公文書館だより 34号

掲載日:2016年3月25日

東日本大震災から5年

後世に残すべき公文書を保存・公開する

東日本大震災から5年。発災時に県の各機関が作成した震災関連の公文書のうち保存期間が3年のものが昨年引き渡され、歴史的公文書として登録、保存されました。時の経過による震災記憶の風化が懸念されますが、当館では今後も引き渡される公文書(保存期間が5・10・30年)を引き続き受け入れ、評価選別し、震災の記録を後世に伝えるべく歴史的公文書として保存・公開していきます。

また、当館では、東日本大震災の後、被災した陸前高田市の公文書を修復する支援事業を行い、その記録も残しています。

4月16日から始まる収蔵資料の展示では、当館の震災関係資料をご紹介します。ぜひ、お誘い合わせの上、ご来場ください。

歴史的公文書

平成26年度評価選別した当県の歴史的公文書

陸前高田市役所

被災時の陸前高田市役所庁舎

修復作業

当館での陸前高田市の公文書修復作業

 

物騒でない鉄砲の話 ーアーカイブズ講座で紹介した資料からー

昭和20(1945)年9月8日に横浜で撮影された「Jap M.P.'s carrying rifles, light machine guns, bayonets, and swords from trucks paraked in front of collecting point of (382nd Hqs.Bn.11th Corps) in Yokohama」と題された1枚の写真。日本国内に保有されていた武器が、連合国に徴収されている様子を写したものです。連合国が行なった日本の武装解除は、民間保有の武器も対象としました。昭和21年3月末までに徴収された民間保有の鉄砲の数は、約80万挺におよびました。この数字に驚かれる方も多いかもしれません。平成27年度のアーカイブズ講座では、民間に保有された鉄砲の事情について、当館収蔵資料を交えて解説しました。小文では、その一部を紹介します。

武器が連合国に徴収されている様子の写真

          米国国立公文書館写真部所蔵 複製 (X-0021)

江戸時代の村々の鉄砲

江戸時代の村々には大量の鉄砲が存在し、その数は武士の所持するものより多かったといわれています。明治7(1874)年9月の神奈川県の調査によると、同県管内には5,132挺の民間保有の鉄砲があったことが確認されています(「神奈川県治一覧」(ID3199800559))。この資料からは、江戸時代の村々に存在した鉄砲の数をうかがい知ることができます。

なぜ江戸時代の村々には多くの鉄砲があったのでしょうか。その理由は、人間と鳥獣の関係に求めることができます。江戸時代の中期以降に盛んになる新田開発や木材の伐採は、人間と鳥獣の住環境に変化を生みました。その変化は鳥獣による農作物被害を増加させます。その被害の対策の一つとして、村々は鉄砲を所持・利用することを願い、幕府・領主は年貢を確保するためにこれを許可しました。村々に存在した鉄砲は、「武器としての鉄砲」ではなく、「農作物を守るための道具」として所持されていたのです。その鉄砲は、鑑札や証文によって幕府・領主・村に管理されました。

明治の世に移った後も、これらの鉄砲が政府により徴収されることはなく、届け出をすれば保有することができました。前述の連合国の徴収まで、民間保有の鉄砲が徴収されることはなかったのです。

道具としての鉄砲

鳥獣による農作物の被害は、現在の私たちも直面する課題であり、神奈川県下の丹沢、箱根、秦野、伊勢原では、その被害が深刻な状況となっています。神奈川県はその対策の一つに、鉄砲を使った狩猟を掲げています。現在でも「農作物を守る道具」として鉄砲は利用されているのです。

鉄砲鑑札(相模国足柄上郡皆瀬川村井上家文書ID2199402840)

鉄砲鑑札の写真

鉄砲証文                                              四季打鉄砲証文帳(相模国津久井県沢井村石井元三郎氏所蔵文書ID2201030058) 

 

        

 

 

 

収蔵資料紹介

 馬入川船橋にて架橋の図

架橋の図朝鮮人通行馬入川船橋にて架橋の図(近世諸家文書ID2200701006)

江戸幕府は、江戸の防衛という軍事上の理由により、大河川に橋を架けることを禁じていました。しかし、徳川将軍や朝鮮通信使など重要人物が通行する場合には、仮の橋が架けられることがありました。その仮橋は造る際に船を用いることから、「船橋」といいます。

今回ご紹介する史料は、宝暦14(1764)年2月の朝鮮通信使来朝時、馬入川(相模川下流)に架けられた船橋の図面です。ちなみにこのときの朝鮮通信使は、十代将軍徳川家治の将軍襲職を慶賀するために遣わされたものでした。

図面の作成者は不明ですが、御賄役(おまかないやく)代官手代内山伴七が記した御用日記(「朝鮮人御用中日記」近世諸家文書ID2200701003)の宝暦14年2月11日条に、「馬入川船橋絵図書き申し候」とあるので、あるいは内山伴七が描いたものかもしれません。

図面によると、この船橋は長さ102間(約185メートル)・幅9尺(約2.7メートル)に及ぶもので、船68艘を用いて造られていました。船橋の警備には御賄役代官手代2人と下役4人、それに足軽2人が熨斗目(のしめ)・麻上下という礼服であたりました。

