた目標を設定し、少なくとも2週に1週は目標を達成するよう実践することが必要である。また、運動だけでなく栄養や休養の改善を含めた永続的な取り組みとしてとらえることが健康・体力つくりには大切である。

運動やスポーツの習慣の定着については、まず、「3033運動」がその趣旨のみならず実践内容、実践方法を伴って普及し、あまり運動習慣のない人がそれをきっかけとして運動に取り組み、その効果を実感することができれば、定着率はかなり高くなる。また、1日30分週3回を目安にしながらも一定のペースで運動に取り組むことができない者もいることから、特に取り組みはじめには運動の頻度と強度、時間などを適宜見直すことが大切である。運動を中断することなく永続させていくには、運動効果を定期的に測定するとともに自己の取り組みを見直し、必要な修正を加え新たな取り組みにつなげるPDCAサイクルに基づく運動実践プログラムを行う必要がある。


 学校体育に関する児童生徒の意識調査
   ~小学生の意識~  (3年継続研究の1年次)

スポーツ科学研究室  大谷一記  佐野朗子  小峰穣二  幸田隆  高井瑞穂
研究アドバイザー  横浜国立大学  落合優

はじめに

体育センターでは、学習指導要領の改訂に伴い、昭和47年・昭和58年・平成6年と過去3回、おおよそ10年ごとに小・中・高校生(小学生は平成6年より)を対象に学校体育に関する意識を明らかにしてきた。そこで、現行の学習指導要領導入後、3年が経過したことを受け、平成17年度から3年継続事業として1年次小学生・2年次中学生・3年次高校生を対象に調査を行うことにした。

今年度の調査では、小学生を対象とし、学校体育に関する児童の現状を把握するとともに、過去の調査と比較することにより変化を明らかにし、こらからの小学校体育の方向性を探るための基礎資料とした。

内容及び方法

1 研究期間

  平成17年4月~平成18年3月

2 研究内容

  児童の学校体育に関する意識調査及び学習状況等に関する実態の調査・分析

3 研究方法

(1)文献研究

(2)調査

ア 調査期間
 平成17年9月中旬~10月中旬

イ 調査方法
 質問紙によるアンケート調査

ウ 調査対象者及び標本構成
 神奈川県内の四市の教育委員会、七教育事務所管内より、県内各地区公立小学校各2校(合計20校)を推薦(2・4・6学年の児童、各2クラス)
(ア) 調査人員と内訳
  3,735名(男子1,893名、女子1,842名)

(3)調査項目

  1. 運動や遊び、スポーツが好きかきらいについて
  2. 体育の学習が好きかきらいについて
  3. 体育の学習で行う好きな運動内容(領域)について
  4. 体育の学習の活動状況について
  5. 体育の学習の楽しさ、つまらなさについて
  6. 安全面で心がけていることについて
  7. 休み時間や放課後の運動実践について
  8.  スポーツクラブへの入部状況について
  9. 学校から帰宅後や休日の運動実践について
  10. 学校から帰宅後や休日の運動場所や運動相手について
  11. 好きな、行いたいスポーツ(運動)について
  12. 体育を指導してくれる理想的な教師像について

調査結果

1 運動や遊び、スポーツが好きかきらいかについて

からだを使って遊んだり、スポーツをしたりすることが「好き」な児童は、全学年を通して男子で85%以上、女子で75%以上であり、「きらい」な児童は、全学年を通して男女とも10%未満であったことから、多くの児童が運動やスポーツを「好き」であることがわかった。

2 体育の学習が好きかきらいかについて

体育の学習が「好き」な児童は、全学年を通して男子で84%以上、女子で73%以上であり、「きらい」な児童は、全学年を通して男女とも10%未満であったことから、多くの児童が体育の学習が「好き」であることがわかった。また、運動する子としない子の二極化が進んでいると一部でいわれているが、前回調査と比較すると、「とても好き」の割合が増加し、「きらい」の割合が減少しており、今回の調査からはその傾向はみられず、体育好きが増え、体育嫌いが減った結果となった。

また、クロス集計の結果によると、体育の好きな児童はおおむね運動やスポーツが好きであり、体育の嫌いな児童はおおむね運動やスポーツが嫌いだということがわかった。

3 体育の学習で行う好きな運動内容(領域)について

『好きな内容』は2年生男子で「ドッジボール」、女子は「水遊び(水泳)」だった。4年生は男女ともに「ドッジボール」、6年生男子は「サッカー」、女子は「バスケットボール」だった。 

4 体育の学習の活動状況について

体育の学習において、多くの児童が自分の目標やめあてを持ち、練習の仕方や場の工夫を行い、友だちと協力して最後まで意欲的に取り組み、自分の役割を果たそうとする様子がうかがえた。

また、前回調査と比較すると、体育の学習への取り組む姿勢や態度など、全体を通して活動状況が向上していることがわかった。

5 体育の学習の楽しさ、つまらなさについて

90%以上の児童が体育の学習が「楽しい」と感じている。ただし、男女別にみてみると男子は2年生から6年生まで、ほとんど割合が変わらないが、女子は学年進行に伴って、少しずつだが「楽しい」と感じる児童が減少していた。体育の学習が楽しいと感じたときは、4年生男子が「思いきり身体を動かすことができたとき」、4年生女子と6年生男女は「記録が伸びたりできなかったことができるようになったとき」だった。一方、「つまらない」と感じている児童は、男女とも2年生で割合が高く、4年生で減少し、再び6年生で増加している。また、女子の方が「つまらない」と感じる割合が高かった。

また、前回調査と比較すると、「楽しい」と感じている児童の割合が大きく増加し、「つまらない」と感じている児童の割合が大きく減少していることから、体育の学習が改善されてきている結果といえよう。

6 安全面で心がけていることについて

体育学習時に児童は、けがを防止するために、自分自身の身体や心理状態に気をつけているといえる。一方、活動場所や使用器具などに注意する児童は多いとはいえない。

学習の場や教具・教材など学習環境を中心とした安全管理については、まず教師が十分配慮するとともに、学習ノートの工夫や安全チェックシートの活用等、学習環境に関わる児童の意識を高める支援をする必要があると考える。

