記憶と記録の交差路-神奈川県立公文書館へようこそ-

掲載日:2014年5月14日

公文書館外観

 神奈川県立公文書館は歴史資料として重要な行政文書、古文書等を収集・保存し、県民共有の記録遺産として後世に伝え、そしてそれらを広く公開することを目的として平成5年(1993)11月、横浜市旭区中尾に開館いたしました。

設置の経緯

公文書館が設置されるまでの関連する出来事


昭和42年(1967) 『神奈川県史』編集事業開始
昭和47年(1972) 県立文化資料館設置
昭和57年(1982) 「神奈川県の情報公開制度に関する提言」で公文書館新設の検討を提言
昭和58年(1983) 情報公開制度施行、県史編集事業終了
昭和60年(1985) 公文書等の資料管理に関する検討委員会設置
昭和62年(1987) 公文書館法公布
昭和63年(1988) 公文書館(仮称)構想懇話会設置
平成元年(1989) 公文書館(仮称)構想について(提言)
平成 3 年(1991) 建設着工
平成 5 年(1993) 公文書館開館(文化資料館廃止)

 これらの出来事のうち、最も注目すべきことは昭和57年に神奈川県情報公開推進懇話会が知事に提出した「神奈川県の情報公開制度に関する提言」です。この提言書には、情報公開制度充実のための課題として、公文書館新設の提案が含まれていました。この提案は昭和62年に公布された公文書館法に5年先行するものであり、懇話会が全国的にも早い時期から公文書館制度を情報公開制度とセットにして考えていたことを表すものでしょう。
 そして、こうした経緯から設置された公文書館は、次の6つの役割を持つことになりました。


役割

  1. 歴史資料の収集
    県の機関が作成した行政文書で、保存期間が満了したものから歴史的に重要な文書を選別し収集すること。また神奈川に関する古文書、図書等を収集すること。
  2. 歴史資料の保存
    県民共有の記録遺産として、資料を良好な保存環境において保存すること。
  3. 歴史資料の提供
    資料を広く県民の閲覧等に提供すること。
  4. 中間保管庫の運営
    県の機関が作成した行政文書で保存期間が30年及び10年のものを、作成されてから5年が経過したときに中間保管庫に収め、行政文書管理規則による保存期間満了の期日まで保管すること。
  5. 普及活動
    県民の学習ニーズに応え、歴史的に重要な行政文書、古文書等の歴史資料を後世に伝えていく重要性について県民の理解を得るため、展示、講座等を実施すること。
  6. 調査研究
    公文書館の運営に係る諸問題(行政文書の選別・収集、保存、修復、利用、電子記録の保存等)について、調査研究を行うこと。

組織

 公文書館は、神奈川県の知事部局に属し、県民局くらし県民部情報公開広聴課所管の地方組織であり、地方自治法第244条に定める公の施設です。組織の概要は次のとおりです。
(平成28年4月現在)

県組織における公文書館の位置

県組織における組織図

公文書館の組織

公文書館組織図


収集

 公文書館が行う資料収集の範囲は、歴史資料として重要な行政文書(歴史的公文書)や古文書等の記録類のほか図書・行政刊行物なども含まれます。

歴史的公文書

 公文書館条例第3条は、県の各機関(公安委員会を除く)で保存される行政文書等が保存期間を満了したときには、速やかに当該文書等を公文書館に引き渡すことを義務づけています。この規定により、公安委員会を除く県のすべての機関から文書等の引渡しが毎年行われています。(公文書館条例の改正により、平成22年度から地方独立行政法人からの引渡しも行われるようになります。)引渡しの量は年によって多少の差はありますが、文書箱で約1万箱、重量にして約150トンに及びます。
 しかし、これらの行政文書等のすべてが公文書館の書庫で保存されるのではなく、職員による評価選別を経て一部が保存されます。それは、

  • 公文書館の保存スペースに限界があること
  • 複製物及び同種同類の行政文書が複数存在すること
  • すべての行政文書が歴史資料として重要なものとは言い難いこと