船橋に使用する船は、相模国三浦郡の村々が負担し、海路で馬入まで運ばれました。また、架橋に用いる松丸太や唐竹、縄等々の資材は、相模国内の村々に高割(たかわり)で賦課されました。このように、朝鮮通信使来朝とそれにともなう船橋の架設は、馬入近辺のみならず、ひろく相模国全域の民衆を巻き込む一大事業だったといえるでしょう。

 

連合軍関係書類

昭和20年8月14日、ポツダム宣言の受諾により日本の敗戦が決定しました。同宣言には、連合国による占領や戦争犯罪人の処罰が明記されていました。戦争責任の追及を避けるため、閣議で機密書類の焼却が決定され、陸海軍など政府中枢にとどまらず、末端の市町村まで戦争に関する機密書類を燃やすよう通達が出されました。

それは明治期の度重なる県庁舎の火災、関東大震災と並んで、本県で戦前期の公文書が非常に少ない理由になっています。しかし、その通達は残念ながら当館に残されておらず、僅かに長野県内の事例(「機密重要書類焼却の件」)が松本市文書館に所蔵されているのが知られているだけです。

今回ご紹介する資料は、平成4年に当時の県立藤沢高校(現 藤沢清流高校)から引渡しを受けたものですが、資料の表紙には「藤沢市立藤沢高等女学校」と記載されています。これは、同校の前身の校名で、昭和26年、県に移管され校名も変更になりました。

この資料が当館にあるのは、平成5年の当館の開館に先立ち、公文書の保存や文書の円滑な引継ぎについて庁内に注意喚起を行ったところ、当時の事務長から古い文書があるとの情報提供があり、当館の前身である文化資料館で現物を確認し、引渡しを受けたからです。

資料の中には、教育関係のGHQの指令綴り92件が綴られていますが、中でも「官庁公文書及び記録に関する件」は、戦中戦後に公文書が移動したり焼失したりしたものが多いとの認識の下、「正常の公式保存所」への返還、公式保存所が破壊されたときは「中央保存所を選定設置」、焼失した書類の写しの確保、写しが得られないときにはその表の作成などを指令しています。

連合国側は、戦争責任の所在を明らかにするための証拠として公文書の保全を指令した面もあると思いますが、その後の記録資料の保管体制における日米の格差を見ると、非常に示唆に富むものがあるのではないでしょうか。

 連合軍関係 昭和20から23年度 連合軍関係書類(ID1199618431)

                        

公文書館の利用案内  ―魅力ある講座・展示をめざして―

当館では、収蔵資料を紹介するとともに、その利用を促進するため各種講座や展示を行っています。 

平成28年度の事業計画は次のとおりです。

講座のご案内

古文書関係の講座は、「入門編」と「応用編」の二種類を開催します。受講の目安として、「入門編」は、全く初めて古文書を読もうとする方から、多少の経験はあるものの解読するまでの自信を持てない方、「応用編」は、ある程度の読解力をお持ちの方を想定しています。

「入門編」は、多くの方が受講できるよう同じ内容で時期を変え二回開催しますので、ご都合のよい方にお申込みください。

なお、歴史的公文書を保存し、未来に伝えるアーカイブズ講座も開催します。

申し込み方法など詳しくは、近くなりましたらチラシやホームページ等でお知らせしますので、ご利用ください。

◆古文書講座入門編1

6月26日から7月24日の各日曜日(全5回) (定員140人)

◆古文書講座入門編2

9月4日から10月2日の各日曜日(全5回) (定員140人)

※入門編1と2は同じ内容です。

◆古文書講座応用編

11月6日から12月4日の各日曜日(全5回) (定員140人)

◆アーカイブズ講座

8月28日(日曜) (定員100人)

展示のご案内

4月から始まる収蔵資料展示「古文書・公文書は面白い」では、前期と後期で展示の一部を入れ替え、当館収蔵資料の中から古文書や歴史的公文書、行政刊行物等を紹介する予定です。

また、企画展示では、かつて横浜港から世界に輸出されたシルクをテーマにかながわの人々とのかかわりについて展示する予定です。ぜひお誘い合わせの上、ご来場ください。

◆収蔵資料展示

「古文書・公文書は面白い」

〈前期〉 4月16日(土曜)から9月4日(日曜)

〈後期〉 1月28日(土曜)から3月31日(金曜)

◆企画展示

「蚕とかながわの人々」  9月25日(土曜)から1月15日(日曜)

◆ミニ展示

「箱根再発見パート2 箱根山測候所の『観測野帳』」  4月16日(土曜)から6月26日(日曜)

「(テーマ未定)」  7月2日(土曜)から9月4日(日曜)

◆常設展示

「公文書館の仕事紹介」

4月16日(土曜)から3月31日(金曜)

 

館利用のご案内

(利用時間)

閲覧室 午前9時から午後5時

会議室 午前9時から午後9時

 (休館日)

 月曜日、国民の祝日(月曜日と重なる場合は翌日)、年末年始、4月1日から15日は資料整理のため、閲覧室は休室します。

(利用方法)

閲覧室に開架されている資料は自由に閲覧できます。書庫内の資料は受付に請求してください。

※正午から午後1時までは、受付担当が一人になるため、書庫内資料の出納を休止します。

展示見学は無料です。ご自由にご覧ください。

自治会や学校など各種団体の視察・見学も随時受け付けています。

会議室の利用については、施設利用予約システムをご利用ください。

 
神奈川県

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