7 休み時間や放課後の運動実践について

休み時間や放課後に運動やスポーツをしている状況をみると、全般的に自ら進んで運動やスポーツに取り組んでいる様子がうかがえた。また、運動やスポーツをしている児童は、男女ともに気の合う仲間と一緒に自由に体を動かすことが楽しいと素直に感じて運動していることがわかった。

8 スポーツクラブへの入部状況について

スポーツクラブへの加入率は女子に比べ男子が高かった。また、男子は学年進行に伴って、加入率に大きな変化はみられないが、女子は減少していくことがわかった。

9 学校から帰宅後や休日の運動実践について

帰宅後や休みの日に運動やスポーツをしている状況をみると、2年生は男女ともによく運動していることがわかる。しかし、4年生以降、男子は緩やかに減少し、女子は6年生で大きく減少している。なお、前回調査と比較すると、帰宅後や休みの日に運動やスポーツをしている児童の割合は、若干減少している。

10 学校から帰宅後や休日の運動場所や運動相手について

運動やスポーツを行う場所として、2年生は男女とも「公園や広場」「家の庭や家のまわり」が多い。4・6年生の男子では「スポーツクラブ、スポーツ教室、道場など」が増加するが、女子は2年生同様、「家の庭や家のまわり」「公園や広場」が主な場所だった。

また、運動相手として2年生は男女とも「家族」、4・6年生の男子は「スポーツクラブの仲間」、4・6年生の女子は「近所の友だち」が主だった。

11 好きな、行いたいスポーツ(運動)について

2・4年生の一番行いたいスポーツや運動は男子がサッカー、女子が水泳だった。6年生では男子がサッカー、女子がバスケットボールで、4・6年生については、前回調査と同様の結果だった。

12 体育を指導してくれる理想的な教師像について

子どもたちは、全学年を通じて明るく、おもしろく、かつ指導力のある先生を望んでいることがわかった。

また、男子は、はつらつとして運動ができる先生を望んでおり、女子は、やさしくてみんなを平等に扱ってくれる先生を望んでいることがわかった。

これからの小学校における体育について

1 どうやって 体育(運動)を好きにさせるか

今回の調査結果から、体育(運動)好きは主体的、積極的に運動をすることがわかった。また、運動嫌いは環境を整えても運動をしないことがわかった。このことから、運動好きを増やすことが大切になると考えられる。

そこで、次の2点が重要となる。

(1)運動の楽しさに主体的にふれること

他から強制されるのではなく、まず、低学年では遊び感覚で運動に関わり、自分を解放し、思いきり表現できるような雰囲気、仲間との交流の楽しさが実感できるような集団作りなどへの配慮が重要となろう。

(2)体力・運動能力や運動技能の向上の実感

人は誰でもできないことができるようになったり、上達したとき、また、自己記録を更新したり、自己の成長・発展が実感できたときに、大きな喜びを感じることができ、それがさらにもっと運動しようとする意欲や態度につながっていく。主体的な運動実践や粘り強い努力・挑戦が、体力・運動能力や運動技能の向上につながるという体験を数多くさせるように配慮することが大切となる。「できた体験」「うまくなった体験」が数多く保証されるような工夫が望まれる。

2 授業の方法

低学年では、運動で体を動かすことと遊びは一体化しているため、運動好きな児童が多い。

しかし、中・高学年になると、好きだという児童の減少傾向がみられる。運動やスポーツが好きであれば、主体的に運動をするという傾向がみられたことから、運動が好きな児童はさらに運動が好きになり、嫌いな児童でも好きになるような授業を行う必要がある。

たとえば、低学年においては、導入段階で遊びの延長として取り組めるような配慮が大切となるので、ここでの中心的な指導上の課題は、「運動好きを増やす」ことである。教師は個々の児童に能力差を感じさせないよう、動くこと自体に親しみ、楽しむことをねらいに、児童が自分から進んで運動する中で、運動の仕方を理解し、徐々に体力・運動能力や運動技能の向上につながるような単元計画を立て、毎時の指導を展開する必要があろう。

中学年においては、児童が低学年で獲得した運動への積極的な意欲や態度をもとに、より高度な技能や複雑なルールを内容とする運動をとおして、個々の「めあて」に向かっていかれるように配慮する必要があろう。

高学年においては、いろいろな領域の運動に積極的に取り組み、それぞれの運動の実践に伴う喜びや楽しさを十分に味わうことができるように配慮する必要があろう。

また、全体としては、すべての児童に記録や技能の向上に関する達成感を確実に味わわせた上で、男女それぞれの特性を生かすことが大切となる。男子に対しては、学習時間の中で運動量を確保することや競争の場面をつくること、女子に対しては、グループで協力して活動する場面をつくり、うまくできたときは誉めて向上心を高めるような支援が必要となろう。

3 授業以外での方法

体育の授業だけで、運動を好きにさせることはなかなか難しい。学校と家庭や地域が協力し合って子どもの体力低下傾向を真剣に考えていこうという取り組みは、全国各地で広がりつつある。神奈川県でも「子どもキラキラタイム」を実践しており、外遊びからのアプローチを各学校で展開しているところである。この取り組みは、まさに体育の授業以外から運動の好きな子どもたちを育てていく事になると考える。

このように、友だちや先生、さらには地域の人たちと外で動き回って遊ぶ経験が増えれば、運動が嫌いな子どもたちも、運動の好きな子どもたちとの活動や楽しい雰囲気の影響の中で、受け身的な姿勢から行動的な姿勢に変わってくるに違いないと考える。つまり、このような実践が体育や運動好きな子どもたちを増やすことになると考える。


スポーツボランティア実態調査 
   ~KSVB会員の意識及び活動状況について~

生涯スポーツ推進室  米山教子  高木亮  加藤木紳克  金子博暢

はじめに

スポーツの多様化とともに総合型地域スポーツクラブの育成など、スポーツにおける新しい組織化が進む今日、プレイヤーとして「する」スポーツのみでなく、「みる」スポーツの他、クラブや競技団体、イベントの運営やサポートなど、「ささえる」スポーツの重要性が認識されるようになっている。

このようなスポーツへの関わりについては、従来は、過去にそのスポーツをプレーしていたというようにスポーツへの関わりの深い人々が携わっている状況がほとんどであったが、最近ではこれまでスポーツに関わりの浅い人々も「スポーツボランティア」として地域のクラブ・団体やイベントの運営等を支援する場面が多く見受けられるようになり、新たなスポーツ参加の形態として確立されつつある。

