公文書館だより 30号(P1からP5まで)

掲載日:2013年12月21日

20年の変わらぬ決意

県のたより

                                             県のたより(平成5年11月号より)

上の写真は、公文書館の開館を伝えた当時の県の広報紙「県のたより」です。開館当時46万点であった収蔵資料はこの20年で70万点を超え、これまでに多くの方にご利用いただいてきました。また各種の講座や展示を開催するなかで、神奈川の歴史の諸相に光を当ててきました。今後もこうした活動を通して、資料の収集・保存・活用に取り組んでまいります。

「神奈川の過去は県民共通の遺産。公文書館では、開かれた県政の一翼を担って、収蔵資料を広く公開しながら、この私たちの遺産を親から子へ、そして孫へと大切に伝えていきます」――この記事の最後に記された開館時の決意は、20年を経た現在、そして将来においても変わることはありません。

収蔵資料から見る神奈川の歴史  検証・過去の震災記録

今年は関東地震から90年目を迎え、県内でも地震に関連する様々なイベントが行われています。当館でも8月17日まで、「検証・過去の震災記録」と題して、神奈川県下で発生した1498年の明応地震、1703年の元禄地震、1853年の嘉永地震、1923年の関東地震(関東大震災)、1930年の北伊豆地震に関連する展示を行いました。ここではこの展示資料の中から嘉永地震と関東地震を中心に当時の様子を紹介します。

嘉永地震と小田原藩領の人々

嘉永地震は1853(嘉永6)年2月2日、小田原を中心に発生したマグニチュード6.7の直下型地震です。この地震は、小田原藩領の村々に大きな被害を与えました。

小田原藩は地震発生直後から村々に対して金や米の貸付を実施しましたが、復興は村の自助努力に任されることになりました。

このような中で、藩主大久保忠愨(おおくぼただなお)は、藩主御手許金(おてもときん)の内から500両を、さらに小田原の名産である梅干しを領民に与えました。下の写真は足柄上郡金子村(現在の大井町)の名主であった間宮若三郎が、村内に配布した「殿様梅干」の数を書き記したものです。この梅干しの味は、どのようなものだったのでしょうか。味わってみたいものです。

 殿様梅干

  「殿様梅干頂戴壱人別割府帳」当館寄託間宮家文書2200437767 

関東地震と人々の営み

1923(大正12)年の関東地震は、東京をはじめ神奈川県全域に甚大な被害をもたらしました。ここでは当時作成された公文書や私文書などの記録類から、この「未曽有」の災害を振り返っていきます。 

焼け残った建物

地震発生直後に横浜市街で発生した火災により県庁は焼失しました。しかし、その中で難を逃れた建物が海外渡航者検査所です。ここに火の手が迫った時、中にいた職員は窓をすべて閉めて、避難しました。職員の機転により、結果的に焼失を免れたのです。この建物は、臨時県庁舎として利用され、震災復興の拠点となりました。

海外渡航者検査所       臨時県庁舎となった海外渡航者検査所 

被災者への配給と炊き出し

県や市町村にとって、地震で家財を失った被災者の救助は、大きな課題でした。田島町役場(現在の川崎市川崎区)は、震災直後から白米や玄米などを炊き出し、副食として漬物と梅干しを配給しました。下の写真は、この数量を書き記したものです。

庶務書類震災無償配給  大正12年「庶務書類震災無償配給」郡2-7 

人名救助者の表彰  

県は各郡市長に対し、震災で人命救助などを行った「特行者」を表彰するよう通知しました。下の写真は、逗子町役場が作成した調書で、救助時の状況と対応について詳しく記しています。

震災関係  大正14から15年度「震災関係」郡4-14 

ここまでに紹介した事柄は、当館が所蔵する郡役所文書に記されています。この文書は、1926(大正15)年の郡役所廃止や、終戦後の文書焼却により、149冊ほどしかありません。しかし、関東地震関係の文書はその中でもよく残されており、非常時における郡役所と町村役場の対応を知る上で貴重な史料となっています。

復興と山下公園

関東地震で壊滅的な打撃をうけた横浜市は、新たな都市計画を進めました。現在人々の憩いの場となっている山下公園は、その時に震災がれきを埋め立て造成したものです。

下の写真は、山下公園建設当時の護岸工事にともなう図面で、県の横浜川崎治水事務所が当館に引き継いだものです。

 山下町  山下町(公園脇)浚渫工事設計図 H22-307-05

 

小塩八郎右衛門の震災体験

当時神奈川県農工銀行の頭取を務めていた小塩八郎右衛門は、地震当日の様子を克明に記録しています。彼は電車に乗っている最中に被災しましたが、農工銀行内の様子や、街の風景なども記録され、当日の様子を知ることができる大変貴重な史料です。

 大地震之記   「大地震之記」小塩家文書2199606158

 