 などの理由によります。

 評価選別は、偏りがなく公正かつ客観的な判断に基くものでなければなりません。そのため公文書館は開館と同時に選別基準を設け、告示として公表しました。規定方式を告示としたのは、社会環境等の変化により選別基準の見直しの必要も予想されるからですが、現状ではまだ見直しの必要はないと考えています。
 評価選別を経て残される行政文書の量は年によって違いはありますが、大体引渡し量の2から3%です。これらは整理作業を経て、公文書館の書庫で恒久的に保存されてゆきます。こうして保存される行政文書を神奈川県では「歴史的公文書」と言います。
 評価選別の後、廃棄処分が決められた行政文書等は、機密保持及び紙資源としての再生利用を目的として製紙工場において溶解処理されています。


古文書

 公文書館は歴史的公文書と共に明治時代以前の古文書や私文書も収集しています。これは公文書館が設置される以前の、神奈川県史編集事業と県立文化資料館での実績が母胎になっています。公文書館ではこれらの実績をふまえて、歴史的に重要な古文書等を幅広く収集していくことを基本にしています。
 収集の方法には、個人や団体からの寄贈、寄託及び書店からの購入の3つがあります。当館では寄贈や寄託の申し入れには常時対応していますが、市場に出回ることで散逸が懸念される古文書等については、購入にも努めています。
 当館の古文書等に関する事業のもうひとつの柱は、所在調査の実施です。現代においては再開発や都市化あるいは資料所蔵者の世代交代などによって、県内の地域に代々にわたって引き継がれてきた古文書等が、散逸してしまう可能性があります。一度散逸した古文書は、歴史資料としての価値は半減されてしまいます。そのため公文書館では開館以来継続的に県内の古文書の所在を調査し、資料の整理を行い適切な保存管理の助言を行うことに努めています。また、場合によっては資料の寄贈や寄託を申し込むこともあります。そして、調査によって得られた成果は、所在目録を作成し広く県民の皆様へ提供しています。


図書・刊行物

「神奈川県立公文書館資料購入及び複製要領」に基づき、図書・行政刊行物は次のものを収集しています。

  • アーカイブズに関する図書資料等
  • 国、地方公共団体等が作成した神奈川県の行政に関する図書資料等
  • 神奈川県域の歴史、地誌、社会、経済、文化等に関する図書資料等
  • 辞書、事典、年表、総覧、統計、資料集等の参考資料

 また、県機関が作成した行政刊行物は、すべて収集の対象にしています。新たに作成される行政刊行物は、「県政情報センター等における情報提供等かかる事務処理要領」によって、公文書館へ送付されます。そのルートに乗らないものがあれば、個々に依頼をして収集しています。図書・行政刊行物もまた、公文書や古文書と同様に県民の方の閲覧に提供するために整理され保存されています。


保存処置

 公文書館では資料保存の処置にふたつの方法がとられています。ひとつは、事前に資料の傷みや劣化を回避する方法、言い換えれば予防です。ふたつ目は、不幸にして破損や劣化が発生してしまった資料あるいは虫害に遭ってしまったものに対する方法、つまり修復です。

予防

 予防には主として次の5つの方法があります。

  1. 書庫内環境の整備書庫内の温湿度の急激な変化を避け、温度22から25度、湿度55%で管理されています。また、空調機によって粉塵を除去し、紫外線カットの蛍光灯を使用しています。
  2. 紙の劣化防止対策 明治時代以降に作られた洋紙のほとんどは酸性紙(ph.値7以下)です。酸性紙は空気に触れることで徐々に酸化し、最後は壊れてしまいます。酸性紙の酸を除去するための安価な脱酸処理装置はまだ普及していませんので、現状では劣化速度を少しでも遅くするために、中性紙で作られた保存箱や封筒に資料を収納しています。
  3. その他の劣化要因の除去 特に公文書はホッチキスや輪ゴム、金属製のクリップなどを伴ったものが多く、これらは長時間放置しておくと、ゴムの変質や錆によって紙に悪い影響を及ぼします。公文書館ではこうした輪ゴムやホッチキス、クリップ、セロテープなどを除去し、綴じなおすことを行っています。
  4. 虫害対策 燻蒸により、資料中に含まれる害虫やかび等を除去しています。定期的に外部の業者に委託しています。
  5. マイクロフィルム撮影 人が利用することにより、資料が破損したり汚れたりすることがあります。何世代にもわたって利用されてきた図書や古文書などを見ると、手の触れる部分に明瞭にその痕跡が残っていることもあります。そこで、公文書館では利用頻度の多い資料を優先してマイクロフィルム撮影し、通常はマイクロフィルムで閲覧に提供するということを行っています。明治期から昭和戦前期にかけて出版された『土地宝典』は利用頻度の多い資料群ですが、上述の観点から所蔵分についてはすべてマイクロフィルムによって複製を作り、それを提供しています。