このスポーツボランティアには、地域におけるスポーツクラブや団体の活動を指導者や運営スタッフとして日常的にサポートする活動と、スポーツ大会などの運営をサポートする非日常的な活動とに大別される。1)今日、地域で活動するスポーツクラブ等の役員やスポーツイベントにおける運営スタッフといったマンパワーが慢性的に不足している状況にあり、地域ではごく限られた数のスタッフ(体育指導委員や体育振興会役員など)でまかなわれているといった実情がある。

このような状況の中、ボランティアのマンパワーは、地域での展開が期待されている総合型地域スポーツクラブや市民が運営・参加するスポーツイベント、大会、スポーツ教室等において、その活躍が組織の存続やイベント等の継続の鍵となることが予想される。

従って、今後のスポーツ振興の成否を握る一つのキーパーソンになるスポーツボランティアの意識及び活動状況について把握することは、今後のスポーツ振興を図るうえで重要になると考えられる。

内容及び方法

スポーツ活動を組織的にサポートするボランティア団体として、平成10年の「かながわ・ゆめ国体」開催を契機に組織された「かながわスポーツボランティアバンク」(以下「KSVB」という。)の会員に対し、その意識や活動状況を調査し、活動への参加や継続に影響を及ぼす要因などを分析した。

なお、アンケート調査対象数は平成17年度「かながわスポーツボランティアバンク(KSVB)会員」257名、回答数182名、回収率71%であった。

結果及び考察

1  KSVB会員の属性について

会員の性別は、男性が全体の64.8%、女性が30.8%であった。会員の年代は、「60歳代」が48.4%と全体の半数近くを占めており、「50歳代」から「70歳代」までを合計すると、88.5%と全体の9割近くを占めている。会員の職業は、「無職」が49.5%と一番多く、続いて「その他」が20.9%、「会社員」が19.2%であった。これらのことより定年退職後の会員が多いことが推測できる。

2  ボランティア活動経験

ボランティアの活動経験の調査結果より国体時、また国体終了後間もなく加入し、現在まで活動を続けている会員が約7割と大多数を占め、1~2年の比較的新しく加入した会員が少ないという結果であった。また、KSVBの会員の約3/4がKSVB以外のボランティア活動にも参加し、その内容は「スポーツ関係のボランティア活動」36.8%と多いものの、その他は、「地域のボランティア」が12.6%、「福祉関係のボランティア」7.1%、「自然保護ボランティア」7.1%という結果であった。スポーツ以外の活動にも積極的に参加している様子が伺える。

3  スポーツとのかかわり

KSVB会員のスポーツ実施率は約7割であった。また、過去のスポーツ経験の有無を併せて調査したところ、スポーツ経験のある会員は、64.8%であり、現在のスポーツ実施者とほぼ同じ値を示している。今回の調査では、会員のスポーツ実施率とKSVBへの加入や、スポーツ活動へのボランティアの関わりによって、本人のスポーツ実施に影響があるという変化は見とれなかった。

4  KSVBの活動について

KSVBの活動をまとめると次のことがわかった。

加入した主なきっかけは「国体開催を契機として」がほとんどであり、その他による加入は非常に少なかった。

KSVBから紹介された年間活動回数は、「1~5回」が全体の8割近くを占めている。また、このことについて全体の約4割近くが「満足している」状況であった。

ボランティア活動を行うことによって生じる金銭的な負担については、全体の約9割近くの会員で生じていることがわかった。また、活動を行うことにより金銭的な負担が生じることについては、約4割近くの会員が「当然である」 という回答であった。

KSVBから紹介された活動への参加決定要因については、「日程が空いている」といった会員自身の自由時間との兼ね合いや地理的条件により決定している傾向が見られた。

KSVB加入時の期待と現在の評価を比較したところ、ほとんどの質問項目で「当てはまる」と回答した会員の数が減少した。増加した項目は「他の人から認められたかった」のみであり、加入時の期待と現実のギャップや、スポーツボランティアに対する認知度の違いによるものなども考えられる。

5  活動意識について

KSVBの活動意識についてまとめると次のことがわかった。

KSVBの活動意識については「イベントの成功に役立つ」「イベントそのものを楽しみたい」や「自分の視野を広げたい」「主催者と同じ意識で活動したい」といった内発的動機に起因する項目をあげる会員が多かった。このことは主催者や参加者を支えたいという意識と自分自身が楽しみたいという意識の双方の視点を持ち合わせていると考えられることから、相手のために活動することと自分自身の楽しみ、視野の広がりといった自己啓発につながる活動の双方が相乗的に作用し、KSVB活動継続のモチベーションの高揚につながっているのではないかと考える。

KSVB組織に対する考えについては、「活動がうまくいくように努力する」「メンバーであることを誇りに思う」という意識が高い。

また、KSVB会員のスポーツボランティアに対するイメージについては「体力が必要なもの」「根気強さが必要なもの」「責任が必要なもの」「自発的なもの」等の『心身的条件』因子を強く持っていることがわかった。

6  KSVBの活動を続けるにあたっての要望

KSVBの活動を続けるにあたっての主催者に望むことについては、仕事を行う上での段取りや、手順や説明についての要望が高かった。

このことより、主催者と、ボランティアの役割分担を明確化し、ボランティアに伝えるべきこと、任せられることをきちんと整理し、確実に伝えるような準備が必要ではないかと考えられる。

また、行政に望むことについては、活動をしたいと思っても、地域での活動がないこと、自分の都合と合わない等の制約があることから、豊富な情報提供と、活動時期・時間や場所の選択肢の増加を望んでいると考えられる。

まとめ

スポーツボランティアとは、参加者や主催者への活動の支援をとおして、自分自身の生活の質を高めていくものであると捉えた時、スポーツボランティアに携わる人は、スポーツに関心があることはもちろんのこと、時間的にも余裕があり、自由時間を有効かつ社会の役に立つために使いたいと考えている人、さらに活動を通して自分自身のライフスタイルも豊かにしようとする人ではないかと考えることができる。

ボランティア活動時には主催者と対等な立場で、あるいはそれ以上の立場で判断をしなければいけない場面に遭遇することもあるはずである。したがって、今後はボランティアの資質をより高めていくことが重要であり、ボランティア自身のプロ意識も必要になってくると考えられる。