今に生きる教訓

震災に際して、様々な人々が自分の体験や教訓を書き残しています。当時大綱村(現在の横浜市港北区綱島)に住んでいた飯田快三もその一人です。

彼は「大正大震災大火災ノ号」の中で今回の地震で得た経験を次のようにまとめています。

1 地震が発生したら下から2階にあがること。

2 海辺にいる場合は、津波を避けるために「山ノ手」(高台)に逃げること。

3 家の構造を強化するために「筋違(筋交い)」を入れること(下図)。

 これらの教訓は現在にも通じるものであります。

 震災の教訓    「震災の教訓」当館寄託飯田家文書2200710399

 

もうひとつの大震災(北伊豆地震)

1930(昭和5)年11月26日に発生した北伊豆地震は、伊豆半島北部を震源とし、静岡県および神奈川県西部に大きな揺れをもたらしました。

関東地震の影に隠れがちですが、神奈川県でも箱根や湯河原周辺が甚大な被害をうけました。下の地図は被害箇所を示したもので、被害が県西部に集中していることがわかります。

 県管内図     「神奈川県管内図」県各課1-2-41

 

震災の記憶

最後にご紹介するのは、震災発生より50年後に作成された一枚の絵図です。

作者の内田一正氏は、根府川で10歳の時に関東地震による山津波(土石流)に遭遇しました。大洞山の崩落により生じた土砂は、白糸川流域をわずか5分で滑り降り、彼が住んでいた集落の大部分が埋没してしまいました。内田氏は県に土木対策の必要性を訴えるためにこの図を作成しました。関東地震のことを知る人は現在少なくなってきていますが、記録は色あせることなく永遠に過去の出来事を伝えてくれます。

根府川  

「根府川白糸川山津波図面」 内田昭光氏寄贈資料 2200700211

 

このように、当館が収蔵する公文書や古文書・私文書、行政刊行物を活用することで、様々な角度からひとつの出来事を描き出すことができます。

これらの史料は、現在閲覧室でご覧いただくことができます。ぜひご利用ください。

 

 公文書館20年のあゆみ

平成5年度

 開館時  開館時の公文書館

11月1日 設立

11月5日 開館記念式典
11月6日 開館
11月6日 開館記念講演会(永井路子氏)
11月6日 開館記念特別展示
11月13日 開館記念講演会(金原左門氏)
11月26日 第1回運営協議会開催
2月27日 「古文書解読入門講座」開始

記念講演 永井氏     入門講座

第1回古文書解読入門講座                       開館記念講演会  永井路子氏

平成6年度

5月29日 「古文書解読講座(中級編)」開始
6月21日 「公文書館事業庁内説明会」開始
9月17日 開館1周年記念展示
10月19日 第20回全史料協全国大会を共催

全史料協   第20回全国歴史資料保存利用機関運営協議会全国大会

平成7年度

10月29日 「古文書解読講座(上級編)」開始

平成8年度

3月23日 「古文書解読入門一日講座」開始

平成9年度

4月1日 所管が県民総務室から県政情報室に移管
11月    『公文書館紀要』(創刊号)発行

平成10年度

10月27日 開館5周年記念展示
10月28日 清子内親王殿下お成り
11月1日 開館5周年記念講演会(竹内誠氏・五味文彦氏)

清子内親王   清子内親王殿下お成り

平成11年度

6月1日 所管が県政情報室から広報県民課に移管
9月5日 歴史的公文書の一部閲覧制限処分に対する行政不服審査法の審査請求
9月    緊急地域雇用特別交付金事業開始(16年度まで)

平成12年度

3月   公文書館運営協議会廃止
3月   ホームページを開設

平成13年度

3月   ホームページでの資料検索サービスを開始

平成14年度

3月   歴史的公文書目録データ入力システム導入

平成15年度

8月5日  ミニ展示開始
11月1日 開館10周年記念特別展示
11月1日 開館10周年記念講演会(五味文彦氏)

10周年  開館10周年記念講演会  五味文彦氏

平成16年度

4月16日 常設展示開始

平成17年度

1月   新資料検索システム引渡し

平成19年度

4月28日 昭和の日記念講演会(金原左門氏)

平成20年度

4月1日  所管が広報県民課から情報公開課に移管
4月27日 昭和の日記念講演会(天川晃氏)

平成21年度

4月1日  行政資料課・郷土資料課を廃し、資料課を置く
6月7日  開港・開国150周年メモリアルイベント講演会(奥田晴樹氏)
7月      緊急雇用創出事業臨時特例基金事業開始(25年度まで)
10月31日 放送大学面接授業開始(24年度まで)

放送大学  放送大学面接授業(平成24年度)

平成22年度

3月11日 東日本大震災による停電で、午後臨時閉館

平成23年度

7月16日 アーカイブズ入門講座開始
10月1日 岩手県陸前高田市被災公文書レスキュー作業開始
3月    神奈川デジタルアーカイブを開始
3月    マリア・ルス号事件の大旆2旒を県立図書館に移管

レスキュー  被災公文書レスキュー作業

平成24年度

10月27日 アーカイブズ出張講座実施
2月15日 県立図書館との合同展示開催

平成25年度

4月1日 所管が県民局情報公開課から政策局総務室に移管

 

  
データで見る公文書館の20年  公文書館利用者数、収蔵資料数、レファレンス件数 [PDFファイル/127KB] 

 


 

 

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