公文書館だより第27号

掲載日:2012年8月8日

 

スタートします! 「神奈川デジタルアーカイブ」

インターネットで図書館の資料も

  当館では、これまで所蔵資料のうち利用頻度が高く貴重な資料の電子画像は、館内でのみ閲覧いただいておりましたが、本年3月からは、インターネットからでもご覧いただけます。さらにこの「神奈川デジタルアーカイブ」では、当館資料のほか、県立図書館の目録類や浮世絵等の電子画像も合わせてご覧いただけるようになります。

 「神奈川デジタルアーカイブ」で公開予定の当館の資料は、次の通りです。

1 土地宝典

主に昭和初期に発行された地図帳の一種であり、当時の公図や土地台帳等を元に編集されているため、戦前の土地の権利関係を知る上で貴重な資料になっています。

2 古文書・私文書

◆山口コレクション

山口八十八(やそはち)氏が収集した坂本龍馬、勝海舟、吉田松陰、伊藤博文、大久保利通、西郷隆盛など幕末・維新期の重要人物の書簡類です。

◆中世諸家文書

室町幕府や戦国大名による領国経営等に関する文書や書簡類です。後北条氏の虎朱印状などがあります。

◆神奈川宿本陣石井家文書

東海道神奈川宿の本陣であり、名主をつとめた石井家の文書です。大名・旗本が宿泊するための諸様式や取り決め、宿泊帳、検地帳、江戸湾の漁業資料等があります。                                                                                                                                   

3 戦前期公文書

◆郡役所文書

明治から大正末まで町村の監督や調整などを行っていた「郡役所」が作成した公文書の綴りです。

◆県会・参事会文書

戦前に設置されていた県会、参事会に提出された予算案などの議案の綴りです。

また、県立図書館の資料としては、「横浜絵・開化絵」、「神奈川の東海道」、「飯田九一文庫の百人」、「電子版戦時文庫目録」、「入門グレートブックス」、「グレートワークスの世界」を公開いたします。

皆様のご利用をお待ちしております。

虎朱印状  虎朱印状『中世諸家文書』資料ID=2200930302    


企画展示

「争論―裁許状にみる村の争い―」     開催期間:1月25日から3月25日

今回の展示では、神奈川県内の村々に残る争論(裁判)の記録から、当時の人々の暮らしがどのように守られていたのか、また彼らが自分たちの暮らしを守るために何を訴えたかったのかを探り、その実像に迫ります。

下の絵図は松本村(横浜市港南区)金子家文書のうち「青木堰土取場争論絵図(部分)」です。青木堰は最戸・久保(横浜市港南区)・弘明寺・中里・別所(同南区)の五か村が田畑を灌漑するために、大岡川から用水路に水を引き込む取水口でした。

絵図の中央部分、崖のように見える場所が論所(ろんしょ=争いになった場所)で、最戸村などが堰の普請(ふしん=土木工事)のために松本村の入会地(いりあいち=複数の村が共同で利用している土地)から勝手に土取(つちとり)をしているとして、奉行所(ぶぎょうしょ)へ訴えました。この争いは奉行所の裁許(さいきょ=判決)を待たずに内済(ないさい=和解)となりました。この争いの経過はぜひ、直接文書をご覧になってください。 

松本村金子家文書  松本村金子家文書(寄託) 絵図1                                                   

 下の絵図は谷ケ村(山北町)武尾家文書のうち「谷ケ村・川西村境争論裁許絵図」です。谷ケ村と川西村は酒匂川・御厨(鮎沢)川を挟んで村境を接しています。絵図中央の河原が今回の争論の 論所となった河原です。川西村の訴状によると地震で川の流れが変わった所に谷ケ村が新田を仕立てたので抗議をしたとあります。

この争論は双方の言い分が全く異なり妥協案が見出せなかったため、小田原藩は目付2人と郡奉行(こおりぶぎょう)、代官を現地に派遣し、論所の計測を行ったうえで境を定めました。この時作成されたのが右の絵図です。河原の中央部分に墨引きがあり、ここを境として北が川西村分、南が谷ケ村分です。