このことは、本調査の結果からも伺うことができ、こうした意識を主催者側も理解し、単なる手伝いとしての認識から一歩踏み出し、企画や計画の段階から関わりを持つことや、ある程度の判断を委ねる等も考慮に入れた活用方策を提案していく時期になってきたのかもしれない。また、ボランティア自身が企画した催しの開催にスポーツ関係者がサポートしていくといった新たな試みも必要ではないだろうか。

今回の調査での、ボランティアの活動場所についての結果は、地元地域での活動を望んでいる会員が多いことから、生涯スポーツの推進をしていく上で重要な鍵になるコミュニティづくりと合致するのではないかと思われ、正に両者がコラボレートしながら「スポーツのあるまち・くらしづくり」を推進していくことができれば、豊かなスポーツ社会の実現に一歩近づくことができるのではないかと考える。

地域にはスポーツを行いたい人や支えたい人が多くいるはずである。その人たちがそれぞれに"あったらいいなこんな場所・こんなこと"を創造し、その実現に向け行動することが、今後のスポーツ振興に必要であろう。

その為には行政を始めとした、ボランティア活用団体が、ボランティアの特性や要望に対して、常に耳を傾けていくこと、またボランティア自身も自信と責任を持ち、双方の協力のもとにスポーツ振興を進められる体制づくりを進めていく必要があるのではないかと考える。

    *1)文部省:「スポーツにおけるボランティア活動の実態等に関する調査研究報告書」, 2000


ITを活用した学習支援教材の開発 
   ~バドミントンの学習での活用~(2年継続研究の1年次)

スポーツ情報室  日下肇  黒岩俊彦  加藤真男  三木英正

はじめに

近年の社会の急速な情報化にともない、学校教育においてもコンピュータ等を活用した学習が行われるようになってきている。

また、コンピュータや情報通信技術の飛躍的な普及・発達に伴い、ネットワークを通じて活用できる教育用デジタルコンテンツが配信されるようになり、今後さらに各教科の学習においても有効に活用されることが期待されている。

保健体育においても画像や動画を用いたコンテンツが充実しつつある中、グループや個人の目標を達成するための学習の道すじを示し、学習者ひとり一人の課題解決に重点を置いたIT教材は決して多いとはいえない。

そこで、生徒が教え合ったり学びあったりなどの関わりを促しながら、主体的に課題を見つけ、課題解決方法を考え、実践していけるよう、その学習過程に動画等の情報を活用できるようなバドミントンの学習支援教材を開発することとした。

本研究における教材作成

1  基本的なねらい

技能レベルに応じて誰でも手軽に楽しむことができるバドミントンを単元教材にとりあげ、自分やグループの課題を解決するために、効果的に情報を伝える動画を活用することで学習の内容をよりわかりやすく理解させる。また、生徒ひとり一人がデジタルコンテンツにある学習資料から自分に適した課題解決に役立つ情報を見つけられるように工夫することで、自ら学び自ら考える力の育成の支援を図る。

2  生徒の学び方

生徒は、ITを活用した学習支援教材を活用することで、問題解決の道すじを学び、目標の設定と解決の方法を理解し、動画によってイメージ化を図ることで効果的に学ぶことができる。

3  教材の構成

(1)学習過程と教材の関係

本研究は主に中学校・高等学校のバドミントンを初めて行う生徒が、ラリーが続けられるようになるために個人技能を習得する過程を学習課題とする生徒を対象とする。

生徒はラリーが続けられるようになるために、支援教材からストロークやショットの見本となる動画を見てイメージ化し、練習する。上手くできない場合には、練習方法の動画を見て、練習をしてみる。さらに上手くできない場合には、姿勢やグリップなどの基本的な練習をすることで、個人的技能を高めていくことができると考えた。

(2)基本技能の区分

 技術練習においてバドミントンの基本技能の区分を次のようにした。

 ア レシーブ時とシャトルを打つ時の基本姿勢
 イ フットワーク
 ウ フォアハンドとバックハンドのラケットの握り方
 エ ラケットの振り方
 オ 5つのストローク
 カ 10のショット
 キ サービス

(3)動画作成の問題点

基本技術の各区分に見本、練習方法、解消法等を項目として設定することで、見本を見ることでイメージをつくることができ、練習方法から自分が身につけたい技術の練習方法を探し出せる。また、解消法からは自分が持っている技術課題に近い項目を参考にすることで、自分の課題を効果的に解決することができる。

以上のことから、バトミントンの基本技術のすべてを見せるコンテンツ内容となるが、それに必要となる動画の数は約350本となる。共通に活用できるものを省いても200本を超える動画を撮影する必要があり、撮影した動画をコンテンツとして加工するには膨大な時間がかかる。また、各学校でコンテンツを活用する際にはCD1枚に収めたほうが活用しやすいと考え、動画の数を少なくする必要が課題として出てしまった。

(4)教材の再構成

再構成にあたり、生徒がさまざまなゲームを行うなかで行ってみたいと思うことを学習課題とし、その課題解決の道すじを示す内容とすることで、学習において自ら目標設定、課題発見、課題解決の方法の理解と成果の確認ができる学習支援教材とした。

(5)構成の検討

バドミントンのゲームの特性を考えると、学習指導要領ではバドミントンの特性を「バドミントンでは、ネットをはさんでラケットでシャトルを打ち合い得点をすることを競うネット型のゲーム」としている。このことを踏まえバドミントンのゲームを成立させるためには、次のような戦略が考えられる。

 ア 対戦相手がエラーするまでラリーを続ける。
 イ 対戦相手に自分の弱点を攻められないようにする。
 ウ 対戦相手の弱点を集中的に攻める。
 エ 対戦相手にプレッシャーを与えるようなショットを継続して打つ。
 オ 対戦相手の得意なショットを拾って自滅させる。
 カ 対戦相手の脚を瞬間的に止め、反応時間(動くスピード)を遅らせる。
 キ 対戦相手の反応時間を遅らせるために、いろいろなショットを打つ。

(6)再構成後の動画数

各戦略を目標と考え、その目標に対してそれぞれ課題を設定し、その課題を解決するための練習内容に必要となる動画コンテンツの数は約100本に収めることができた。

まとめと今後の課題

本研究では、ITを活用したデジタル動画コンテンツの効果を先行事例等から研究し、効果があることがわかった。

また、現在、教育の情報化がすすめられる中、子どものIT活用能力の向上とIT環境の整備が進められ、情報を集める力は高まっている。集めた情報を活用する能力には、自ら実践する中で、問題を発見し、解決することが重要な力であることを理解する必要がある。