修復

 修復はふたつの方法がとられています。

  1. リーフキャスティング
    リーフキャスティングは「漉き嵌め式」と言われ、虫食いなどによって損傷した部分を紙の繊維で補充する方法です。そのために開発された機械をリーフキャスティング・マシンと言います。欧米の公文書館では一般的に使用されていますが、日本ではまだ数台しかありません。公文書館は開館の時にこれを導入しました。これにより日本の伝統的な裏打ちとは異なった修復が可能になりました。短時間に大量の修復ができることも特徴のひとつです。
  2. その他 主に手作業による修復です。簿冊形式の公文書は長年の使用により傷んでいたり、酸性劣化が進んでいることが多く、傷んだ部分は和紙で補強し、中性紙の厚紙(AFボード)の表紙に取り替え、またホッチキス、クリップ等の金属を除去し製本し直しています。

活用

 公文書館は多くの方々に利用していただくために、データ・ベースによる目録の整備・公開(Webでの公開を含む)に努めてきました。このような基礎的な事業の上に資料の活用がありますが、活用には閲覧(レファレンス)の他、展示や古文書解読講座など所蔵資料の利用に直結した事業活動が含まれると考えています。

閲覧及びレファレンス

 閲覧は公文書館の活用の内、最も直接的なもののひとつです。閲覧室開室中は職員が常時閲覧室内にある受付に待機し、皆様のご利用をお待ちしています。閲覧室には約2万冊の図書が開架されていますので、利用される方の目的によっては開架資料で十分満足される場合もあるでしょう。その他は書庫に収蔵されていますので、受付に請求してください。
 また、レファレンスについては、閲覧室での口頭によるものの他、電話、文書、メールなどで受け付けています。問い合わせで比較的多いものは、例年古地図や土地宝典など地図に関する問い合わせです。
 公文書館における閲覧で、図書館など他の資料提供施設と根本的に異なる部分は閲覧制限に関する部分です。公文書館の所蔵資料は原則的に公開ですが、公文書館条例及び同施行規則によって閲覧が制限される場合があります。それは資料に、個人情報や法人情報等が含まれているときです。しかし、一定の時間が経過することに伴い、当該個人の死亡や情報の風化あるいは社会状況等の変化などによって、制限事由が消滅することも予想されます。こうした変化を適正に判断することは、公文書館の閲覧に関連する重要な仕事のひとつと言えるでしょう。

展示

 公文書館における展示は、公文書や古文書等の歴史資料を後世に伝えることの重要性を県民の方々に広く理解していただくために行っています。当館の展示は、基本的には次の3つのいずれかに位置付けられています。

特別展示

 開館時、周年記念などの記念事業として実施されるもので、平成25年度は、開館20周年記念特別展示を実施しました。

企画展示

 特定のテーマに基づいて、館収蔵の資料を活用して実施しています。

以上の他、ガラスケース1台分の「ミニ展示」(約2ヶ月間)や、規模の小さい「常設展示」(通年)を行っています。


講座

 当館の収蔵する記録遺産には、くずし字や候文(そうろうぶん)で書かれたものがたくさんあります。くずし字や候文で書かれたものは古文書のみならず戦前の歴史的公文書や私文書にも数多く見られます。そのため、当館ではそうした資料を読んで理解できるよう、古文書を主な素材として解読講座を開催しています。
 古文書解読講座は、はじめて講座、基礎講座、応用講座の3種類で構成されていますが、毎回定員を上回る応募があり、抽選で参加者を決めさせていただいています。
 こうした講座の修了者の中には自主的にグループを作り古文書解読の学習を継続されている方々もいます。公文書館が生涯学習の場として理解されつつあることを示すものでしょう。
 さらに、平成23年度からは、当館の業務内容や公文書館制度について具体例を交えて分かりやすくお話しするアーカイブズ講座を、平成26年度からは県内各地を巡回して開催する県立公文書館出張講座をそれぞれ開設しました。

以上、神奈川県立公文書館の仕事を紹介いたしました。皆様のご利用を、職員一同お待ち申し上げております。

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神奈川県

このページの所管所属は 公文書館 です。