谷ケ村武尾家文書     谷ケ村武尾家文書(寄託) 追加134                                                         

                                                 

このほか、幕末期最大の地境争論で甲斐(山梨)・相模(神奈川)・駿河(静岡)三か国の国境をめぐる争論(現在の県境が確定)や、神奈川県域最大の入会争論である青根山(相模原市域)入会争論、江戸中期から明治初期まで続く内湾(東京湾)の漁場争論(下写真)など10件の争論を紹介しています。ご来館の上、ぜひ争論の世界を堪能してください。

 森公田村浜田家文書 村政2の画像 森公田村浜田家文書 村政2


展示終了後も当館閲覧室で実物の絵図がご覧いただけます。

絵図のところの記号〔例・追加134〕は、当館の請求記号です。

          

収蔵資料紹介

関東大震災で脱線した貨物列車 

脱線した貨物列車  『大正十二年関東大地震震害調査報告』第二巻(K453‐0‐24)

大正12(1923)年9月1日、関東大震災が発生しました。地震直前、第602貨物列車は東海道本線下曽我・松田間(小田原市ほか、現在のJR御殿場線)を上り方面に向かって走行していましたが、昼の地震で先頭機関車1両が脱線し、路肩に傾いて停車しました。

土木学会は震災の翌年1月に震害調査会を設け、各部門の委員会に専門の学者を集め、調査を始めました。委員は被災地の被害状況を詳細に調査しました。報告書は同15年から昭和2(1927)年にかけて3冊出されました。これには解説のほか、くわしい図面や地図がつけられ、多くの写真とともに震災の爪あとを今に伝えています。 

上の写真はその中の一枚ですが、他の本や資料にあたると貨物列車について多くのことがわかってきます。

当時、下曽我村に住んでいた作家尾崎一雄は、当日、上り列車の走行音が非常に大きかったことを覚えていました。この区間の上り列車は下り勾配を勢いよく走り、西風が吹けばもっと大きく聞こえるところで、「余程重い荷物を積んだ貨物列車に違いない」けれども、それでも大きな音だったと回想しています(「曽我のうつりかはり」『神奈川県史だより』各論編1添付、K21‐0‐3)。

また、そのとき下曽我駅に向かう貨物列車は上下線で1本ずつあり、地震でともに脱線しました。貨車の荷物は線路に散乱し、飢えた避難民が食べ物を掠奪しようとまわりに集まっていました(『下曽我田嶋郷土誌』K21‐7‐4)。


文中の記号〔例・K21‐0‐3〕は、当館の請求記号です。

 Let’ Try! こもんじょ            

この号から新規企画として、当館で保存している古文書を紹介しながら、その読み方などを解説するコーナーを始めます。当館ホームページ「古文書解読Web講座」にも掲載していますので、合わせてご覧ください。

初級1                                    

小塩家文書「人別送り」から

小塩家文書「人別送り」からの画像   

小塩家文書は、相模国大住郡戸田村(厚木市)の名主を務めた小塩家に伝来した資料群です。

今回取り上げる資料「人別(にんべつ)送り」とは、江戸時代に町人や農民などが、結婚や養子縁組、奉公などで、ある村から別の村へ移転する際に出された送籍、現在でいうところの戸籍の変更です。

では、どのようなことが書かれているのでしょうか。1行目の「表題」部分を読んでみましょう。

タイトル

 1文字目の送は「送」。楷書とほとんど同じなのでわかりやすいでしょう。

 2文字目のり は「リ」、送り仮名です。江戸時代の文章は、送り仮名にカタカナが用いられています。

 3文字目の一は「一」。

 次の札は「札」、部首である“きへん”はよく目にしますが、楷書の“てへん”に似た形になっています。

 5文字目の之は「之」で、次の字に筆が続くために縦長になっています。

 最後の事は「事」で楷書と書き順は同じであることがわかります。

以上で「送リ一札之事(おくりいっさつのこと)」と読み、「一つ書類を送る」といった表題が書かれています。

この文書では、移転元の村の名主から移転先の村の名主に対し、移転先の宗門人別改帳(しゅうもんにんべつあらためちょう=現在の戸籍から削除したので、移転先の人別帳に記載することを依頼しています。