教諭および生徒が使いやすいプレゼンテーションソフトを使用することにより、課題解決の道すじを学ぶことができるとともに、その過程での目標設定と具体の解決方法についての理解を、動画によるイメージ化を図ることでより効果的に学ぶことができると考え、このような動画コンテンツの開発計画となった。

したがって、当初の計画ではバドミントンの技術をすべて「見せる」ことができればより充実した学習支援教材となり、より豊かな学習資料となると考え計画したが、作成する作業量と各学校のハードウエアの整備状況から判断し、構成等を実用化に向け大幅に変更する状況が生じた。

さらに、この学習支援教材を活用した指導法については次のような点についての論理的研究が今後必要であると考える。(1)技術の発展段階(2)課題を解決し技術を向上させるプロセスに学習者に何を「気づかせる」か(3)課題解決の道すじをどこまで示す必要があるか(4)学習計画のどの場面でどのように活用するか等。

さらにPCの小さな画面で見た場合とプロジェクタを利用して大画面で見た場合の違いがどの程度学習効果に違いが生じるか等の研究も必要である。

コンテンツ画面

図1生徒の学び方


健康によい生活の仕方を選択する力を育てる保健学習の展開 ~実験・実習などの体験的活動や身近な人たちとのかかわりを通して~

藤沢市立湘南台小学校  宮本 一也

はじめに

成人の生活習慣の多様化に伴い、児童の生活にも様々な影響が及び、今では児童の5人に1人が生活習慣病の予備軍だと言われている。また、すぐ疲れる、元気が出ないなど半健康といった状態についても懸念されている。

本校の3年生についても実施したアンケートから同様のことが懸念され、3年生というこの時期に、自分の生活に興味関心をもち、正しい生活の仕方を適切に選ぶことができるようになるための保健学習が必要であると考えた。

しかし、3年生のほとんどは、健康を考えた生活の仕方ということを意識できない年齢にある。そのため、まずは自分の生活には健康によいものとよくないものがあることを明確にする必要がある。そして、児童一人ひとりが自分の生活を見直すことで、健康によい生活の仕方を適切に選択し、自分の生活に活かすといった意志決定や行動選択ができる基礎的能力、つまり、心身の健康の保持増進に役立つ実践力の習得につながると考えた。

また、保健学習における実践力の育成には「生きる力」を育むための創造的な学習指導の展開が求められていることから、自分の生活に興味関心がもてるような、実験・実習などの体験的活動や自分の生活を支える身近な人たちとのかかわりのある活動を保健学習に取り入れることによって、健康によい生活の仕方を選択する力が身に付くのではないかと考え、本主題を設定した。

研究の仮説

保健学習において、自分の生活に興味関心をもつことができるような、実験・実習などの体験的活動や自分の生活を支える身近な人たちとのかかわりのある活動を取り入れることによって、自分にとって健康によい生活の仕方を選択する力が身に付く。

検証授業の実際

1  期間

平成17年10月21日(金曜日)~11月8日(火曜日)   4時間扱い

2  場所

藤沢市立湘南台小学校

3  対象

第3学年3組(35名)

4  単元名

保健領域「毎日の生活と健康」

5  単元のねらい

(1)「1日の生活の仕方」、「身の回りの清潔や生活環境」、「自分の健康を支える様々な保健活動」について、実験・実習や教師、友だちからのアドバイス、学習資料をもとに、課題に関して調べようとする。

(2)「1日の生活の仕方」、「身の回りの清潔や生活環境」、「自分の健康を支える様々な保健活動」について、課題を見つけたり、自分にとって健康によい生活の仕方を選んだりすることができるようにする。

(3)「1日の生活の仕方」、「身の回りの清潔や生活環境」、「自分の健康を支える様々な保健活動」について、実践的に理解し、健康に過ごすための生活の仕方を言ったり、書き出したりすることができるようにする。

6  学習の内容

活動名及び活動の展開
図:スライド紙芝居 

第1校時「1日の生活」

 スライド紙芝居を使用したケーススタディーのような活動によって、登場人物である健康によい生活行動をする「まあくん」と健康によくない生活行動をする「かあくん」を生活場面ごとに見比べ、どちらの生活がよいかを考える。また、自分の生活を振り返り、自分の生活にあてはめて考える。

第2校時「体の清潔」

 1時間目の学習から見つけた自分の生活における問題点をもとにして、「手洗い実習」「洗顔実習」「歯みがき実習」「汗の染め出し実験」の4グループに分かれて課題別に活動する。各課題にはゲストティーチャー(保護者、歯科衛生士、養護教諭)が付き、ゲストティーチャーのもつ専門的・経験的立場による指導のもと学習を行う。それぞれの実験・実習を通して、毎日を健康に過ごすために必要な体を清潔にする方法を学ぶ。

第3校時「室内の空気や明るさと健康」

 照明器具を利用したほこりの量や動きの観察や、教室の模型やほこりの顕微鏡写真の使用など、養護教諭とのティームティーチングの特性を活かした説明などから、換気の必要性について考える。また、照明器具やカーテンの開閉を利用した、明るさの調節について学習する。

第4校時「健康な生活と健康を守る活動」

 学校では保健室の活動をはじめ様々な保健活動が行われていることを水道や机などの具体物・写真から気付く。また、単元のまとめとして、スライド紙芝居を使用したミニテストを行い、自分にとって、健康によい生活の仕方を選ぶ。

 

結果と考察

1  生活行動に関する正しい知識をもつことができたか

学習で使用した振り返り時の○×問題の正答率が高かったことや、表1のようにワークシートやまとめミニテストなどの記述問題について、学習した内容をもとにした解答が多くあったこと、授業中においても学習した内容を理解していると見られる言動が多くあったことから、自分の生活を支える身近な人たちとのかかわりや実験・実習などの体験的活動のある学習によって、生活行動に関する正しい知識をもつことができたと考える。

表1 学習内容を理解していると見られる記述、言動

ワークシートなどにみられた記述内容・手や下着が汚れると、自分の健康によくないから
  (2時間目振り返りカードより)。
・しっかり朝ごはんを食べたから元気だし運動しやすくなる
  (4時間目まとめミニテストより)。
授業中の言動・生活リズムがよいのは「まあくん」だ
  (1時間目スライド紙芝居の学習より)。
・実習でおぼえた手や顔の洗い方を友だちに説明する姿
  (2時間目課題別学習より)。
・入り口から空気が入って、窓から出て行くんだ
  (3時間目換気の学習より)。

 

2  自分の生活を見直すことができたか

(1)健康によい生活行動と自分の生活を比べることができたか。

表2は1時間目、2時間目のワークシートの記述例である。スライド紙芝居で学習した、健康によい生活の仕方と自分の生活の仕方を比べた結果から、課題別学習の選択を行っていたことがわかる記述や、実験・実習を通して気付いた自分の生活の仕方との相違点に関する記述が多く見受けられた。

表2 健康によい生活の仕方と自分の生活の仕方を比べていると見られる記述

また、毎時間の授業の様子からも同様の言動が多く見られたことから、健康によい生活行動と自分の生活を比べることができたと考える。

(2)健康によい生活の仕方か考えることができたか

ミニテストの選択問題において、ほとんどの児童が問題の内容を理解し、適切に解答していることがわかった。また、教師が設定した正答に近い答え方をしている児童が多いことから、正しい生活行動に関する知識をもとに考えていることがわかった。

事前・事後アンケート(全11項目、事前・事後とも同じ質問内容)の結果からは、正答率が平均で4%上昇していることがわかった。

また、2時間目に行った課題別に見ると手洗い実習で数値に変化がなかった以外、各課題に関する問題の正答率は上がっていることがわかった。

よって、健康によい生活の仕方について考えることができたと思われる。また、(1)(2)から自分の生活を支える身近な人たちとのかかわりや実験・実習などの体験的活動のある学習によって、自分の生活を見直すことができたと考える。

以上の結果から、自分の生活を支える身近な人たちとのかかわりや実験・実習などの体験的活動のある学習によって、「健康によい生活の仕方を選択することができた」ことがわかり、仮説の有効性が明らかになったと考える。

まとめ

1  研究の成果

(1)学習後の児童の変化

(2)養護教諭との共通理解の必要性・重要性

(3)保護者、家庭における保健学習の効果

2  今後の課題

(1)評価規準の「思考・判断」の見取り方

(2)第3学年の保健学習の計画

(3)家庭での実践化・習慣化に向けて

特に(3)について、家庭生活に着目すると、学習直後において、学んだことを家庭で実践するなど、生活に変化がみられた児童の割合は高く、全体の55%を占めていた。しかし、1ヵ月後はその半数(全体の27%)に減少し、保健学習による健康によい生活の仕方を選択する力の実践化・習慣化は全体の4分の1にとどまったことがわかった。この割合を上げるためには、〔1〕保健指導、他教科とのかかわりの重視、〔2〕学習を行う時期、方法の工夫、〔3〕家庭との連携が図れる工夫というような事がらを、今後の課題(1)(2)や研究の成果をもとにして考え、構築し、よりよい保健学習の展開を目指す必要があると感じる。

参考文献

1)長柄克彦「保健の授業」『新学習指導要領による小学校保健学習の授業第3学年』大修館書店 2000年

2)戸田芳雄「考える力、表現する力を育て[生きる力]を育む体育科学習指導の創造的展開」『初等教育資料』  (株)東洋館出版社 2005年


体力を高める運動の効果的な体の使い方を育む学習
 ~体の中心部・軸(コア)の状態に着目し、正しい姿勢と動作で取り組む学習を通して~

平塚市立中原中学校  木村 典子

はじめに

体力を高める運動の学習では、体力とより良い動きができる体を育てるために、体の動かし方とその工夫の仕方をねらいとした実践が求められている。こうした体の動かし方において、動きに入る前の姿勢のとり方や動作中の体の使い方、動作の安定が、力を発揮する上で重要であり、個々の関節や筋群をリラックスさせた状態で、いつでも動き出せる姿勢をとること1)や、不安定な姿勢を正しい姿勢の位置に戻したり修正したりする体の使い方で行う必要があると言われている2)。

しかし、本校生徒の腕立て伏せや馬跳びなどをみると、動きはじめる準備はしていても、うまく力を発揮することができず、すぐに動けない生徒が見受けられ、動きはじめからバランスを崩してしまい、不安定な状態で動いていたり、途中で止まったりするなど、運動の行い方に課題が見られた。

体力を高める運動は、成長・発達に必要な体力を高めることはもとより、運動・スポーツに親しむ身体能力の基礎を育んでいくことであり、正しい姿勢や動作に注意を払って正確に運動に取り組み、体力要素をより高めていく必要がある。

そこで、不安定な動きの状態を改善する一つの方法として注目され、また、より良い動きができる体を育てることに有効とされている中心部・軸(コア)の状態を意識して運動を行うことに着目した。

以上のことから、本研究は、中心部・軸(コア)の状態に着目し、自分の体力にあった強度で運動を行い、その運動にあった正しい姿勢と動作で体力を高める運動に取り組む学習を促すことにより、体を安定させたり、運動時の体のバランスを保持したり、十分な力を発揮することができる効果的な体の使い方を育んでいく学習を構築することを目的として、本主題を設定した。

研究の仮説

体の中心部・軸(コア)の状態に着目し、正しい姿勢と動作で取り組む学習を促すことによって、体力を高める運動の効果的な体の使い方を育んでいくことができる。

検証授業の実際

1  期間  平成17年10月14日(金曜日)~11月15日(火曜日)     8時間扱い

2  場所  平塚市立中原中学校

3  対象  第2学年1・2組(1組40名 2組39名 計79名)

4  単元名  体つくり運動 「体力を高める運動」

5  ねらい

運動への関心・意欲・態度  効果的な体の使い方、運動処方を設定した体力を高める運動に関心を持ち、楽しさや喜びを味わえるよう進んで取り組もうとする。また、互いに協力して運動しようとするとともに、用具の取り扱いなど安全に留意して取り組もうとする。
運動についての思考・判断  効果的な体の使い方の課題を見つけることができるようにする。また、自分の体力や健康状態に適した運動を選んだり、見つけたりできるようにする。
運動の技能  効果的な体の使い方、運動処方を設定した体力を高める運動ができる。
運動についての知識・理解  効果的な体の使い方や、運動処方を設定した体力を高める運動について、言ったり、書き出したりすることができるようにする。また体力の意義や運動の効果について理解し、言ったり、書き出したりすることができるようにする。