 

活動中!被災公文書レスキュー

本紙第26号に掲載しました「レスキュー事業」のその後の活動についてご紹介します。

クリスマスを前にした昨年12月20日から22日に、震災後初めての冬を迎える陸前高田市の旧矢作小学校を再訪しました。同校の教室に仮置きしてある市の被災公文書を、永年保存文書を中心に400冊お預かりするとともに、先の訪問(10月18日から21日)でお借りした400冊の内、修復の完了した137冊を第1回分として返却するのが今回の訪問の目的でした。

折しも12月21日には陸前高田市議会で復興の青写真とも言うべき「震災復興計画案」が全会一致で可決されました。当館のレスキュー事業も、具体的な復興に歩を進める陸前高田市への側面支援になればと願うばかりです。

また、「東京文書救援隊」の支援を受けて、被災公文書に付着した土砂を除去する工程で発生する粉塵をシャットアウトするために同隊が開発した「ドライクリーニングBOX」7台を新たに増設し、作業に従事するメンバーの健康面にも配慮しながら、日々レスキュー事業を進めています。

ドライクリーニングBOXでの作業の画像  ドライクリーニングBOXでの作業

 

利用案内

当館では、県が作成した歴史的に重要な文書や、神奈川に関わりのある古文書、図書などを収集、保存しています。

これらの資料は、一部を除き閲覧室でご覧いただくことができます。また、年間を通じ、資料を様々な形で展示し、皆様のご来館をお待ちしています。

また、当館をもっと知ってもらうためのアーカイブズ講座や古文書を読みたい方に向けた解読講座なども開催しておりますので、ぜひご参加ください。

中尾小学校2年生の見学  1月27日、横浜市立中尾小学校の2年生が「町探検」で当館を見学

 

平成24年度行事のご案内

    展示

・ 収蔵資料展示   「公文書館資料の世界」                              5月17日から8月31日

・企画展示       「鉄道が重ねた日々 2」                               9月15日から12月16日

                                   「古文書でたどる村の春夏秋冬」                1月17日から3月31日

・ミニ展示                  「市川家文書にみる消防団」                           4月6日から7月1日

                                  「あたらしい「家庭科」の誕生」                    7月6日から9月30日

                                  「公文書館資料にみる大正100年」             10月5日から12月27日

                                  「関口家文書にみる江戸時代   村の事件」     1月5日から3月31日

・    常設展示      ―記録が歴史を語るまで―            4月1日から3月31日

                                「歴史的公文書の保存」

                                  「古文書・私文書の整理から公開へ」

                                  「歴史資料所在調査の概要」

                                  「被災公文書レスキュー事業」     2月28日から9月30日

                                  「資料の修復」                             10月5日から3月31日

講座

・アーカイブズ講座          (定員100人)    7月22日(日曜日)

・古文書解読中級講座   (定員140人)  5月20日から6月17日の各日曜日全5回

・古文書解読上級講座   (定員140人)   10月14日から10月28日の各日曜日全3回

・古文書解読入門1日講座 (定員 50人)  12月2日(日曜日)

・古文書解読入門講座        (定員140人) 2月3日から3月10日各日曜日全6回

 

<館利用のご案内>

◆利用時間   閲覧室 午前9時から午後5時

          会議室 午前9時から午後9時

◆利用方法   閲覧室にある資料は自由に閲覧できます。書庫内の資料は受付に請求してください。展示は無料です。

          ご自由にご覧ください。

神奈川県

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