6  学習の道すじ

  ねらい1:体力を高める運動の正しい姿勢と動作を理解しながら運動に取り組む
  ねらい2:それぞれの運動にあった姿勢と動作で体力を高める運動に取り組む

7  単元計画

単元計画

 

8  姿勢と動作

体力を高めるための正しい姿勢と動作とは、準備姿勢として、運動を開始する前の準備段階に、関節や筋群をリラックスさせ、いつでも動き出せるバランスのとれた姿勢をとり動き始めることである。また動きの中では、動作中にその運動にあった姿勢を保って、バランスよく動くことであり、それぞれの運動に求められる体力要素を高めるための負荷に対応して動くことである。

こうした姿勢と動作について、運動の展開に対応した視点でまとめ(表1)、今回の研究の「検証の視点」として捉えていくこととした。

表1 運動の展開における正しい姿勢と動作
表1運動の展開における正しい姿勢と動作 

 

9  体力要素別実施運動の方法と効果

  今回学習していく体力を高める運動の体力要素別運動と、その具体的な方法と効果を一覧にした(表2)。

 

表2  体力要素別実施運動の方法と効果 運動名 方法と効果

 運動名方法と効果
柔軟性コア・ストレッチ・関節、筋群の解緊によってリラックスした柔らかな姿勢を生み出す
・体の左右のアンバランスの矯正をする
筋力姿勢を保持する運動
・肩のせ(4種類)
・かかとのせ
・すねのせ
・腹のせ
腕立て伏せ
腹筋運動
背筋運動
姿勢の保持
・呼吸を止めて腹圧を調整する
・体をまっすぐに保つことで筋力を高める
安定した動きと力の発揮
・呼吸をしながら腹圧を調整する
・左右のバランスを保って行うことで目的とする筋力を高める
調整力バランスを保持する運動(3種類)
・座位バランス
・ひざ立ちバランス
・うつ伏せバランス
クイックフット
ハーフツイスト
ダブルフット
姿勢の保持
・重心・軸の把握をする
安定した動きと力の発揮
・上半身と下半身のバランスを意識する
・重心線と体軸の安定性を意識する
・体軸のコントロールをする
・安定した動きにスピードをつけることで目的とする調整力を高める
持久力3コースの運動
・パワーアップ
・バランスアップ
・ライフアップ
  の3コース
継続して実施
・無駄な力が抜け、リラックスした自然な姿勢で実施する
・3分以上継続実施することで、有酸素運動として捉えることができる

 

結果と考察

1  準備姿勢をとることができたか

(1)リラックスした自然な姿勢をとることができたか

コア・ストレッチの際、リラックスした自然な姿勢をとることが「できた・まあできた」と回答した生徒は94%と非常に多く、その効果を実感し、筋肉をやわらげたり関節を緩めたりすることができた。

また、生徒の学習ノートの記述からも、「痛かった」「落ち着かなかった」など不快感覚から、痛みよりも「気持ちが良くなった」など、快感覚の内容が多くなっていることから、リラックスした自然な姿勢をとり、準備姿勢をとることができたと考える。

(2)バランスのとれた姿勢をとることができたか

姿勢を保持する運動の「肩のせ・かかとのせ・すねのせ・腹のせ」における準備段階の姿勢について相互評価をした結果を見ると、おおむねできたと評価された生徒は80%以上となり、学習が進むにしたがってできなかったと評価された生徒が減っていることから、バランスのとれた姿勢をとり、準備姿勢をとることができたと考える。

2  姿勢を保持することができたか

(1)動作中に姿勢を保つことができたか

姿勢を保持する運動の「肩のせ・かかとのせ・すねのせ・腹のせ」における姿勢の保持時間について、多くの生徒が姿勢を保持することと、保持時間を伸ばすことができた。

また、バランスを保持する運動の「座位バランス・ひざ立ちバランス・うつ伏せバランス」における姿勢の保持時間について、4秒以上保持できた生徒が増え、3秒以下の生徒が減り、動作中の姿勢を保持することができたと考える。

3  姿勢を安定させて動けたか

(1)姿勢のバランスを保ちながら動けたか

腕立て伏せ、腹筋運動、背筋運動における姿勢や、クイックフット、ハーフツイスト、ダブルフットにおける姿勢を安定させた動作について、おおむねできたと評価された生徒は90%以上となり、学習が進むにしたがってできなかった生徒が減っていることから、姿勢のバランスを保ちながら動き、安定させて動くことができたと考える。

4  安定した姿勢で力を発揮することができたか

(1)姿勢のバランスを保ちながら実施回数を増やすこと ができたか

バランスボールを使った腕立て伏せ・腹筋運動・背筋運動や、用具を使ったクイックフット・ハーフツイスト・ダブルフットにおいて、15秒間のうち、実施者が安定した姿勢で行えた回数の平均値は伸びており、姿勢のバランスを保って力を発揮することができたと考える。

まとめ

1  研究の成果

中心部・軸(コア)の状態に着目し、学習資料や教具を活用しながら正しい姿勢と動作で取り組む学習を促すことが、筋力・調整力などの体力要素をより高めていくことができる効果的な体の使い方を育むことに有効であることが明らかになった。

2  今後の課題

(1)学習資料の内容の精選と明確化や、視覚的効果の強調

(2)姿勢と動作を意識できる運動内容と、的確な行い方

(3)興味・関心の持てる教具の工夫と、的確な活用法

参考文献

1)小林寛道  『ランニングパフォーマンスを高める スポーツ動作の創造』杏林書院H13,11,

2)小林敬和・山本利春  『ボディバランスを獲得する スタビライゼーション』山海堂 H15,9,

 


個人技術を身に付け、個人戦術の力を高めるハンドボール学習
 ~技能レベルの高い異学年生徒との関わりを通して~

県立荏田高等学校  服部 雅典

キーワード:個人技術、個人戦術、異学年連携

はじめに

高等学校のハンドボールの授業において目指す内容は、ゴール型のゲームの特性を理解し、集団的技能や個人的技能を活用して、学習段階に応じた作戦を立ててゲームができるようにすることである。そのためには、個人技術を身に付け、さらにゲームの中で、個人技術を選択する個人戦術の力を高める必要がある。

しかし、本校授業のゲームを振り返ってみると、個人的技能が高い生徒同士がボールの占有をしてしまう場面が多く見られ、全員が個人戦術の力を高められず、グループ・チーム戦術の学習につなげることが困難になっているのではないかと思われる。

これらの現状を効果的に解決するための方法として、異学年連携に着目し、1年生と技能レベルの高い体育コース3年生「スポーツ2(球技)」と関わりを持って学習を展開していくことを考えた。

研究の仮説

単元の前半で個人技術を身に付けるゲーム、単元の後半で個人戦術の力を高めるゲームを中心とした学習を行い、これらの学習段階の初期に技能レベルの高い異学年の生徒が関わることにより、個人技術を身に付け、個人戦術の力を高めることができる。

検証授業の実際

1  期間  平成17年9月26日(月曜日)~11月14日(月曜日)16時間

2  場所  荏田高等学校ハンドボールコート(雨天時体育館)

3  対象  第1学年5・6組(41名)

4  単元名  球技「ハンドボール」

5  単元目標

関心・意欲・態度  ハンドボールの基礎技術では相手の動きに応じて自己の動きを選択することに着目し、楽しさや喜びを味わえるよう進んで取り組もうとする。また、チームにおける自己の役割を自覚して、その責任を果たし、互いに協力して練習やゲームができるようにするとともに、勝敗に対して公正な態度がとれるようにする。さらに、練習場などの安全を確かめ、健康・安全に留意して練習やゲームをしようとする。
思考判断  チームや自己の能力に応じた課題を設定し、その解決のために練習方法を工夫できるようにする。
技能  個人技術・オフェンス・ディフェンスのバリエーションを増やし、相手の動きに応じた技能を高め、ゲームができるようにする。
知識・理解  ハンドボールに必要な基礎技術や、オフェンス・ディフェンスの技術について相手の動きに応じた動き方を言ったり書き出したりできるようにする。また、そのための練習の仕方や、ルールについて言ったり、書き出したりできるようにする。
 

6  学習の道すじ

学習の道すじ 

7  異学年生徒との関わり方

(1)異学年生徒の模範ゲームを見ながら、教師の解説を聞いたり、三角パスゲーム等の模範を見たりする。

(2)「個人技術を習得する」「個人戦術を高める」ことに関する要素について、異学年生徒からゲーム中やゲーム後にアドバイスを受ける。

(3)異学年生徒が三角パスゲーム等や3ゾーンゲーム等に加わり、一緒に活動する。

結果と考察

1  異学年生徒との関わりが、個人技術を身に付ける学習の支援となったか

(1)「移動しながらのキャッチ・パス」「移動するための技術」に関する課題を捉えることができたか

4時間目に異学年生徒から受けたアドバイスの数と記述された課題を学習ノートから拾い出し、個人技術の要素別に集計したところ、アドバイスを基にそれぞれの要素の項目において、多くの課題を設定していた。

(2)「移動しながらのキャッチ・パス」ができたか

6~8時間目の三角パスゲームにおける、「投球数に対して相手の移動に合わせてパスを出すことができた回数の割合の推移」を見ると、時間を追うごとに全体平均の割合が高くなった。また、体育授業以外の場で球技経験が無く、球技について不得意と思っている着目生徒3人の平均も、全体平均を追うようにその差を縮めた。

これらの技能の高まりに異学年生徒の支援が有効であったことが、着目生徒の6~8時間目の学習ノートに記述された課題の質的な高まりと、これらの課題が4時間目に異学年生徒から受けたアドバイス内容に関連していたことからわかった。また、事後アンケートの結果では、95%の生徒が「アドバイスが課題を解決する上で参考になった」と答えていた。

2  異学年生徒との関わりが、個人技術を身に付ける学習の支援となったか

(1)「技術を選択」「パスが受けられるポジションを選択」に関する課題を捉えることができたか

9~12時間目までに、異学年生徒から受けたアドバイスの数と記述された課題を学習ノートから拾い出し、個人戦術の要素別に集計したところ、アドバイスに対して、それぞれの要素の項目において、多くの課題を設定していた。

(2)技術の選択ができたか(ボール保持)

9・12・14・15時間目に行ったゲームにおける、「1ゲーム中の触球数に対するプレーが成功した回数の割合の推移」を見ると、時間を追うごとに全体平均の割合が高くなった。また、着目生徒3人の平均も、全体平均を追うようにその差を縮めた。

(3)パスが受けられるポジションの選択ができたか

9・12・14・15時間目に行ったゲームにおける、「ボールを保持していない時、味方の触球数に対して味方のパスが受けられるポジションに移動することができた回数の割合の推移」を見ると、球技経験者3名の平均と未経験者(着目生徒)3名の平均は、ともに高くなった。

これらの技能の高まりに異学年生徒の支援が有効であったことが、着目生徒の9・12・14・15時間目の学習ノートに記述された課題の質的な高まりと、これらの課題が9・12時間目に異学年生徒から受けたアドバイス内容に関連していたことからわかった。また、事後アンケートの結果では、95%の生徒が「アドバイスが課題を解決する上で参考になった」と答えていた。

まとめ

1  研究の成果

以上の結果から、異学年生徒との関わりが、個人技術を身に付け、個人戦術の力を高める学習の支援に有効であったと考える。

また、今回の学習における異学年生徒との関わりの有効性について、以下にまとめた。

(1)異学年生徒の模範を見る。

  ゲームの行い方を視覚的に捉え、イメージを持たせたり、目標とする動きを見せたりすること等ができた。

(2)異学年生徒からアドバイスを受ける。

  個人に応じた課題を設定したり、ゲームの局面に応じた動き方をその場で修正したりすること等ができた。

(3)異学年生徒と一緒に活動する。

  ゲームの中で練習効果を高め、楽しさを味わわせたり、ねらいに沿った動きに導かせたりすること等ができた。

2  今後の課題

(1)異学年生徒との関わり方や教師間の協力体制等の工夫

(2)見通しを持って課題解決ができる学習資料の工夫

(3)異学年生徒と関わる学習の年間計画と時間割の工夫

参考文献

1)小澤治夫「生徒が変わる中・高校の学校体育をデザインする」『体育科教育』大修館書店2005 他

 

 

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